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S4−13


沙綾は笑いながら父親たちの要望を抑え、

二人に向かってスマホを翳す。



「はるく〜ん。ママのとこおいで〜。」



あ。


自分と、しっかり手を繋いで

くっついていたのに。



大翔は、場の空気を読んだように

すんなりと、手を差し伸べる沙綾の元へ

歩いていく。



「ふふっ。二人とも固いわよ〜。笑って〜。」



だって。

心が、ついていかない。



『ばりばり、かわいいけん。記念に。』



彼の言葉が、隅々まで繰り返される。



自分も、素直に言った方がいいのかと。

どくどくする鼓動で朦朧として、

言わなければという謎の使命感に襲われて

ぽろっ、と、口から出た。



「唱磨くんも、めっっっちゃかっこいいよ。」


「······えっ?」



言っちゃった。



言ってしまったことに対して、頬が緩む。



「後で画像、送ってね。」


「······あ、うん······」



彼女の、ふわふわした笑顔を見て。

彼も、笑みが零れた。



ぱしゃり。ぱしゃり。



その瞬間を、すかさず収める。



「はーい!おっけー!ふふっ!

 とってもいいの撮れたわよ〜!」


「ありがとうございます。」


「もう、中に入りましょうか。

 撮影会は、また後でしましょう。」



しゅんと、肩を落とす秀一と。

なぜか、嬉しそうな恭佑と。


父親たちが歩いていくのに続いて、

夏芽と唱磨は笑顔で付いていく。



伝えられてよかった。


ほっとした気持ちと。


笑ってくれた。


そんな、嬉しい気持ちが。


入り混じって、二人の心を和やかにした。




そんな彼女らに、視線を送る彼の。


大きな瞳に、小さな光が灯った事を。


まだ、誰も気づいていなかった。



















大翔の手を引いた沙綾を先頭に、皆が

ホール内に入って向かった席は。


ステージの真ん中に設置された

ピアノの、目の前だった。


最前列。VIP席と呼ばれる場所である。


その事に夏芽は、驚きを隠せなかった。



「最前列じゃないか。」


「うふふ。驚かそうと思って、

 伝えていませんでした〜。」


「すみません。僕らは知っていました。」



申し訳なさそうに伝える恭佑と、

当たり前のように、席に腰を下ろす唱磨。



二人は、きっと。

先生のコンサートに呼ばれて行くの、

これが初めてじゃないんだ。


······

どれだけ、仲良しなんだろう。



そう思いながら、倣うように着座する。



並びは、右端から秀一、沙綾、大翔、夏芽。

そして、唱磨に恭佑。


ここでも、彼と隣同士になった。



「心ゆくまで、楽しみましょう。」







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