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バリー・セナジも呆然として立っている。その向こうで、いつの間にか現れた深宇宙探査局のライン・マクイエも驚愕の表情を浮かべていた。
「こんな星を送りつけてどうするってんだ」
マクイエの小声は震えていた。そもそも白色矮星とは、恒星ラロスの四〇億年後の姿である。ラロス程度の大きさの恒星が年を取って赤色巨星になり、周囲のガスが吹き飛んで残ったのが白色矮星だ。物質密度が限界ぎりぎりまで高く、小さいわりには異常に質量がある。しかも表面温度がラロス以上の五万度。こんな物体にミサイル攻撃をしかけても吸い込まれてしまうだけだ。
ルビア・ファフがつばをごくりと飲み込んでヨアヒムに質問した。
「この白色矮星をなんとかする方法はあるのか? レザム星を守る方法はあるのか?」
超AIはそのことについて考えている最中だったようで、なかなか答えなかった。珍しく目が閉じられている。そして一分後に目を開けると同時に答えた。
「大丈夫です。レザム星を守ることは可能です」
それを聞いた近くの人間たちは、喉につかえていた異物が通ったように安堵し、大きく息を吐き出した。おそらく超AIは一分間で無数のシミュレーションを行い、有効な方法を片っ端から見つけ出し、それが可能であるかどうかを考えつくしたのだ。
「この白色矮星がレザム星に直撃するまであと二百日ほどあります。十分な対策がとれるでしょう」
人間たちにはそれが神の言葉のように聞こえた。その恩寵が超AIの口から音波となってもたらされたことで、やっと頻脈がおさまってきた。
そのあとすぐに第一級緊急評議会が招集された。第一級の会議はここ千年間、開かれたことがない。十一面体がこの惑星の中心に居座ってから初めてのことだった。ナゲホ・ミザム議長の暴露がこの惑星を動揺させたときでも通常会議が行われた。
第一級評議会が開かれると、評議員は十分以内に集合しなければならない。遠隔地にいる場合にはホログラムで許されるが、欠席者は罷免されることになっている。だが、最近の十一面体には重役たちが泊まり込んでいるので欠席者やホログラム参加者はいなかった。ある者は介護ロボットに抱きかかえられて駆けつけ、ある者は息を切らせて走ってきた。たいていの評議員はカートを最大速度にして会議室に入ってきた。
楕円形のテーブルの上座にはすでに首相が座っていて、その右隣にはヨアヒムの姿勢正しい姿があるといういつもの光景だったが、違っていたのは会議室のセキュリティだった。参加者全員が揃うと、三十メートル四方の部屋がナノマシンでロックされた。壁や天井、そして床が徐々に光沢を増して金属に変わったのだ。
それまでは床にはベージュ色の絨毯が敷かれ、壁には象嵌や木製の柱、ザトキス神のレリーフがあった。それらがすべて消え、ピカピカの金属で覆われ、鏡張りのような部屋になった。これで、会議室は外部と完全に遮断されたわけだ。
「では、さっそく会議を始める。今回は第一級という指定付きの会議なので、くれぐれも守秘義務を忘れないように」
いつもとは違った高くて緊張気味の声で首相がそう発言すると、九人が黙って立ち上がる。テーブルの中央に向かって一礼して座る。一人増えたのは防衛局長というポストが新設されたからだった。
「諸君。恐るべき事態が発生した。ラロス系に白色矮星が突然出現し、猛烈な速度でわが惑星に向かっている」
三十分前に観測された事実を知らない者が五名ほどいた。五名はそれぞれ驚きの声を発して左右を見る。その目が不安げに隣の者に問いかけている。「本当なのか?」と。
「ヨアヒムから正確な情報を伝達する。では、よろしく頼む」
超AIが立ち上がって説明を始めた。同時にテーブルの中央に、ラロス系に出現した光球の姿が浮かんだ。温度が非常に高く、光学的観測ではただ白色に輝く光のかたまりにしか見えない。
「白色矮星は直径一万二千キロ、質量はラロスの〇・六倍、表面温度約五万度。飛翔コースにはこのレザム星も含まれます。ここに到達するまでに二百日。これが基本的な情報です。ここまでで何か質問は?」
文化局長のヤイサイダ・マイが挙手して発言した。
「前回のワームホール攻撃ではガンマ線が噴出した。これはわが方の攻撃が誘発した予想外の現象だった。今回のもわが方が攻撃をした結果なのだろうか」
高齢といえるヤイサイダはゆっくりと述べたあとにあごを数回引っ掻いた。答えたのは防衛局長のルビア・ファフだった。
「今回も攻撃しました。ワームホールが開通してすぐミサイル攻撃を開始。しかし、ミサイルはワームホールの手前で吸い込まれ、爆発すら確認できませんでした。しかし、前回のように相転移爆弾は使用していません」
その発言に対して、再び文化局長が挙手した。




