戯言その1 恋人達の帰り道について ヒロイン
去年の夏、何日も続けて高校卒業式の夢を見た。
もう40年以上前なのに
春めいた、あたかい宝塚高校のグランドが広がり
"あの娘"が微笑んでいる夢だった。
実際の宝塚高校の体育館での卒業式は
僕にとって味気ないものであった。
「明日からは浪人生で受験勉強に明け暮れるんだぁ」と
後ろ向きな思いが頭に広がっていた。
4月からは神戸の予備校に通う。
電車通学と早起きが疎ましくもあった。
卒業式後には仲の良かった同じ組の友達と
一緒に帰った。それだけ
サッカー部のメンバーも無視。
あまりいい思いがなかったから
"卒業式後には今まで当たり前だった人との
毎日の出会いが終わってしまうことを"
"今日で最後になることを"その時には思いに至らなかった。
いや、
"気づかないふり"をしていた。
恋人達の帰り道のヒロイン"沢井晶子"にはモデルがいる。
物語と同じ。
高校三年生で初めて同じクラスになり"アルバム委員"となった。
大人しくて頭のいい娘だった。
物語と異なり、こっちがすっかり虜になってしまった。
でも、根性なしの僕は、何もアクション取れず。
彼女とは淡々と委員を務めるだけで終わった。
大学受験が終わり、彼女はストレートで大学に合格した。
卒業までの短い期間、
彼女は同じくストレートで大学に
通った同じクラスの男子と付き合い始めた。
彼と"恋人達の帰り道"を帰っているのをバスから
見てしまった。
浪人生では、これから大学に通う彼女とは不釣り合いだと
逃げていた僕がいた。
元々頭は悪くなかったので、関関同立と国公立に翌年は
とおることができた。
あの頃は個人情報の管理が甘く、彼女の電話番号や住所は
知っていた。
大学合格が決まったとき、連絡するか迷った。
"どうせなんとも思ってないだろう"
"もう、時間が離れ。遠く離れてしまった"
根性なし・・・・
卒業以来、彼女に会っていない。
60を過ぎているけど一度会いたいな
"恋人達の帰り道"は60過ぎのおっさんのそんな
伝えたかった思いを描いたものです。




