第58話『剣と盾』
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白銀の短剣を構えた、その瞬間――
上。
気配が、二つになった。
「……短剣を試そうと思ったんだが」
タクミが低く呟いた。
直後――
ブンッ!!
頭上と正面。
二方向から、アイアンマンティスの鎌が振り下ろされる。
速い。
同時だ。
だがタクミは、落ち着いていた。
魔力を流す。
左腕の腕輪が、淡く光る。
白銀が溢れ、瞬時に広がる。
――身体を覆うような湾曲した盾。
ドゴンッ!!
二つの衝撃が、ほぼ同時に叩きつけられた。
だが。
「……軽い」
腕には、ほとんど重さが伝わらない。
それなのに――
二体分の斬撃を、完全に受け止めていた。
(これなら……)
右手が動く。
シルヴァリオンが閃く。
ズバァッ!!
一体の甲殻が裂ける。
体勢を崩した瞬間――
もう一体。
短剣で弾く。
キィンッ!!
軌道を逸らす。
その隙に、追撃。
ズドッ。
最初の一体が、地面に崩れ落ちた。
タクミは盾を見つめる。
「なるほど」
防御は盤石。
複数でも、問題ない。
「安定するな」
――その時だった。
ガサッ。
ガサガサガサッ!!
木の上。
草の中。
地面の影。
気配が、一気に増える。
姿を現す。
アイアンマンティス。
十。
二十――
「……多いね」
リナが苦笑する。
タクミも小さく吐き出す。
「完全に囲まれたな」
鎌が鳴る。
キィィ……
森全体が、敵意に満ちていく。
だが。
タクミは冷静だった。
「……さっきは試せなかったから」
魔力を動かす。
盾がほどける。
白銀が流れ、収束する。
左手に収まる。
――短剣。
「ちょうど良い」
マンティスが跳んだ。
鎌が迫る。
タクミは体をひねる。
回避。
短剣を振る。
キィンッ!!
鎌を弾く。
その瞬間。
シルヴァリオンが走る。
ズバッ!!
甲殻が裂ける。
だがタクミは止まらない。
短剣を突く。
牽制。
マンティスが反応する。
その一瞬。
右手が振り抜かれる。
ズドォッ!!
首元が裂け、魔物が倒れた。
「……なるほど」
短剣は威力が低い。
だが軽い。
そして速い。
だから――
攻撃の手が止まらない。
短剣で牽制。
弾く。
突く。
視線を誘導する。
その隙にシルヴァリオン。
「攻め続けられる」
三体が同時に飛び込む。
短剣で鎌を弾く。
一体。
シルヴァリオンで斬る。
二体目。
短剣を突き出す。
フェイント。
斬撃。
三体目――
その瞬間だった。
背後。
空気が動く。
「っ」
振り向くより速く、
鎌が迫る。
完全な死角。
回避は間に合わない。
だがタクミの体は動いていた。
魔力。
瞬間的に流す。
左腕。
白銀が弾ける。
盾。
ドゴォンッ!!
鎌が叩きつけられる。
衝撃。
だが。
盾は微動だにしない。
「……!」
タクミの目がわずかに開く。
今のは――
考えるより先に出た。
「盾……」
腕輪を見る。
思った瞬間に、形が出る。
これは――
かなり使える。
マンティスが再び鎌を振り上げる。
タクミは笑った。
「いいなこれ」
盾を解除。
短剣。
すぐに踏み込む。
フェイント。
シルヴァリオン。
ズバァッ!!
魔物が倒れる。
その時。
一体のマンティスが跳躍した。
タクミの横を抜ける。
「っ」
向かった先は――
リナ。
「リナ!」
だがリナは逃げない。
むしろ一歩前に出る。
「舐めないでよね」
鎌が振り下ろされる。
リナは体をひねる。
ギリギリで回避。
剣を振る。
ガンッ!!
甲殻に弾かれる。
「……硬い!」
マンティスが再び鎌を振り上げる。
だがリナは下がらない。
手を前に出す。
魔力が集まる。
《風よ、爆ぜろ》
マンティスの目の前で風が急速に集まり、爆発音と共に離散した。
マンティスが大きく怯む。
その瞬間。
リナが踏み込む。
剣が閃く。
ズバッ!!
首元を深く裂く。
魔物が揺れ、
そのまま倒れた。
リナは息を吐く。
「……ふぅ」
タクミはかけよる。
「今魔法を一瞬で…前見た時はもっと時間をかけてなかったか?」
リナは少しだけ頬を膨らませる。
「私だって成長してるんだよ」
そして小さく言う。
「足引っ張りたくないし」
タクミは首を振る。
「引っ張ってない」
むしろ。
かなり頼りになる。
タクミは残りのマンティスを見る。
もう数体。
だが――
武器の感覚は完全に掴んだ。
左手に白銀の短剣。
右手にシルヴァリオン。
「じゃあ」
タクミは笑った。
「残りも片付けるか」
森の中で、
二つの刃が再び閃いた。
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