STEP12:田舎道の不気味な足音
吹奏楽部の部長のダイスケがピアノ演奏をしてくれた。
こういう普段演奏を聴くことのない時間だからか、なんだか不思議な感覚になるユウタ。
さて、次はステップス倶楽部の副部長マイが話す。
◯登場人物
優太
高校二年生 帰宅部
読書、ゲームが趣味
陽真理
高校二年生 怪談倶楽部
ユウタの幼馴染、明るく友達が多い
麻衣
高校二年生 怪談倶楽部 副部長
レイカと同じくヒマリの一年の頃からの友達
「あっ、じゃあ私が話しま〜す」
軽い調子でマイが話しはじめる。
——これは私が小さかった頃、お祖母ちゃんの家に遊びに行った、夏の日に起こったことなんだけどね……
お祖母ちゃん家は自宅からはそんなに遠くはなかったんだけど、結構田舎で。田んぼや畑や、山が割と周りにあるようなところにポツンとある一軒家だった。
小学三年生くらいだったと思うから、小さいと言っても一人で外を歩いたり、どこかに買い物に行ったりはできるくらいの年齢だったんだね。
お祖母ちゃん家はまぁまぁ古くって、トイレも汲み取りだったり、今はなかなかないと思うんだけど、五右衛門風呂って知ってるかな、薪で火を焚いて、お風呂が鉄釜になってる、釜茹でになりそうなお風呂、そんなお風呂だったり。
悪く言うと古い、でも良い言い方だと趣のある家だった。私はその五右衛門風呂が好きで、すっごく熱いんだけど、なんだか温泉旅行に来てるようなそんな感覚だったんだよね。
まぁそんな田舎だから、買い物をするスーパーも車で何十分もかかるとこにしかない、コンビニは一軒だけあるけど、歩くと少し遠い、という感じの場所だったの。
私は一人っ子だから両親と私で遊びに行って、日によったら、他の親戚も遊びに来てたりするんだけど、その時は私の家族だけだった。
田舎って言い方すると悪いかもだけど、都会のアスファルトやコンクリート造りの建物ばかりのところより、自然が多い田舎のほうが、夏の暑さも割と過ごしやすい。
でも、やっぱり暑いのは暑い。
その日は特別暑かったのもあって、私はその五右衛門風呂に入ったあと、ものすごくアイスが食べたくなったんだよね。
んで、冷蔵庫にはアイスがなかった。
夜だったからもう両親もお酒を飲んでいて車を運転できなくて。婆ちゃんも少ししたら寝る時間みたいな状態。
今日は我慢して明日にしなさい、って母親にも言われたけど、どうしても我慢できなかった私は、千円も入っていない自分の小銭入れを掴んで、外に一人で出てしまった。
両親も私がまさか一人でこんな真っ暗な田舎で、一人で夜道を歩いてコンビニに行くとは思わなかったんだと思う。
私も家を出て、かなりの真っ暗だったから一瞬ひるんだんだ。
でも、出てきた手前、怖くてやっぱり行かなかった、っていうのが自分の中で悔しくて。一つしかないあぜ道をまっすぐひたすら歩くだけとコンビニの行き方は知っていたから、とにかく歩いた。
ざっざっざっざっ
お母さんに買ってもらった、ピンクのスニーカーで私は歩いてたんだけど、私の足音が暗闇の中で響く。
あーいす、あーいす、と自分を励ましながら、しょうもない意地で出てきてしまった自分を呪いながら、それでも、コンビニの明かりを目指してひたすら歩く。
ざっざっざっざっ
私の足音に混ざって、何か変な音が聞こえてきた気がした。足音が何かに跳ね返って聞こえてきてるのかな。
ぺた ぺた ぺた
いや、絶対に違う。スニーカーで地面を歩いてる足音じゃない。私は気持ち速足で歩く。
ざっざっざっざっ ざっざっざっざっ
ぺた ぺた ぺた ぺた
何か。はだしで歩いてるような。ちょっと水分を含んだような音のような。
確実に私の近くで鳴っている。
ざっざっざっざっ ざっざっざっざっ
ぺたぺた ぺたぺた ぺたぺた
気持ち悪い足音も何故か早くなっている気がする。
早く 早く コンビニついてよ……
ざっざっざっざっ ざっざっざっざっ
ぺたぺた ぺた ぺたぺた ぺた
かなり歩いていて疲れてきてたけども、これは止まってしまったらヤバいと私は感じたから、休まず歩いた。というかほぼ走ってる感じ。
コンビニの明かりが遠くに見えてきた。
もうすぐ もうすぐ
ざっざっざっざっ ざっざっざっざっ
ぺたぺたぺたぺたぺたぺた
なんだか気持ち悪い足音も早くなってる気が。
一瞬私の手に何かが触れた気がした。何かぬめりのあるような。もうよくわからないけど。
私は自分でもびっくりするくらいの全速力で、もう少しだったコンビニまでダッシュした。
もう後ろも振り返らない。
ただひたすら前へ。
私はなんとかコンビニに着いて、中に入った。
汗だくだったのと、息を切らしてる私を見て店員さんもびっくりしていた。
私はコンビニに着いて、誰か他の人がいる安心感と、もう追われていないことと、一気に緊張の糸が切れてしまい、泣いてしまった。
コンビニの店員さんは凄く心配して、私に声をかけてくれた。まぁそりゃそうだよね。
結局、この近くのお祖母ちゃん家というので、コンビニの店員さんが機転を利かせて婆ちゃんちに電話をかけてくれて、少し待ったけど両親がコンビニまで徒歩で迎えにきてくれた。
どうしてもアイスが食べたかったから、という私の理由を聞いて、両親はめちゃくちゃ怒ったが、私が泣いてるのを見て、すぐに怒りをおさめてくれた。
結局、アイスをしっかり買ってもらって、両親と一緒に帰れて、私は満足だった。帰り道で私はなんか変な足音につけられていたことを話した。
すると両親は声をそろえて言う。
私達が来た時は道には誰もいなかったよ。もしかしたら気のせいじゃない? と。
私は、片方の妙にべたついた手を気にしながら、その両親の声を聞いていた。
副部長マイの話は、
なんだか田舎の様子をとても感じさせてくれる話だった。
何のアイスを食べたのかな?




