先生の告白。STEP11:鍵の音
夏祭りのあと、第四回合同納涼祭の日がやってきた。
今回は学校へと舞台をまた移動して、
次は視聴覚室ではなく、音楽室となった。
今回の参加メンバーは、前回の廃寺の時と同じく、
ユウタ、ヒマリ、レイカ、マイ、ソウタ、ダイスケ、吹奏楽部員の一人、シュウジ。そして伊坂先生だ。
◯登場人物
優太
高校二年生 帰宅部
読書、ゲームが趣味
陽真理
高校二年生 怪談倶楽部
ユウタの幼馴染、明るく友達が多い
麗華
高校二年生 怪談倶楽部 部長
ヒマリの一年の頃からの友達
麻衣
高校二年生 怪談倶楽部 副部長
レイカと同じくヒマリの一年の頃からの友達
伊坂先生
48歳 三年生の担任
吹奏楽部と怪談倶楽部の顧問
ユウタの大伯父、修二
69歳 IT会社の会長 破天荒
「え〜!! そんなのってあり!!?」
それは学校の音楽室で、伊坂先生からの話を聞いたヒマリが発した言葉だ。
「いや、まぁなんて言うんだ? 演出みたいな感じというか。あとはみんなにも色々とイベントを楽しんでほしかったからさ〜」
伊坂先生が何やら言い訳をしている理由はこうだ。
実は第一回合同納涼祭での、録音の不具合は、先生が仕組んだものだったらしい。
そして、色々と加工したものを生徒に拡散することで、どの時点で不具合が出たかわからないように仕向けたようだ。
「伊坂っち、なんかやり方が陰湿だよ〜! みんな結構真剣に怖がってたんだから〜」
と、副部長のマイ。その横で部長のレイカは割と普通にしている。
「もしかして、レイカはなんとなく解ってたとか?」
ヒマリがレイカに聞いた。
「あ……ううん、確信とまではいってなかったんだけど、もしかしたらそうなのかな、って思ってたくらいだったの。だって、二回目は伊坂先生抜きでした時は一切無くて、三回目はシュウジ伯父さんが伊坂先生にデータ送って、確認してもらえ、って送ったあとに、それがあったでしょ?」
ん〜、まぁ確かにそう言われてみればそうだけど。
「もしかして、体調悪くなったのも仮病なんて言うんじゃないでしょうね〜?」
まぁまぁヒマリは先生に強い。なんか弱みでも握ってるのか。
「いや、あのあとホントに熱中症気味というか、体しんどくはなってたんだよ、ホントに。そしたらシュウジさんが保護者として参加してくれる、って聞いたんで頼んだってわけ。三回目の時には体調治ってたんだけどな」
え、やっぱりサボりかよ。
「先生、もしかして、廃寺の鐘を鳴らしたのって、先生ですか?」
吹奏楽部の部長のダイスケが聞く。
「あまり色々聞きすぎると夢が壊れてしまうぞ〜」
シュウジ伯父さんが口を挟む。たぶんだけど、大伯父は共犯だな。確か先生の所に行ったとも言ってたし、生徒を驚かす算段でもしてたんじゃないのか。
「まぁまぁ。でも、みんながそれなりに楽しんでくれてるなら、それが何よりだよ。一応今回の夏休みのイベントで成果を残して、少しでも部員が増えればいいな、と言ってたもんな」
このイベントで部員の勧誘も兼ねていたのか。でも、ほぼ関係者だけなんだけど……。
「それにしても、捏造はダメだよ、捏造は」
「ははは、すまんすまん。結構早くにみんなからツッコミがはいるかなと思ったんだけど、意外と入らなくて、調子に乗ってしまった」
この先生も、まぁまぁ大伯父と同じ匂いがするな。
「まぁいいじゃねえか、ヒマリ。そうそう、今回場所を学校の音楽室にしてもらったのは、俺が提案したんだ。吹奏楽部も何人かいるって言うし、話の合間に演奏してもいいんじゃねえかってな」
ものすごく迷惑でしかない、提案。
まぁ……夜とはいえ、学校の立地を考えると、この時間なら演奏しても近所迷惑にはならないのかな。
「演奏はいいけど、今日は誰から話すの〜?」
ヒマリの問いに、伊坂先生が答える。
「まぁみんなに迷惑をかけたこともあるし、寝込んでた間に考えていた話を話そうか」
お詫びに先生が話すそうだ。
——それは今から二十年以上前のこと。俺が教師になりたての頃だった。
中学校の教師になった俺は、二階建ての古いアパートに住んでいた。1DKの小さな間取りだったが、風呂とトイレは別々になっていたし、特に不自由もなく過ごしていた。
気になることといえば、すきま風が少し気になるくらいかな。
ひゅうう ひゅうう
と、風の強い時は、結構な音をたてて吹いていたけど、煩くて寝れないということもなかったし、むしろ無音よりも何か音があったほうが安心感があったくらいだった。
それはいつくらいだったか忘れたんだけど、夜もそんなに暑くなくなっていた時だったから、たぶん夏の終わりか九月に入った頃だったと思う。
畳間に布団を敷いて寝ている。俺は昔からあまり夜ふかしは出来ないタイプで、結構寝つきもいい。ぐっすり寝るから夢もあまり見なかった。
そんな俺が、何故か寝ていたと思うのに、夜中に妙な音を聞いた気がしたんだ。
がちゃり
たぶん、鍵の音? でも、俺が家の中にいるし、大家さんが夜中に家に入ってくることなんてないはずだし、気のせいか、寝ぼけていただけだと思い、また寝た。
次の日の朝、一応なんとなく気になったから、玄関の鍵を見てみた。
ちゃんと閉まっている。
まぁ当たり前なんだけど。
それから、毎日ではないんだけど、その音が聞こえるようになった。
がちゃり
ただ、ほぼ眠っている時だから、俺もわざわざ起きて確認するまではせず、結局何事もなく朝を迎えるという状況。
元々あまり気にしないタチの俺だったんだが、何度もそういうことがあると、さすがに気になってくる。
ある日、友人を呼んで酒を飲みながら、夜遅くまで起きていることにした。
まぁ結局そのタイミングで何も起きなかったら意味はないんだが。
普段あまり酒を飲まない俺は、割と早くに酔っ払ってしまった。友人は俺よりは強いほうだったので、俺がまぁまぁ酔っ払ってウトウトしていても、まだ飲んでいたと思う。
そして、夜中の一時を過ぎても何も起きない。まぁ友人には何も言ってなかっただけに、もうそろそろ帰るといい、友人は帰る準備をした。
俺ももうふらふらだったので、一応友人が家を出てそのあと鍵を閉めるためだけに、なんとか起き上がった。
じゃあなと、友人が扉を閉めて、俺がそのあと、扉の鍵を閉めようとしたその時だった。
がちゃり
俺が扉に近づこうとしたその時に、その音は鳴った。
ひゅうう ひゅうう
風がやけに強くなっている。俺は酔いも一気に覚め、玄関に駆け寄り、扉を見る。
すると。鍵は開いていた。
俺はすぐに鍵を閉め、全然寒くはなかったんだが、布団にくるまり、そのまま寝た。
ひゅうう ひゅうう
ひゅうう ひゅうう
何故かその日は、風がずっと止まず。なんだか誰かの悲鳴のような。女性の泣き声のようにも聞こえる風がずっと吹いていた。
久しぶりに参加した、伊坂先生に衝撃の事実を聞く面々。
気になっていた録音の怪異は伊坂先生が仕組んだことだったのだ。
そして、その先生がお詫びに初めに話す。




