表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
18/34

プロローグ:観測されぬ敵

 主こそが、至上。

 それ以外は、何も必要ない。

 主に仕える。それが、私の生きる目的。

 ただそれだけが、私の存在意義だ。



 ヴァルデリン森林の最奥地点――エルフの秘境。

 ここが、私の目的地。私はここで、精人族(エルフ)を侵略する。

 何故そうするのかは、分からない。だけど、それを聞く必要もない。

 ただ言われたことを遂行する、それだけで良い。私は〝歯車〟であれば良いのだ。


◇◇◇◇◇◇


 エルフが数人、私の前に立ちはだかっている。

 それぞれが、剣、弓、魔法――様々な武器を持っていた。


 弓矢を放つ。

 剣を振る。

 魔法を繰り出す。


 多種多様な攻撃が、私の肉体に直撃する。

 通常の魔人ならばそれなりのダメージを負うが、武器や魔法は、私のような者には通じない。

 (かす)り傷すら付かない私を見て、エルフの一人が(わめ)いた。


「な、なんなんだよ……お前は……! ぼ、僕らの所に来て……。どうして……どうして、僕達エルフのことを襲うん――!!」


 だが、私には何の関係も無い。


 ――一閃。

 鎌を一振りしただけで、そのエルフは死んだ。

 切断部分から血が吹き出し、身体はその場に崩れ落ちる。

 さっきまで()()()かった声も、既に途絶えていた。


 ――弱い。あまりにも、弱過ぎる。

 主は、『この種は有用だ』と仰っていた。

 だけど、私には理解しかねる。この種の、どこが有用なのかを――


 一瞬そう思ったが、私はすぐに考えるのを()めた。

 主の命令は、絶対だ。(こう)(べん)など、許される(ハズ)がない。

 私は、三下奴(エルフ)を一瞥する。

 エルフ達は、仲間が一人死んだことで、(げっ)(こう)して向かって来る。


「――バカな奴ダ。ワタシに勝てるト思うナド、()()がましイ」


 私はそう呟いて、エルフ共の攻撃に、鎌を振るう。


◇◇◇◇◇◇


 ――五回目。

 これで、今日鎌を振った回数は五回目だ。

 先程のエルフ共を倒しても、後から迷宮の魔獣のようにエルフが湧き出て来た。

 何度も何度も倒しても、湧き上がってくる。そのせいで、積み重なったものが巨大に鳴ってしまった。


 ――死体(エルフ)の山を見て、私は思った。

 もう、十分だろう。

 命令も、十分に遂行された。

 次の工程に進もう――と。


 私は死体(エルフ)の山に両手をかざし、呪文を唱える。


「〝我、※※※※※(ナリ)。※※・※※※※※ノ※※※※を堕ロス。(サガ)(ニエ)と替わって召喚されよ〟――」


 それは、この地には必要のない『魔法』だ。

 肉を供物として――〝眷属〟を召喚させる呪文である。


「〝※※・※※※※※の祝福を破リ捨テ、※※※※※・※※の憎悪を(タマワ)ラントス〟サァ――――セヨ――!!」


 死体の山が、ドロドロと溶け出す。

 完全な液状へと変化し、一点に集中する。

 それはやがて何個かに分かれ、液状の肉が地面に染みる。


 ――眷属が召喚されるのを、私は静かに見守る。

 その時に思ったのは、『主の言う〝有用〟とは、こういう事を言うのだろう』くらいだった。


 溶けた肉が染みた部分に、黒い魔法陣が展開される。

 それぞれの魔法陣の中心から、ゆっくりと、私の眷属が現れた。


「グギ、グガ……ガ。ビギギギィィィィイイ……!!」


 眷属どもがうめき声を上げながら、じっと私の方を見つめる。

 私から下す命令を、待っているのだ。

 私はすぐに、眷属に命令を下す。


「お前達、近くノ人間達を襲エ。死んデも、主の元へ帰れルのだカら心配はナイ」


 私が命令を下すと、眷属たちは四方八方へと散開した。


 命令通り、死を恐れずに人間達を殺し尽くそうとするだろう。

 だけど、それが成功するかは分からない。

 あの種の眷属は、比較的防御力に欠ける。隙を突かれたら、虚弱な人間にも倒せてしまう。

 だから、あの眷属達が殺せたとしても最悪でゼロ人、最高で数人程度だと思った。


 ――さて、命令も遂行したし、私もそろそろ森を出よう。

