ステップス倶楽部、ってなんだ?
それは、平凡な高校二年生の男の子のお話。
ある暑い夏の日の出来事でした。
ごくごく当たり前に日常に溶け込んでおり……そう、当たり前過ぎて特別なものとは認識されてもいない。
窓の外から聞こえる、車の音。
小鳥のさえずり。
雨や風の音。
近くで鳴っているものもある。小さなものから大きなものまで。
携帯の通知音。
電子レンジの温めの終了音。
時計の針。
テレビ。
自分自身から発している音もある。
頭を掻く。
鼻を鳴らす。
息をする。
お腹の音。
喉がなる。
心臓の鼓動。
この耳で聞いている様々な音もあるけれど、例えば頭で。というか脳で認識している音というのもあるだろうか。もしくは心で?
擬音語。擬態語。擬態語の場合は、実際に耳で聞こえるものではないからな。
ただ、脳では認識している。
実際の音ではなく、言葉で。文字でそれを伝えたり表したりすることができるのだろうか。
それは、受け取り手によって変わってしまうような。
受け取り手によって変わる。うん、その通りだ。だから、面白いのだろう。
同じ音でも。同じ言葉でも。聞いた人間によって、読む人間によって、感じ方や意味合いそのものも変わることがある。
そんなことをふと考えていた。
ふと考えていた、夏のことだった。
◇ ◇ ◇
「ユウちゃん! 聞いてる?」
目の前で、ごくごくありふれた公立高校の制服に身を包んだ、女子が僕に語りかけてくる。
ちなみにここは、学校の教室の中。僕はこの目の前の女子の同級生、高校二年である。
一応、幼馴染という感じ。
「え、なんか言ってた?」
目の前の女子は少し怒っている。まぁ、僕が話を聞いてなかったからだろう。
「ユウちゃん、夏休みどうせヒマでしょ? もう一回言うけど、ステップス倶楽部の集まり付き合ってよね」
ステップス倶楽部……目の間の女子、陽真理が所属している部活の名前だな。ステップスてなんなんだよ、という感じだよな。ステップス=階段=怪談、だってさ。ダジャレかい。
ちなみに、ユウちゃんというのは僕の名前だ。優太と言う。名前に似合わず優しくはない。これは本人が言うから間違いない。
「僕、そのステップス倶楽部、っていう名前自体があまり好きじゃないんだけど……」
「そんなの却下! はい、じゃあ決定! 大丈夫、私も一緒に行くから。外に出るキッカケになってよかったでしょ?」
まぁ、だいたいいつもこうである。でも、実際のところ、家ではゲームか読書かテレビ見てるくらいだから、暇と言われても仕方ない。
ただ、そのあとにヒマリから聞いた怪談倶楽部の集まりの内容に、少しだけ興味を惹かれた。
「今回、吹奏楽部とのコラボイベントなのよね。あ、別に演奏しながら話すわけじゃないよ。ウチの部と、吹奏楽部の怪談好きな子達が集まって、合同で活動する、っていう感じ。夏休み限定だけどね」
吹奏楽部。音。
「もしかして、音にまつわる怪談話を披露するみたいな感じだったり?」
ヒマリは僕に指を差す。
「その通り! ユウちゃんよくわかったね〜。じゃあまあそういうことで。またメールか直接言うね」
そう言って、ヒマリは女友達と共に教室を出た。
なかば無理矢理な集まりへの参加。
もちろん内容もまだ聞いていない。
でも、今年の夏休みは、もしかしたらいつもより少し、楽しくなるかもしれない、と僕は思った。
今は七月の真ん中、もう数日で夏休みというところだった。
音にまつわる怪談話……そんなにあるのだろうか。まぁでも、面白い。
続報を待つことにしよう。
帰りにコンビニでアイスでも買って食べようかな。
僕はのっそりと立ち上がって、特に急ぐこともないので、ゆっくりと帰路につくことにした。




