全ての始まり。
この世界は、間違っている。
能力、
種族、
戦争、
なんでもあって、
なんでもありの、くそったれの世界だ。
100人に一人能力を使えるものが現れる。
その、デタラメな能力を使って悪事を働くものだって少なくない。
クルイビト。
それは機関が処分対象につける名前だ。
そのクルイビトの
抑止力として現れたのが、
世界の統制を目的とした、
第一世界統制機関。
俺はその一人の、
レイだ。
「今回のお前の任務は、連続強盗犯のクルイビトの処刑だ」
「その場で殺して構わない。」
「了解」
「この街はいつもうるさいな」
人々の痛々しい叫び声が響いている。
「あっ、いたいた」
「なんだ、おまえ、
ぶち殺ッッ
はぁ、はぁ、突然……目の前に、
……瞬間移動系の能力か」
「はぁ、ちげーよアホ」
俺の能力は引力と斥力。
わかりやすく言えば、人や物を引きつけたりふっ飛ばしたり、
自由自在操れる。
だが、制限もある。
重さは100キロを超えない物であること。
6メートル以上離れた対象には使えないこと。
そして、自分には使えないこと。
一度使用すると5秒のインターバルが発生する。
そして、もう一つ、
俺には特別な能力がある。
俺は、
鬼と人間のハーフだ。
種族戦争だった。
鬼は種族戦争に敗れ、百年前に滅んだといわれている、
その生き残り。
俺は孤児で、鬼の村じゃなくて
街の孤児院にいたし、
そもそも鬼の特徴である角は俺にはなかったからバレなかった。
俺が孤児院に入ってから十年が経った時、
種族戦争は始まった。
だが、鬼は恐ろしいほどに強かった。
そう、鬼はあまりにも強すぎた。
だから、全ての種族が彼らを狙い、結果、滅んだ。
鬼は寿命が人間の10倍ある。
それも確かに凄いが、
鬼が強いと言われた理由は他にある。
鬼だけが持つ、特殊能力。
その、鬼だけが持つ特殊能力と、100人に一人に現れるといわれている能力、
その二つが組み合わさった時の恐ろしさは伝説にさえなっている。
それほど、凄まじかった。
「ご苦労だった。」
「次の任務は?」
「……次の任務は快楽殺人鬼のクルイビトの処刑だ。」
「了解」
「で、どこにいるんだ——」
「後ろだよ、マヌケ」
遠くにいた、
刀なんて当たる距離じゃない。
だが、
俺の胸は切られていた。
「よっわ、なんだクソ雑魚じゃねえか」
「ッふざけるなよ、
雑魚に雑魚ってなめられて、
キレねえほど俺は寛大じゃねえぞ!」
「は?なんで、その傷で動ける。」
「傷か?そんなものねえよ」
鬼には体の損傷が治る特殊な能力があった。
鬼は心臓を潰されない限り、
不死身だ。
だが、俺は鬼と人間のハーフ。
無制限に傷が治るほど強くない。
できても、
一日に、体丸ごと二個分程度しか治らない。
だがこれで十分。
「さて、ここからどうするか」
相手は離れすぎて、能力は使えない。
恐らく相手の能力は
自分の攻撃の、距離の無視。
このままだと一方的に切られて終わる。
……終わりか。
「うなわけねえだろ!」
この能力に一度に使える、
個数制限なんてものはない。
「お前が暴れて作られた瓦礫、
使わせてもらうぜ!」
確かにこの能力は、6メートルまでしか投げられない。
だが、
速度を乗せる。
能力によって100キロを超えた速度の瓦礫は、
止まらない!
「瓦礫!?
……チッ、避けきれないか、」
「避けられないのなら、
切るまで!」
「お見事!褒美をくれてやる。」
もう、俺の6メートルに、
お前は入った!