 そう思った時だった。


 人間を見つけた。

 眼前の距離五、六メートルにいる。



 冒険者。

 四人。

 男二人。

 女二人。



 先に、殺しておこう。


 《《ワタシ》》はそう思って、人間達に襲いかかった。

 だが、本気ではない。まだ、余興を楽しむ程度のスピードである。


 先頭の男に鎌を一振りする。勿論、全力ではない。

 だが、弾かれた。その、男の剣で。


 弾くとは、少し、面白い。

 少なくとも、脆弱なる人間とは〝多少〟違う。



 ――面白イ。モウ少しだけ、遊んデあげヨウ。



 ワタシは、男の振り回す剣を受け流す。

 あまりにも遅くて、弱い剣。故に、片手でいなすのも容易だった。

 数分程、軽く遊んでみたが、男の攻撃頻度も次第に落ちていった。



 ――モウ、寿命だナ。



 ワタシは男の剣を受け止め、カウンターの蹴りを放った。

 咄嗟に剣でガードしたのか、男の剣は真っ二つに折れていた。

 男が咳き込みながら、膝をつく。


 他の人間達は、恐怖で震えている。逃げ出すこともできないだろう。

 ワタシは人間達に近づき、鎌を目一杯振り下ろす。



 ――――()れル――――



 鎌が男の首元まで迫った瞬間、目の前に何かが横切った。

 それは、白黄色(ホワイトウッド)の色をした、常人の肩幅二人分の長さだ。



 ――なんダ……枝? 増援なのカ?



「な、なんだ……?」


「枝?」


 人間達も困惑している。作戦ではないようだ。


 ――一体、何なんダ? たかが〝木〟ガ、人間を助けるなド――


 そう考えていると、枝が左右にゆっくりと動く。

 だんだんと、動くスピード上がっていく。

 陽動なのか、挑発なのか、良く分からないが、判断は一瞬。――挑発に、乗ることにした。

 ワタシは全速力で突進し、鎌でその枝を切断――

 ――することは叶わなかった。


 枝が高く飛び上がった。

 そして、側頭部を目掛けて、驚異的な速度で振られた。




 バッッッッカアアアアァァァァン――――ッ!!




 回避不可。

 頭に直撃し、身体が吹き飛んだ。

 頭が揺れる。上手く物を考えられない。

 背中が、近くの大木の幹に打ち付けられる。



 ――イタイ。ハヤイ。



 ひび割れるような音が轟いたが、実際の所は全くの無傷だ。

 すぐに立ち上がり、首を鳴らす。

 未だに揺れている〝枝〟を睨み、考える。


 ココデ本気にやってもいいが、《《まだ》》早イ。

 ワタシは、方向も見ずに全速力で逃げる。

 ワタシは、まだ負けるわけには行かないのだから――


◆◇◆◇◆◇◆◇◆


 冷たい水が渦巻く闇の中。

 濡れる岩石が四方八方を覆い、唯一〝空気〟ある


 チャプン……チャプン……。

 と、水が(したた)る音が響く。


 ワタシは、やっと戻ってきた。

 この拠点(イエ)に、戻ってきたのだ。


「――どうしタ? 戦ッタのか?」


 玉座の(そば)に横たわる、一人の男が話しかける。

 そいつは、私の同胞であり、かけがえのない〝相棒〟である。


「あァ、相棒か。問題ナイ、ダメージは小さいしナ」


 応答すると、相棒は顔をしかめた。


「――オマエが傷つくなド、久しぶりデはないカ?」


「……フム。確かに、数百年以来かもシレヌな。だが――私の命は、主にあリ。他は、何もいらヌ」 


「それハ、オレも同意見だ。どれだけオレタチが相棒の関係だろうと、主の前にハ〝塵〟以外の何者ではナイ」


 私は全てを侵略する。人も、魔物も、森も、海も。

 主が望めば、私の意思や実力など関係ない。

 私は、主の御心に答えるだけで良いのだ。

 私は、[観測対象外]――主に仕える、〝超戦士(エリート)〟なのだから。

ここまで読んでくださり、本当にありがとうございます!


「面白い!」「続きが気になる!」

そう思っていただけたら、感想や評価をいただけると嬉しいです!


★★★★★やブックマークをしていただけると、作者が飛び跳ねて喜びます!


皆さまの応援が、次のお話を書く力になります。

これからもよろしくお願いいたします!

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