160話 あやめ、家へ帰る
九郎は、力尽き果てベットに仰向けになる。あやめが幸せそうに彼に寄り添う。彼は呼吸を整えるとあやめを見ようとする。
しかし、視界の端に人影を認める。九郎は驚いて玄関の方を見る。そこには玉枝が黙って立ち尽くしている。
九郎は飛び起き、玉枝に声をかける。
「玉枝さん。」
そして、彼はベットから出る。あやめが九郎の手を掴む。彼女は彼にせがむように言う。
「行かないで。」「九郎ちゃん、来ないで。」
玉枝も九郎に弱々しい声で言う。しかし九郎は玉枝にはっきりと言う。
「僕は、玉枝さんが好きだ。」「九郎ちゃんのバカ。」
玉枝は泣きそうな顔で言う。九郎を掴むあやめの手が震える。あやめは涙目で九郎に言う。
「九郎は玉枝さんと私のどちらが好きなの。」「決まられない。2人とも好きなんだ。」
「信じられない。」「卑怯かもしれないけど、僕の本心だよ。」
「九郎、私を選んでよ。」「どちらかに決められないんだ。」
あやめは泣きながら服を着るとキャリーケースに荷物を詰め込み始める。九郎はうろたえてあやめに聞く。
「急にどうしたの。」「私出ていく。」
「悪いのは僕だから話を聞いて。」「私、玉枝さんに勝てないもの。九郎、お幸せに。」
「待って。あやめのことも好きなんだよ。」「私を選んでくれなきゃ嫌よ。」
「どこへ行くつもり。」「家に帰るのよ。」
あやめは九郎が止めるのを聞かずに出ていく。九郎は慌てて着替えてあやめを追いかけることにする。
九郎は玉枝に言う。
「あやめが心配だから家まで見届けてくるから待ってて。」「私もついて行くわ。」
彼女はキャリーケースを引きながら歩いていく。その後ろを九郎と玉枝がついて行く。
あやめは無事に家に帰る。見届けた九郎と玉枝は帰ろうとするが、一久が出てきて呼び止める。
「2人とも寄って行かないかい。あやめが帰ってきた理由も知りたいから。」「はい。」
九郎は気が重くなる。あやめは家に入ると自分の部屋に閉じこもってしまっている。




