この世界は、どこか狂っている。
俺はこの街が嫌いだ。
俺は、召集がない日は、
外に出て暇を潰す。
暗い部屋は俺の心も暗くしてしまうから。
俺はこの街の匂いが嫌いだ。
煙の匂いがする。
そのあとに微かだが、血の匂いが鼻を刺す。
この街は今日も暗い。
朝だっていうのに、暗い。
ビルが沢山建っていて、太陽は見えない。
だから、
横を通る人はいつも下を向いている。
「あ!先輩!休みですか?」
「ああ」
「じゃああそこのアイス食べに行きましょうよ!」
「……わかった。」
俺はそれほどに暇だった。
「このアイスおいしいですね!
元気が出る味です!」
「……甘い。」
「次はあっちに、行きましょう。」
手を引かれて、俺の足は少し遅れて歩き出す。
1時間ぐらい経っただろうか。
そんな時に、
俺の心を殴るように悲鳴が響いた。
「クルイビトでしょうか?」
「アイス屋のほうからか。」
「先輩!行きましょう。」
後輩が走っていく。
俺も行こうとしたが、足が動かない。
……俺は何をしているんだ。
「先輩!遅いですよ!
もう終わっちゃいましたよ。」
「すまんな」
「あ、アイス屋さんぶっ潰れちゃいましたね、残念です。」
「……そうだな」
なんで、
なんでそんな普通にしていられる。
……おかしいだろ。
この世界は、どこか狂っている。
「お前には今回の任務は彼と行ってもらう。」
「ぼ、僕の名前はミズノ」
「よ、よろしく」
「気弱なやつだがきっと役に立つはずだ。」
「わかりました。」
「ぼ、僕、本当は戦うの好きじゃなくて」
「は?じゃあなんでここに入った。」
「……お金がなかったんです。」
「ぼ、僕、戦うの嫌いだし、
苦手だし、足、引っ張っちゃうかもしれませんが、あの、すみません」
「……わかった」
「昨日雨が降ったからか、
泥が邪魔だな。」
「二人だけか、なめられたものだね。」
「レイさん!」
「ああ!わかってる!」
俺達の動きが明らかに遅くなった!
「近くの人の動きを遅くする能力か。」
奴が近づきながら言う。
「ふん、No、No、それは少し違うね。」
「……何が違う。」
「私の能力の真髄は、他にある。」
「君達は、
私に近づけば近づくほどに、
遅くなる。」
「な!?」
俺はすぐさま、ミズノを後ろに飛ばした。
「うぇぇぁあ!」
「な、なにするんですか」
「すまない、仕方がなかった。」
「……どうやら俺は、すでに手遅れ
らしい。」
「そう、君は私に近づきすぎた。」
……もう指ですら動かせない。
奴は6メートルには入ってこない。
石を飛ばすが。
「私にこんな遅い弾が当たるわけないでしょ」
その石は歩いて避けられた。
「……すまない、ミズノ
俺はもう、動けない。」
「えぇえええ!」
「さあ、足掻きなさい、せいぜい足掻いたあとに、
殺してあげる。」
これは不味くなった。
ここではミズノの能力も使えない。
「……能力を使用します。」
なにを言っている?
お前の能力はここでは使えない……
そうか!
「僕は水を操る。
だけど、水を生み出すことは出来ない。」
だが、
ここは、昨日の雨で泥になっている。
ミズノが両手を地面に当てる。
地面から、水の小さい玉がたくさん出てくる。
「穿て。」
そう言った途端、水が鋭く、
弾丸に変わった。
高速でそれは奴に向かう。
「……この速度なら!」
「No 、No、
希望持った所悪いんだけど、
そんな遅い弾じゃ、私には当たらない。」
「そんな、僕の弾丸が避けられるだなんて……強すぎる。」
……あとちょっと。
あと、ちょっとなのに。
……速度が足りない。
そんな時、
最初に飛ばした、石が視界に映った。
「……そうだ、速度が足りないのなら、
足せばいい。」
「ミズノ!もう一度弾丸を撃て!」
「は、はい?ど、どうして」
「速くしろ!!」
「は、はい!」
「穿て。」
弾丸が再び撃たれた。
弾丸の速度が遅くなっていく。
「なにがしたいわけ?バカなわけ?
No、No、わかんない?
遅すぎるんだよ、君達」
「バカすぎだろ、お前」
「まだ、わかんねえのか?」
「だから。」
「速くするんだよ。」
「俺の、能力を使う。」
「……ま、まさか!」
弾丸は再び、風を切る。
いや、
弾丸は、空気を割って進む。
もう弾丸なんて速度ではない!
二人の能力は重なり、
弾丸は、
——加速する!!
「お、お前達、ふざけやがって。
後悔するぞ。
……プレアデスが、
お前達を必ず殺す。」
「……プレアデス?なんの事だ。」
「れ、レイさん、も、もう死んでます」
プレアデス?
知らぬ間に体は、震えていた。
——嫌な予感が、した。




