第11話 †死合の果て†
「一本ッ!!それまで!!」
ユウガの声がセインの勝利を高らかに告げる。
「さっすがセイン先生!!!相変わらずえげつねえぜっ!!」ナガルがセインを称賛する。
「あれだけの闘気に対し、闘気を用いず制すとは腕をあげましたかなセインさん」
ユウガが微笑している。
「アーシェくんと言いましたね。彼はまだ闘気の使い方に不慣れな模様。ただ、今後我らで教え込めば一流の剣士になる素養があります。」
セイン・・・こんなオレを褒めてくれるのか。ちょっと泣きそう
「みればまだまだ成人前ですから、成長が楽しみです」
ありがとう・・ありがとう・・・
「さて、次はシオンちゃんだが・・・」
「オレにやらせてください!」
ナガルが立候補する。
「うむ。ではシオンちゃんはナガルくんとだな。二人とも前へ」
シオンもやるのか?大丈夫かな??
「がんばれー!シオン!!骨は拾ってやるぞっ!!!」
せめて応援だけはしてあげなきゃ
オレの声にシオンが破顔する。
「それでは始めっ!!!」
シオンとナガルの一戦が始まった。
開始と同時、ナガルが音もなくシオンに近づき小手を狙う。見ていても一瞬気付くのが遅れたほどの自然な動きだ。
ナガルが吹っ飛ぶ。背後の壁に激突し木板が割れる音がした。
ナガルが吹っ飛ぶ??
呆気にとられたのはオレだけではなかった。
全員でシオンの方を見る。
静かに音もなく佇んでいる。こいつやりますねえ。
再びナガルに視線を移す。
息はあるようだ。首の付け根当たりに青黒い痣ができている。突き技か?
「いっぽーーん!!それまで!」
ユウガがシオンの勝利を告げる。
「急所は外しましたんで死にはしないはずです」
シオンが冷たく言い放つ
「それではアーシェ君、ぼくらはお暇しましょう」
シオンに手を引かれ道場から離れようとしたボク達にトードともう1人、巨漢の槍使いが道をふさいだ。
「お客さ~ん。まだまだお帰りになるのははやいと思いますよ?どうですまだやりたりないでしょう?」
巨漢の槍使いがした舐めづりしながら言う。
この男、顔面が整っているのに言葉遣いが下衆い。
「だなあ?この程度で『鬼導館』の全てを知った気になっちゃ困るぜ?」
巨漢の後ろから長身のこれまた色白の優男が出て来た。
「やめないか!ハラド君、それにグレイヴ!」
ユウガが厳しめな声で窘める。
「すまんな。こいつら剣のことになるとすぐに頭に血が上ってしまうんだ。ただ、グレイブのいうことも最もで、ウチにはまだ見せられる『技』があるけど、どうする?見ていくかい?」
「オレは見てみたい!!」
思わず叫んでしまった。これにはユウガも苦笑する。
「そっちのキミはどうする?」
シオンはため息を吐き、「アーシェ君が見たいというなら、僕もみたいかな?」
「よし!決まった!!最後の1本は俺とやろう!!」
「!!??」「大将!!自ら出るんですかっ?」「俺がやります俺がッ!!」
鬼導館門人それぞれがユウガを引き留める。
「いやいや、こっちはナガル君を出して敗れたんだ。後は俺かセインさんしかいないじゃないか」
「ならば私が出ます!」
セインが割って入る。
「それには及ばない。先ほどの一戦でセインさんも疲れているだろう。ここは俺に任せてください」
「わ、わかりました」
ユウガとシオンの対決が始まる。
審判はセインが務めるようだ。オレは固唾をのんで見守る。
「はじめっ!!」セインの掛け声と同時に両者から裂帛の気合があがる。
「ええええぇぇぇぇぇぇーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー!!」
「おおおおおおおおおおおおおぉぉぉーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー!!」
シオンは甲高い声、ユウガは野太いが良く通る掛け声だ。
シオンが速攻をしかける。
正眼の構えから面と見せかけて小手ーーユウガに受けられる。
小手から切り返し喉元に突きーーユウガに避けられる。
突きから横切りーーユウガに受けられる。
「なかなかの膂力と剣速!」ユウガがシオンを褒める。余裕があるのかあの攻防中に?
「まだまだこれからですよ!」
そういうとシオンの闘気が身中からあふれ出てきた。闘気つかわないでやってたのかよ??
