122話 一久の説得
美琴はつよしに携帯で連絡する。
「私、家出したの。」「家出?何かあったの。」
「お父さんに怒れて飛び出したの。」「お父さん、機嫌よかったじゃないか。」
「お父さん、酷いのよ。」「俺の悪口でも言っていたの。」
「違うわ。つよしが次男だから一緒に住もうとしているのよ。」「お父さん、僕のこと嫌っていなかったんだ。」
「つよしはいいの。お父さんは私と一緒にいたいだけなんだよ。」「それはさみしいけど。反対されるよりいいよ。」
「お父さんの味方するの。」「そんなことないよ。ちゃんと認めて欲しいよ。」
「私、しばらくあやめの家にいるわね。」「明日の朝、神社に行けばいいかな。」
「翼君のアパートで合流しましょ。」「分かった。」
つよしは、美琴の父が自分に対する態度が変わっていないことを確信する。夕食になり、あやめと美琴は居間へ行く。
あやめは一久に言う。
「美琴のことなんだけど、しばらく家に泊まってもらってもいい。」「構わないけどどうしてだい。」
「美琴は家出してきたの。ほとぼりが冷めるまでいてもらうつもりよ。」「ご両親は知っているのかい。」
「家出したことは知らせたけど、どこにいるかまでは知らせていないわ。」「ご両親に連絡するよ。」
「お父さん。」「泊まることは構わないけど、居場所は知らせておくべきだよ。」
「分かったわ。みこ、お父さんの電話番号教えて。」「そんなことしたら連れ戻しに来るわ。」
「美琴さん、私が話すから大丈夫だよ。」「・・・分かりました。」
美琴は一久に父の携帯の電話番号を教える。一久は美琴の父に電話する。
「社本と言います。美琴さんのお父さんの電話でよろしいですか。」「はいそうです。」
「美琴さんが娘の所に来まして、しばらく泊まることになりました。」「美琴がいるのですか、すぐに迎えに行きます。」
「落ち着いてください。私は少し頭を冷やす時間が必要だと思います。」「しかし、よそ様に迷惑はかけられません。」
「娘の友達ですから迷惑ではないですよ。」「美琴を置いておくわけには行けません。」
「強引に連れ戻すと今度は本当に行方をくらますかもしれませんよ。しばらく私にお預け願います。」「そうですね。美琴の意思も尊重しないといけませんね。」
「居場所がはっきりしていれば安心できますし、私が折を見て家に帰るように説得します。」「よろしくお願いします。何かあればすぐに連絡をください。」
「分かりました。失礼します。」「ご迷惑をおかけします。」
一久は電話が終わると美琴に言う。
「お父さんの了承を得たよ。」「ありがとうございます。」
あやめが一久に言う。
「お父さん、面白いことが起きないか期待しているでしょ。」「そんなことはないよ。でも家出を見るのは初めてだからね。」
「ほら、楽しんでいる。」「誤解だよ。」
あやめは美琴に言う。
「お父さん、こういう人だからごめんね。」「そんなことないよ。あやめがうらやましいよ。」
一久が美琴の言葉をたしなめる。
「そんなこと言ったら美琴さんのお父さんがかわいそうだよ。」「私には優しいけど。つよしを物みたいに扱うんです。許せません。」
「どういうことかな。」「つよしが次男だから一緒に住もうとしているんです。」
「親ってそういうものじゃないかな。私も九郎君にここに住んでもらいたいと思っているよ。」「あやめはそれでいいの。」
「私は九郎と結婚出来れば、住むのはどこでもいいかな。」
あやめが赤くなって答える。美琴はまだ結婚を考えたことはない。彼女は、あやめと九郎の仲が自分たちより進んでいることに驚く。




