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『グラウンドの亡霊たち』 ―血と汗と裏切りの果てに―  作者: キロヒカ.オツマ―


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第70章 崩れゆく闇の帝国



 黒羽会の拠点を制圧した直後、廃工場の奥に残された地下施設の存在が明らかになった。

 竜司は息を切らしながら、懐中電灯を握り、鉄製の階段を降りていく。

 湿った空気と錆の匂いが鼻を刺し、足音が壁に反響して不気味に響いた。


 背後には親友の誠、そして九条が続いていた。

 「竜司、この下……ヤバい空気だ」

 誠の声は震えていたが、それは恐怖というよりも、何かを確信した者の声だった。


 階段を降り切ると、そこは広大な地下倉庫だった。

 無数の木箱が整然と並び、箱には英語とロシア語の刻印がある。

 「武器……いや、それだけじゃない」

 九条が木箱を一つ開け、息を呑んだ。中には密封された小瓶がぎっしりと詰まっていた。


 「カストリの原液……」

 竜司の声が低く沈む。

 この規模は想像を超えていた。ここから全国、いや海外にまで流通していたのだろう。


 その瞬間、背後の通路から複数の足音が迫ってきた。

 「包囲されてる!」

 誠が銃を構え、九条も素早く遮蔽物の影に身を隠す。

 銃撃戦が始まり、暗闇の中に火花が散った。


 竜司は倉庫奥に見えた非常扉へと走る。

 「九条、誠! 持てる分だけ証拠を確保しろ!」

 箱から小瓶や書類をバッグに詰め込み、三人は扉を蹴破った。


 非常通路の先には、錆びた昇降機があった。

 竜司がレバーを引くと、ギギギと軋む音を立てながら上昇が始まる。

 「まるで棺桶に乗ってる気分だな……」

 誠が苦笑したが、その表情には油断はなかった。


 上昇途中、昇降機の外壁を何発もの弾丸が貫き、火花が散った。

 竜司は腰のホルスターから拳銃を抜き、通路側に向かって二発撃ち返す。

 弾丸の音と鉄の匂いが混ざり、時間が異様に長く感じられた。


 昇降機が地上に着くと、そこは廃工場の裏口だった。

 しかし、そこにも黒羽会の残党が待ち構えていた。

 「行くぞ!」

 竜司の掛け声と共に、三人は一斉に飛び出し、物陰を利用して応戦する。


 九条が一人を制圧し、誠がもう一人を背後から無力化する。

 竜司は前方の敵を撃退し、逃走経路を確保した。


 廃工場を抜けた先の路地には、沙希と美咲が車で待っていた。

 「急げ! 警察が来る前に離脱する!」

 車の後部座席には既に大量の証拠品が積まれていた。

 竜司たちはバッグを投げ入れ、すぐに乗り込む。


 エンジンが唸りを上げ、車は闇夜の街を駆け抜けた。

 後方では、廃工場の煙突から黒い煙が立ち上り、遠くでサイレンが響いていた。


 数キロ離れた安全なアジトに到着すると、竜司たちは息を整えた。

 「これで黒羽会は終わったわけじゃない。だが、致命傷を与えた」

 九条がテーブルに証拠を並べながら言った。


 美咲が真剣な表情で小瓶を見つめる。

 「この原液……濃度が異常に高い。使えば即死に近い症状を引き起こすはず」

 沙希は黙ってうなずき、書類を読み始めた。

 そこには、政治家や海外組織との取引記録が赤裸々に記されていた。


 竜司は拳を握りしめる。

 「これを公表すれば、多くの人間が失脚する。だが……血を流さずに終わらせる方法はない」


 誠が笑みを浮かべた。

 「竜司、お前は甘い。だが、その甘さがあったから、ここまで来られたんだ」


 静かな部屋に、外からかすかにサイレンの音が近づいてくる。

 竜司は深呼吸し、決意を固めた。

 「次は、黒羽会の首領を仕留める」


 闇の帝国は崩れ始めていた。だが、その最後の牙は、まだ鋭く光っていた。

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