「なかなかの闘気!ならば俺も!!」
ユウガも闘気を出した。見るからに重厚な闘気だ。
そしてシオンは八相の構えを取った。
対するユウガは下段の構え。
「ちええぇぇぇぇぇーーーーーーーっい!!!!!」
神速でユウガに接近し光速で剣を振り下ろす。その太刀筋、オレには見えない。
ガチィィィーーーーーーン!!!!金属音
ドカッ!!間髪入れずに鈍い音
ドサッ……倒れたのは・・・シオンだった。
「い、今のはどうなったんだ?」
「今のはシオン君が八相からユウガ先生を袈裟懸けに斬ろうとしたところ、ユウガ先生が下段からその太刀を跳ね上げ、切り返してシオン君の頭を割る勢いで太刀を振るった。それをシオン君が間一髪躱して右肩に木剣を受けたのです。」
セインさんが解説してくれた。
「だいじょうぶかっ!?シオン!!!」
シオンに駆け寄ると息はあるが苦しそうにしている。右肩は赤黒くはれ上がり爆発しそうだ。
「だれか!!手当を頼むっ」
ユウガの大声が道場に響き渡る。
医者が来るまで持つか?シオンの容態は芳しくない。
「使えるかわからないが・・・『ヒール』!!」
掌が発光してシオンを包み込む。
光が止むと、シオンがむくりと起き上がった。
「おいおい!大丈夫かよ?」
「は、はい。死に傷だと思ったんですがアーシェ君のヒールのお陰でどこも痛くありません。むしろ前より元気なくらいです」
シオンはジャンプして見せた。
「あのお兄さん、僕がくらった技は何て言う名前なんですか?」
「うむ、あれは『カイゼル・シン流奥義『龍牙尾撃剣』というんだ」
「僕も使えるようになりますか?」
「うちの道場で修行すればできるようになるさ」
「はい!精進します」
(入門したのか・・・まあそれほど衝撃を受けたのだろう。オレだって・・)
「おーい!すまんがこっちもヒールしてくれるとありがたい!!」
いまだ転がったまま意識が戻らないナガルを指さしている。
「あっ!そっか、いけねっ!!」てへぺろである。
ナガルの治療が終わると何故か宴会になった。
オレたちの入門祝いらしい・・・オレも!?いやむしろ有難いんだけど・・・
ギャハハハハ・・・遠くで誰かが騒いでいる。
とにかくやかましいが嫌いではない。
「おーい、飲んでるかわかもの~~~!!」
ハラドがオレとシオンに絡んでくる。
「みたかいウチの先生?強いだろ~~~!」
「見事な腕前でした」
シオンが真面目に答える。
「だろぅ?だーろうぅ??」
ハラドは持ってきた酒が切れたのかシオンの酒に手を伸ばす。
「グビグビグビッ・・・ぷっはぁーーー!!うまい!!」
たぶん安酒だが確かに旨く感じる。
「先生はなぁ!?アレでも25なんだぞ?」
「25って何ですか?」
「歳だよ歳!!」
「はぁ〜〜〜〜あ??」
あの顔で二十代??シオンと顔を突き合わせて二人で訝しむ。
「序でに言うとセインさんが24でグレイヴさんが23」
「オレとナガルが20でトードが16」
「あと今ここには居ないがゲンさんが40…幾つだっけ?」
「皆さん意外と若いんですね」
「意外とは余計だ!」
ワッハッハと豪快に笑うハラドに背中をバンバン叩かれた。
「ここに居るみんなはよぅ、みんなユウガ先生が大好きでねえ。先生に夢を見てるんだ」
「どんな夢ですか?」
「そらぁ……あれよ。夢といやぁ……」
急に歯切れが悪くなる。
「コイツはバカだから難しい質問しても答えられんぞ?」ナガルが助け舟を出す。
「俺達は皆、先生が行く道を全力で支えたいと言う想いがある。つまり、先生の夢が俺たちの夢って訳だ」
ナガルは酒をちびちびと飲みながら語る。
「先生の夢とは?」
更に追求してみた。
「先生の夢ですか。先生は大臣か将軍になりたいそうですよ」
セインさんが混ざってきた。
「今は一介の剣士だけれどもいずれ功績をあげ叙爵されて領地を持ち、善政を敷いて世の為、民のために尽くす。今の世では立身出世は難しいけれどそれでも目指すからこそ夢なんだと私は理解しています」
グレイヴが意を唱える。
「セイン先生、ユウガさんはそんな小難しいこと考えてないぜ?おおかた偉くなって俺たちに報いたいってくらいのことだろうさ」
「ユウガ先生と付き合いが長いグレイヴ君の言うことだ、一理あるのだろう。しかし私は先生に青雲の志を持っていて貰いたいと願うのです」
「まあまあ御二方、そんなことより酒が足りないんじゃないですかい?おーーっとっと!」
ハラドが二人の間に割って入りセインの杯に酒を注ぐ
グレイヴの杯にはちゃっかりナガルが酒を注いでいた
そして世は更けていった。
オレなんか忘れちゃってない?




