第35話 宇宙海賊現る
『周囲索敵、終わりましたわ。
宇宙海賊らしき宇宙船は、発見できませんでしたわ』
オリビアからの報告を聞き、俺は考える。
ナンシー班長からこの宙域で、宇宙海賊に襲われるのは間違いないらしい。銀河警察からの確かな情報とのことだからだ。
となれば、今は発見できなくても、惑星『ドールーン』へ向かう最中に襲ってくるかもしれない。
ここは、備えをしておいて損はないだろう。
「エヴァ、衝撃シールドの展開とシールドレベルを五へ上げてくれ!」
『了解!シールドレベル五へ!衝撃シールド展開!』
これで、あの時のように船体がボコボコになることはないだろう。
それに、宇宙船が体当たりしても、シールドレベル五なら宇宙海賊の攻撃にも耐えられるはず。
こうして、万全の備えをして、俺たちは惑星『ドールーン』へ進路をとった。
今回の目的地は、惑星『ドールーン』に展開している宇宙艦隊へ新造したばかりの宇宙戦艦を届けること。
ナンシー班長の資料によれば、受け渡しの場所で、何年かに一度の式典が開かれているらしい。
この運んでいる新造の宇宙戦艦は、その式典で披露するのだとか。
一体、どんな式典を開いているんだろうな……。
―――ピピーッ、ピピーッ。
突如鳴る警戒音。その音に反応して、オペレーターのオリビアが探索。
すると、何かを発見したのか、焦った口調でオリビアが報告する。
『五時の方向の上!ワープアウト反応を検知!
マスター、すぐに確認してくださらない?!』
「カレン、モニターに出してくれ」
オリビアの示した方向の映像が、メインモニターに映し出される。
そして、映し出されたと同時ぐらいに、一隻の宇宙戦艦が現れた。
大きさは、パッと見て200メートルぐらい。
緑と赤のコントラストの船体で、砲塔が五つついている。
また、ここからは見えにくいが、推進力を得るためのスラスターが三つ見えている。
「オリビア、この宇宙戦艦が宇宙海賊なのか、確認ってできる?」
『……こちらから、呼びかけてみますわ』
俺の無茶な質問に、少し考えて答えてくれたオリビア。
パネルを操作し、相手の宇宙戦艦へ呼びかけを行う……。
すると、反応がすぐにあった。
『相手側が答えてくれましたわ、すぐにメインへ回しますわ』
オリビアがそう言うと、すぐに宇宙戦艦の映像から、大きな二人乗り用の戦闘機といった操縦席の映像に変わる。
そして、そこに座っている二人の女性。
おそらく双子だろう、似た顔の美人が二人こちらを見ているようだ。
「オリビア、通訳ソフトは使える?」
『……いいですわよ、もう言葉が通じると思いますわ』
オリビアのその言葉に、俺はメインモニターに映る彼女たちを見て、挨拶をすることにした。
「初めまして、こちらは宇宙運搬会社『ショルダフール』の貨物宇宙船です。あなたたちは、宇宙海賊ですか?」
俺の質問に、びっくりしている女性二人。
まあ当然だろう、宇宙海賊か?と聞いているんだからな。
当然のごとく、ムッとした顔で答えが返ってきた。
『こちらこそ初めまして。
私たちは、この辺りの三つの太陽系で行商人をしているわ。
それよりも、いきなり宇宙海賊って、失礼じゃない?』
怒ってる、怒ってる。
それにしても、行商人か。そんな職種も宇宙には存在しているんだな。
……と言うか、あって当たり前なのか。
『マスター、どうやら宇宙海賊ではありませんね』
「だな。これは失礼しました、実は、この辺りに宇宙海賊がッ!!」
俺が彼女たちに謝っている最中に、攻撃を受ける。
衝撃はかなりシールドによって吸収されるが、ないわけではない。
それに、メインモニターに攻撃を受けたと警告が出大きく出たからな。
「オリビア、攻撃はどこから?!」
『左側の宙域から突然ミサイルが出現しましたわ!』
左側からミサイル?
しかも、突然現れたということは、亜空間から出現したということか!
「行商人の君たちは、早くここからって、どうして映像がこんなに乱れているんだ?!」
『マスター、ミサイルに通信妨害の素材が仕込まれていたようです!』
「!オリビア、ナンシー班長の用意してくれた援軍に要請を出せるか?!」
オリビアが、通信パネルを操作するが反応がない。
『ダメですわ、この通信システムが使えなくなりましたわ!』
なんてこった!援軍が呼べ……。
「オリビア、亜空間通信はできるか?!」
『………大丈夫ですわ、通じています!』
「亜空間通信で援軍を要請!ナンシー班長にも報告を!」
『了解ですわ!』
さすが亜空間通信、通常通信とはつながり方が違うから、使えたんだな。
だがいずれ、亜空間通信さえも妨害に成功するかもな……。
『マスター、報告完了ですわ!すぐに援軍を送ってくださるそうですわよ!』
「よし!」
俺の喜びもつかの間、すぐに危険が現れた。
俺たちの宇宙船の左側の宙域に、二隻の宇宙戦艦が突如として現れた。
『左の宙域に宇宙戦艦が二隻、現れましたわ!』
『マスター、あの宇宙戦艦、シャドーシステム持ちだよ』
「シャドーシステムだって?!」
シャドーシステム。
所謂、宇宙空間の潜水能力のことである。
シャドーシステムとは、特殊な塗料を船体にぬって、宇宙空間の影に身を隠す技術だ。どこの軍でも開発競争が激しい分野だが、連邦政府の軍では、すでに研究しつくされた分野となっている。
情報を全宇宙に開示することがないため、こうして開発しているところがあれば、開発しつくしたところが出てくるわけだ。
で、俺たちは連邦軍よりなので、焦るほどの技術ではない。
が、俺自身は初めて見た技術なので、興奮してしまった……。
「おお~、あの二隻の船体の下の方が、水に沈むようになっている……。
あれがシャドーシステムか……」
『マスター!宇宙海賊よりメッセージが届きましたわ!』
「メッセージ?
……そうか、通信が使えないからメッセージ通信というわけか。
オリビア、読んでくれ」
『降伏せよ!さもなくば総攻撃をかける。だ、そうですわ』
と、言われてもな。
ここは時間稼ぎをするしかないな、援軍が到着するまで……。
「そうだ、行商人の宇宙戦艦はどうしてる?」
『この宇宙船『アーサー』の影に隠れて、見つからないようにしています。
あちらからすれば、それが精一杯でしょう』
このまま、見つからなければいいんだが……。
さて、時間稼ぎといってもどうすれば……。そんなことを考えていると、再び宇宙海賊からメッセージが届く。
『再びメッセージですわ。
降伏するのかしないのか、早く決めろ。だ、そうですわ』
―――ビーッ、ビーッ。
ブリッジに響く警告音。
そして、宇宙海賊の宇宙戦艦二隻を映していたモニターに、ミサイルを何発も発射する光景が映し出された。
『宇宙海賊船から、ミサイルが発射されましたわ!』




