第49話 暴走
惑星『シンガー』から避難してきた人々が生活しているスペースコロニー。
全部で二つしかないが、避難してくることができた人が少ないためこれで足りていた。
小惑星の衝突から何日もたっているが、今だに、惑星『シンガー』に救助用宇宙船が降りて行って、人々を救出している。
このコロニーに、宇宙船『アーサー』がようやく到着した。
「オリビア、コロニーの宇宙港に連絡。
頼まれていた支援物資を運んできました、てね」
『了解、マスター。すぐに連絡を入れますわね』
ショートワープで、戦闘宙域からの脱出は成功した。
もっとも、この避難民を収容しているコロニーからは、少し離れてしまったが、何もない宙域へ脱出できた。
そこから、このコロニーへ引き返すことになったが、それは些細なことだ。
『マスター、第二宇宙港への入港するようにとのことですわ』
「了解、エヴァ、コロニーの第二宇宙港へ」
『了解!マスター。第二宇宙港へ入港します!』
いきなり戦闘に巻き込まれたりしたけど、ようやく支援物資を相手に渡すことができるな……。
▽ ▽
第二宇宙港に入港し、宇宙船を固定すると、貨物室の大型搬入出用のハッチを開けて、中にある支援物資を出す作業に取り掛かっていく。
これには、搬入出用ロボットや、コロニー側の作業員の人達が協力して、支援物資を出していくのだが、全部出すまでは時間がかかるだろう。
俺とカレンは、その間に今回の受取人である連邦大使のもとへ案内された。
第二宇宙港の中にある会議室で、俺とカレンは連邦大使の人とその側近二名と会った。
「初めまして、宇宙運搬会社『ショルフダール』の加藤康介と言います。
こっちは、秘書のカレンです」
「これはご丁寧に…。初めまして、連邦大使を務めているクリスと申します。
こちらは、私の秘書のニルナ、そしてこっちが護衛のロジットです。
支援物資の運搬、本当にありがとうございました」
大使のクリスさんが、こんなに頭を下げるってことは、本当にありがたかったんだな……。
「頭を上げてください、私たちは仕事をしただけですから。
お礼なら、支援物資を送るように依頼されたエルビー・ドレルさんにしてあげてください」
「エルビーの奴が、今回の支援物資を?」
「はい、エルビーさんとは幼馴染だとか?
エルビーさん、だいぶ心配していたようで、今回の支援物資の量からして……」
「フフ、あいつには愚痴をこぼしただけだったんだがな……」
何というか、幼馴染っていいな、って感じてしまうな。
秘書のニルナさんも、護衛のロジットさんも、クリスさんを温かい目で見ている。
「ところで、クリスさん。
この宙域に到着した時、戦闘が行われていたようなんですが……」
「!もしかして、巻き込まれてしまいましたか?」
「まあ、ワープアウトした場所が悪くて、戦闘しているど真ん中に……」
「あいつら、どんどん戦場を広げているか……」
「大使、これだけでも連邦政府に動いてもらえませんかね?」
「いや、まだ弱いな。
基本連邦政府は、惑星政府への介入はしない。それは、連邦法で決まっていることだ。今回の加藤さんたちを戦闘に巻き込んでしまったのだって、ワープアウトした場所が悪かったって言い逃れできるからな……」
「そうですか……」
護衛のロジットさんと大使のクリスさんとで、連邦政府を動かせないか話している。
確かに、連邦政府は惑星にある政府に介入しない。
連邦政府は、もっと大きないくつかの銀河をまとめている政府だからな。
そこに動いてもらうとなると、まだ弱いか。
そこに、会議室の扉をノックする音が聞こえた。
「はい」
大使が返事をすると、若い女性職員が入ってくる。
護衛の人と同じ制服を着ているってことは、連邦大使関係の職員の人か。
「失礼します。クリス大使、惑星『シンガー』の現政府の大臣が、大使に会いたいと面会を求めていますが、いかがいたしますか?」
「現政府の大臣?」
「はい、お名前は…「ジェガットだ!」」
女性職員の後ろから、強引に一人の老人が入ってきた。
さらにその老人の後ろには、三人の軍人の人がついて来ているが、老人の行動を不快に思っているのか苦虫を噛み潰した感じだ。
「こ、困ります、私が大使に確認してくると……」
「ええい、やかましい!ここは我々政府の管轄下じゃ、儂の方が優先される!」
……すごい人が来たな……。
「ジェガット大臣、何故このコロニーへ来られたのですか?」
「何じゃ、来たら悪いのか?
ここにいるのは、『シンガー』の避難民じゃ、儂が慰問に来てもおかしくなかろう!」
「それは、そうですが……」
「それよりも!第二宇宙港に入っている宇宙船の持ち主は貴様か?!」
おっと、俺に矛先が向いたぞ?
「は、はい、第二宇宙港にある宇宙船は私のですが……」
というか、第二宇宙港には、俺の宇宙船以外いなかったからな。
間違いないだろう。
「渡せ!」
「は?」
「は?じゃない!儂ら政府に引き渡せというとるんじゃ!」
何言ってんだ?このアホは。
頭おかしいのか?
「あの、なぜそのようなことをしないといけないのでしょうか?」
「そんなもん、あの宇宙船を戦線に投入するからに決まっとるじゃろ!
それよりも、渡すのか渡さんのか!」
「渡しませんよ、次の仕事があるのに……」
俺の答えに、老人はニヤリと笑うと、会議室のドア付近にいた軍人を見る。
「アブス!聞いての通りじゃ。
儂ら政府の邪魔をしたことにより、あの宇宙船を接収、乗組員はこいつらも含め全員拘留しておけ!」
「な、何故そういうことになるんですか!」
老人は、抗議する俺に顔を近づけて笑いながら説明する。
「お主の宇宙船は、政府軍が戦っているところにワープアウトしてきて、儂ら政府軍の行動を邪魔したんじゃ。
さらに、反勢力とのつながりも疑われるようじゃからのう」
「な、「いい加減にしてください大臣!」」
俺が、この老人に手を出そうとしたところで、大使が大声で怒鳴った。
「いいがかりもほどほどにしてください!
政府軍の邪魔をした?戦闘ばかりで避難民の救助もしない政府が、何を言っているんですか!
だいたい、今はそんな争っている場合ではないでしょうが!」
「貴様こそ、政府の行動に意見するつもりか!
連邦の大使だろうが何だろうが、ここでは『シンガー』の政府の方が偉いんじゃ。
……なんなら、貴様も拘留しようか?」
このクソジジイ……。
「……わ、渡すにしても、今は支援物資を搬出中だ。
支援物資を全部出すまで、動けないぞ……」
「フン、ならば待ってやろう。
その支援物資を全部出すまでな!」
クリス大使が、すぐのすぐに宇宙船を動かせないというと、待ってやると。
そして、軍人のアブスという人を残して、去っていった。
老人の姿が見えなくなると、軍人のアブスさんが、すぐに頭を下げて謝ってくる。
「申し訳ございません!」
「アブス、と言ったね。現政府はどうしてしまったんだ?」
「……実は、現政府の本当のメンバーは、大半が小惑星の衝突の時、亡くなっているのです。今のジェガット氏をはじめ、何人かの生き残りもいるのですが、そのほとんどがああいう武闘派といった人たちで占められていまして……」
なるほどね、その武闘派の連中が、人々の避難より戦争をとったと。
脳筋で迷惑な連中だよ……。
「……だが、これで連邦政府が介入ですることができる!」
クリス大使は、ニヤリと笑った。




