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エピローグ


12月26日。


神奈川で行われる特別公演では、

コンクール各部門で一位を飾った者たちが

集い、演奏する。


一般的な見方では、

エキシビションのようなものだが。

専門家たちからすると、

社会の場に立てる機会とともに

無差別選手権のような意味を持っていた。



順位は定めない代わりに。

世界に名を渡らせ、掴めるか。


ピアニストとして、立つ為に。

将来を繋ぐことができるか。


この場は、登龍門となるのだ。




ゲストとして呼ばれるピアニストは。

先駆ける者として、最終演奏を担う。


今年のゲストは、橋本 絵美である。



歳を重ねる度に、強く美しく

名を渡らせる彼女は。

ピアニストを目指す者たちにとって、

羨望の的であり手本だった。



そして。


彼女が告げた事実によって、とある記者から

取材依頼を受けた夏芽は。


戸惑いながらも、それに応じた。



その取材は、雑誌に載り。

瞬く間に、その業界で有名となった。




“譜に宿りて”。



このフレーズが、彼女そのものを指す

代名詞になるのは。


特別公演後の話である。
















              *














10年という月日が過ぎ。



景色も人も彩りが変わる中、

澄んだ青空だけは、当時のままで。



それを見上げる、長身の青年は。


今春で、無事に大学卒業を迎えた。










「いらっしゃい!大翔くん!」


「卒業おめでとーっ!」


「わぁっ!ありがとうございます!」



重田酒店に足を運んだ彼を

笑顔で大歓迎する、二人の男女。


女性の方から、スパークリングワインが入った

紙袋を渡され、彼は喜びながらも

丁寧に受け取る。



「よく冷やして飲んでね〜。」


「はいっ!」


「俺からは、はいこれ!」



男性の方から渡された小さな紙袋には、

綺麗に包装された箱が入っていた。



「時計いるやろ?」


「えっ?そんな、高価な物を······」


「よかよか!カッコよか時計しとったら、

 ばりモテるけんな?付けとけ!」


「もう既に大翔くんは、

 ばりばりモテとうっちゃけんね?

 怜央くん基準で考えんとよ?」


「おいおい、そりゃなかろうもん!」


「あははっ。遠慮なくいただきます。」


「大翔くんは分かっとるね〜!」


「はいはい。今日は貸し切っとるけんね〜!

 いっぱい飲んで楽しも〜っ!」




二人から手厚い歓迎を受けて、青年は

柔らかく顔を綻ばせる。




小野田 大翔。


彼は、大学卒業とともに

親元から離れて一人暮らしを始める。


その門出を祝おうと、

重田 悠乃と前田 怜央が

立ち飲み場を一時改造して

飲み会を開こうとしていた。



招待しているゲストは、まだ他にもいる。



「なっちゃんは、来るの遅れるそうです。」


「んーっ、そっか。予想しとったけど〜」


「ばり忙しかっちゃろ?」


「はい。でも、必ず行くって言ってました。」


「会うの、ばり久しぶりなんよね〜!

 ばりばり会いたい!」




彼の姉、夏芽は。


高校生の時ドイツに留学し、

ピアニストへの土台を固めていった。



日本に戻ってきて再会した時は、

内面も表情も磨かれていて。

彼女の姿は、強く美しく成長していた。



今では、もう。

時の人となって、世界中を駆け回っている。






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