「ご苦労だった。」
「一度休んだほうがいい。」
「暇だな……」
いつも俺の部屋は静かだ。
電気もなければ水道も、トイレも風呂も、ベッドですら、俺の部屋にはない。
召集を知らせるスマホだけがある。
趣味なんてない。
やりたいことだってない。
夢なんてあるわけがない。
俺は真っ暗な部屋で天井を見る。
それが俺の、
いや、それが僕の、
孤児院での過ごし方だった。
その孤児院には金なんてない。
お粗末で人権侵害もいいとこな施設だった。
狭い部屋に20人もいる。
することもないし、
話すことすらない。
僕達20人は、
冬の寒い日も夏の暑い日も、
その外同然の部屋にいた。
食料は奪い合い、
一枚の薄い毛布すらも奪い合った。
その小さい部屋で僕達20人は戦争をしていたんだ。
僕はそれが嫌で孤児院から抜け出した。
その時に僕は、
第一世界世界統制機関に保護された。
そして、今、
俺はこの機関が
正義か、偽の正義か、
見極めてやる。
そのために、俺は任務をこなす。
「嫌な、夢を見た気がする。」
俺のスマホは召集を知らせていた。
「今回の任務は、
おい!ちゃんと聞け!」
「あ、すみませんでした」
「今回の任務は、村を焼け野原にしたクルイビトの処刑だ。」
「今回は彼女と一緒行きなさい。」
隣には背の低い子がいた。
「私の名前はアカネです!」
「先輩!よろしくお願いします」
「足手纏いですよ、こんなやつ」
「今回は彼のいい機会にもなると思っている。」
「……わかりました」
「先輩はここ長いんですか?」
「80年はいるかな。」
「凄いですね!尊敬します!」
「私、昔に世界統制機関の人達に両親が救われて。」
「私もいつか強くなって、
世界統制機関を支えていきたいです!」
「……そうか、それはいいな」
「来たな、俺はずっとお前達、
世界統制機関を待ってたんだ。
正義ヅラしてるお前らに目のもの見せてやりたくてなぁ」
「見せれるもんなら、魅せてみろ」
「先輩!危ないですよ!」
俺は咄嗟に後ろに大きく下がった。
「なるほど、そういう能力か。」
「あとちょっとだったのになぁ」
「そうだ、俺は人の視覚を支配する」
強すぎる能力だ。
だから、
恐らくこいつの能力にも制限が存在する。
「お前、
なんで俺の視覚だけを支配した。」
「あ゛?」
わかりやすくて助かる。
「お前、同時に一人の視覚しか支配出来ねえんだろ、だから俺だけにしか使わなかった。」
「……バレたからなんだ、俺の能力は最強だ。
負けるなんてありえねえ」
確かにその能力は強い、
だがそれは一体一の場合だ。
3時00分
「後輩!後ろで、俺の目になれ!」
「ッハイ!わかりました!」
「……チッ」
俺は目を閉じて、他の感覚を研ぎ澄ました。
「敵は10メートル先にまだいます!」
「了解!」
「敵がナイフを飛ばしてきました!
右に避けてください!」
「よし!いける!」
3時01分
後ろで血が飛んだ。
「後輩!」
後輩が切られた。
そういうことか!!!
「後輩の視覚を支配したな!」
「馬鹿まるだし、ほんと、
おもしれえなあ」
視界がガラスのように割れた。
——世界が巻き戻る。
3時00分
「先輩!自分の目を信じてください!」
「了解!!!」
「吹っ飛べやあぁぁぁぁぁ!!!」
俺は能力を使って思いっきり、
ビルに吹き飛ばした。
——種族戦争。
俺の両親は、
世界統制機関に殺された。
鬼だったから。
鬼と結婚したから。
けど、それは悪じゃない。
それは悪にはならない。
戦争中だった。
仕方がなかった。
だけど、
それは、許せる理由にはならなかった。
倒した敵がなにか、言ってきた。
「……お前ら、お前らのせいだ、
お前らのせいで俺の両親は、
殺されたんだ。
俺の両親は確かに悪人だった。
だけど、それを許せる理由にはならない!
俺は家族が好きだっただけだ、
お前らと、同じだろ?」
「……」
世界統制機関として、
言い返そうとした。
けど、俺はそれに答えられない。
俺は今、何をしているんだ。
握った拳が静かに震える。
俺は……どっちだ。
痛い。
「そんなの関係ないですよ!
罪は罪、悪は悪!
