決心
ジャック読者の皆様、長らくお待たせしました。お久しぶりです。児島 文夫です。第10部を読んだ後は大変でした。自分に起こった事を描こうとPCに向かうと涙が溢れ出し手が震え何時しかしくしく泣いていました。こういう事ってあるんですね。「物語を完結する事は綾瀬さんの望み、それが出来るのは文夫君だけ、あなたにはそれを行う使命がある」と奈緒さんに言われ、ようやく決心したのです。これまでの様なペースでは投稿できないかもしれません。完結するのが怖いのです。それが綾瀬さんとの本当の決別を意味するようで、でも、描きます、描きます、描きます。それが綾瀬さんとの、奈緒さんとの、約束だから
児島 文夫
奈緒さんが(第10部)の前書きに書いたとおり文夫は、休日の今日
(第10部)を読む事にした。アラームが鳴るまでもなく午前2時に彼は
起きた。最近の文夫は週2回、夜勤(2時半出勤)がある。夜勤の時は前日
の午後6時頃就寝し午前0時に起きるのだが、その日だけ早く寝ようとして
も、なかなか出来るものではない。そこで生活のリズムそのものを深夜起床
にパターン化したのだ。休日の前日も早くに就寝し午前2時には起きる。
コーヒーを飲み1時間程、読書して時間を潰してから自宅から3km程離
れた公園までジョギングするのだ。1周、1400mのランニングコースを
今日は5周した。深夜の公園では早くも秋の虫の声がした。帰りもジョギン
グで帰り自宅に着いたのは午前4時半だった。つい最近までこの時間でかなり
明るかったのに今は漆黒の夜空に秋の星座が瞬いていた。
急がなければ・・・・季節が・・・綾瀬が・・物語が・・自分を置いて行
ってしまう。しかし、これまでの文夫は前に進む事を躊躇っていた。
先週、文夫は(第10部)を読もうとした。しかし奈緒さんが前書きに記
した(今度はもっと凄いのよ覚悟してね)を見た時、文夫は慌ててサイトを
閉じた。(第9部)の続きでこの描きようでは、だいたい想像がつく、到底
受け入れられない現実が明かされてしまう。
(嘘だ!・・嘘だ!・・・嘘だ!・・・)心の中で何度も唱えた。
Sheに行ってみた。サエは(第10部)を読んだのだろうか。サエの口から
それとなく内容を伺う事ができないだろうか。酒上の話なら、少しは痛みが
柔らかかもしれない。鋭い刃で心臓を抉られるような恐怖を感じていた。
(ジャック)の話題には触れず、カラオケを唄ってなにげなく時間を過ご
した。サエは自分からいった。(ジャック)はまだ読んでいないと。
それだけで十分だった。自分で確かめるしかない。Sheを後にした彼は次の
休日に(第10部)を読む決心をした。
そして今日がその休日だ。何時もどおりジョギングもして、朝から完璧な
半日を過ごそう。そして、昼一番に読もう。
玄関を入るともうリビングに明かりが点いていた。奈緒さんが自分と美香
の弁当を作っているようだ。刷硝子をはめ込んだドアの向こうからキッチン
の物音が聞こえてくる。洗濯機はまだ回してはいないようだった。間に合った
汗だくのジョギングウェアと下着を洗濯機に放り込みシャワーを浴びた。
朝食は奈緒さんに合わせて用意した。奈緒さんはトーストで文夫は御飯、
納豆、漬物だ、それぞれがそれぞれの物を支度する。一緒に朝食をとりながら
今日のスケジュールついて話した。勿論の事は話さない。
今日は直人を羽曳野市の病院に連れて行く日だ。奈緒さんは仕事で行けない
小麦と卵に強い食物アレルギーをもつ彼は春に受けた血液検査の結果が良かっ
た事もあり、夏休みの初めに、その病院で負荷テストを行った。少しだけ小麦
の食べ物を摂取して、反応を診る。アレルギー反応を起こす恐れがあるので
入院の手続きを取って行う大掛かりなものだった。
テストの結果が良かったので、夏休みの間は親の目の届く時に限り小麦粉を
使った食べ物を少しずつ食べて様子を診る事になった。
夏休みの間に食べた小麦粉を使った食べ物のリストを文夫に渡し特に異常が
無かった事、学校の行事の多い秋以降で今度は卵の負荷テストの予約を取って
欲しいと奈緒さんは文夫に伝えた。
「それから」
と奈緒さんは、第2のミッションを彼に告げた。
「病院から帰ってきたら直やんの部屋(リビングに面した直人の勉強机のある
和室)散らかってるから掃除手伝って綺麗にしといてね」
それだけ言って奈緒さんは5時半には出勤して行った。奈緒さんの勤める病院ま
では自宅から自転車で20分程だ。文夫には追加任務が入った。今日は忙しく
なりそうだ。朝からとばして行こう。麦茶を沸かす(今日はティーバッグは入っ
ている)朝食の洗い物を済ませて、洗濯物を干した直人を連れて8時には自宅を
出た。病院までは、車で30分~40分かかる。病院で1番の診療を獲得したの
で診療開始時間の9時過ぎには診療を終えていた。12月の初めの負荷テスト
の予約も取った。こうなると時間はたっぷりとある。帰り道スーパーに寄り夕食
の買い物をし午前10時過ぎには自宅に帰っていた。昼食までにミッションⅡを
済ませよう。直人と和室に入った。畳の上には物が溢れている。
「これって、いるの?・・これは?・・これは?」
と一つ一つ直人に聞きながら不要な物は捨てていく。
「ええよ~自分でやるから、ほっといて~」
「あほ!やらんからこーなったんやろ!」
ふて腐れてる直人をよそに片付けは粛々と進んでいく。畳の上に物がなくなると
机や棚の物を全部畳の上に下ろさせる。また足の踏み場が無くなる。先程と同じ
作業をして要らない物を捨て、良く使う物とあまり使わない物に分けそれそれに
収納していく。
「あ・・・お父さん、そ・その糸巻いてるやついらんわ」
椅子に座った直人は畳の上に座り込んで分類してる文夫に上から言ってきた
「いらんかったら自分で捨てろや、誰のやねん、お父さんは直やんのしもべか?」
と文句言いながらも結局一人で全部片付けた。机と棚を雑巾がけし、畳に掃除
機をかけ、一時間程で掃除は終わった。
整然とした和室に立ち
「どうや!・・達・成・感やろ!」
何もしていない直人も満足そうだ。まあ・・いいか。
昼食は夕べの残りのご飯でチャーハンを作った。材料は冷蔵庫の残り物だが味
付けは、よく吟味し、なかなか旨いものができた。
「めっちゃ旨い!」
と言って直人はチャーハンにがっついた。
食後、直人は夏休みの宿題の追い込みに入った。文夫は全ての部屋に掃除機
をかけ洗濯物を取り込んでたたんだ。風呂を洗って、夕食のほうれん草のおした
し、とガンモドキの煮物を作った。今回は味も完璧。炊飯器はタイマーで6時に
炊けるようセットした。後は塩鯖を焼くだけだ。ここまでやっておけば大丈夫
だろう。
あと、問題は・・・と思った時和室で宿題をしていた直人がリビングのローテー
ブルに場所を変えた。そもそも誰もいない時は彼はリビングで勉強する事が多い
のだ。時々テレビも観れるからだ。
しかし今日は好都合だった。文夫は安心して和室に入りパソコンをつけた。




