90話 うな重
九郎たちは午前中をあやめの部屋で過ごし昼になる。一久が機嫌よさそうに部屋に来る。
「なあにおとうさん。」「昼食の用意が出来たから居間に来なさい。」「ごちそうになります。」
九郎たちが居間に行くとテーブルにうな重が並べられている。肝吸いも並べられている。一久が言う。
「今日は精力をつけなくてはいけないからね。」「お父さん!」
あやめが赤くなる。九郎は黙っている。どう反応していいのかわからないのだ。玉枝が九郎に言う。
「ウナギは高くて食べられないから、良かったね。」「そうだね。」
九郎は無表情に返事をする。彼の頭の中では、一久の思惑について考えが巡っている。
精力をつけさせて、何を期待しているんだ。あれか、やっぱりあれか・・・
みんな、昼食を食べ始める。一久が玉枝に聞く。
「九郎君とあやめは仲良くしているのかな。」「熱い仲ですよ。」
「そうか、それは良かった。早く孫の顔を見たいものだ。」
九郎がむせる。あやめは一久を睨みつけて言う。
「お父さん、何言っているの。」「まだ、早かったかな。」「九郎ちゃんたちなら、すぐかもしれませんよ。」
「玉枝さん、やめてください。」「玉枝さん、どういうことかな。2人の仲は進展しているのか。」
「それは2人に聞いてください。」「あやめどうなんだ。」
「言いません。」「九郎君、教えてくれ。」
「ノーコメントでお願いします。」「お父さんは気になるよ。」
九郎にあやめと夜を一緒に過ごしたことを言えるわけがない。
一久のテンションが高くなる。この後、九郎とあやめは黙って食事をする。かえでは終始笑顔である。
昼食を食べ終わった頃、玄関のインターフォンが鳴る。一久は玄関に向かう。
彼が玄関の引き戸を開けると見知らぬ老人が立っている。