私達は悪を裁くために戦い続けるだけです!」
……そうか
そう、だな……。
俺は痛みに耐えながら、
唇を強く、噛んだ。
「……なんで、最後、
後輩の視覚を支配しているとわかった。」
後輩の能力は、
時を戻す。
ただし、厳しい制約もある。
1分しか戻せない。
それに一度使ったら10分のインターバルが発生する。
「もともと後輩の能力は聞いてたんでな、
信じる力の勝ちってやつだ。」
「先輩!たまには、いいこと言いますね!」
あいつの言葉が頭から離れなかった。
「先輩!今回の任務ってなんでしたっけ?」
「……」
「先輩?考え事ですか?」
「ん?ああ、すまん」
「今回の任務は気張らなくていい、
雑魚の処刑だ。」
「私!頑張ります!」
「わあ、有名人だ、嬉しいね」
「へー、先輩って有名人なんすね!」
「僕はね、人の未来を壊すのが大好きなんだ。」
「早く来いよ、暇なんだ」
「いや、キミが僕の前に来るんだ」
「先輩!あんなやつさっさと倒しちゃいましょう!」
「僕の能力は、無明長夜」
「は?」
「来ないなら、こっちから行くまでだ」
「この弾丸はキミに当たる。」
「グゥッッツ」
避けた避けたのに弾丸が俺に向かって来やがった。
「ッ先輩!」
「……大丈夫だ、ふぅ、はぁ」
視界が揺らぐ。
痛い。
腹にまだ弾が残っているのがわかる。
「はぁ……なん、なんだ、
お前の能力」
「キミ、なんで教えると思ってるわけ?
教えるわけないじゃん」
苦し紛れに、一発石を投げる。
「はっや、あっぶなー」
「……なるほど、わかってきた。」
「行くぞ、後輩」
後輩はこんな見た目のくせに、近接戦が得意だ。
だから、それを利用する。
「キミ、見た目に沿わず、
ッ強いわね。」
「なめないで下さい!」
「ふんっ」
後輩の一撃が相手の腹に当たる。
「ぅぐうッ」
俺は隙を逃さず、石を投げる。
「僕は石を避ける!」
「はぁ、はぁ、間一髪だよほんと、
キミたち僕のことなめてるんじゃない?」
「お前さ、
いちいち避ける時に、
自分の未来を宣言してたよな?」
「……」
「最初はただイキってるだけかなんかだと思ってたんだが。
お前、今さっき後輩の猛攻で、隙が生まれ、余裕がないのにも関わらず、
お前は宣言をした。
それでこれは、確証に変わった。」
「お前の能力は未来を決める能力だ。」
「……」
「そして、後輩の猛攻を能力を使わずに凌いで、ギリギリまで能力を使わなかったことから、インターバルが長いことがわかる」
「インターバルは、
3分ってとこかな?」
「調子づくなよ!!!」
「キミが長ったらしく説明してくれたおかげで、
こっちは3分のインターバルがもう終わるんだよ!」
「追い詰められているのはキミたちだ!!」
「勘違いすんなよ、
説明してたのはお前にじゃない。」
「宣言しよう。」
「お前の未来は今、決定した。」
「お前は俺に殺される。」
「後輩!!」
「わっかりました!!」
——世界が1分、巻き戻る。
「おい!!!
お前のとこの部下が、世界統制機関の野郎共にやられやがったぞ!!何してんだ!!!」
「すまない、だが次こそは、
あいつらを全員皆殺しにしてくれる。」
「しっかりしてくださいよー。
ほんとに困るなー。」
「おめぇら、雑魚が一人死んだだけでうるっせぇなぁ。
どうせ俺達が勝つんだしいいだろぉがよぉ。」
「うるさいぞお前達、
リーダーが喋る。」
「仲間が一人死んだ?
それがどうした。
我らは、——プレアデス——だ。」
「一人の死など、意味をなさない。」
「我らは、痛みを恐れない。」
「我らは、
すでに痛みを知りつくした。」
「我らは、偽の正義に屈してはならない。」
「我らは、偽の正義に、
本物の正義を見せてやるのだ。」
作中で言っていませんが、未来を決める能力は、制約で、俺はお前に勝つや、俺はお前を殺すなど大きすぎる未来は決めるとこはできません。
あと、無明長夜の意味は調べてください。
やる気によって、書くスピード変わるのですみません。




