第81話 全面戦争、『虹の蝶』対『鉄血の獅子』!①
※ 本日17時にもう1話更新予定です!
街の中心から少し外れた場所に『鉄血の獅子』のギルドは存在した。
元の『白銀の翼』のギルドを改修し、さらに大きく荘厳な佇まいとなり、外壁には獅子の紋章の旗が並ぶ。
「ギャハハ、それでよぉ、皆ビビってやがるんだぜ!」
「はは、めっちゃウケるわそれw」
脚をテーブルに乗せながらゲラゲラ笑う『鉄血の獅子』のメンバー。
強さこそ絶対正義――『鉄血の獅子』の理念自体は決して珍しくはない。
本懐の『鉄血の獅子』がその実力で同じ思想を持つ様々なギルドを取り込み、今の形になった。
後は王国一の武闘派ギルドを倒して成り上がる……というところで突如『白銀の翼』は崩壊。
彼ら『鉄血の獅子』にとっては願ったり叶ったり、立派なギルド跡地も手に入ったことで勢いに乗っている。
もう自分たちに敵はいない、刃向かってくる者が愚か者だと。
「そーいやさぁ、あの胸に虫付けてるあのギルド、何だっけか?」
「『虹の蝶』だろ、街歩いてるとウヨウヨいるぜ」
「あーそうだ、そいつら昨日森でなんか草採ってたから攻撃魔法でご挨拶してやったよ、『鉄血の獅子』のお通りだってな。ビビって逃げていきやがったぜ」
「うは、情けね〜!」
「めっちゃ面白そうじゃん、俺もやってみよw」
「――そうだ、お前らやるなら徹底的にやれ!」
大柄なジャケットを身に付け、船長帽子を被った男――船長ランザスがギルドを練り歩きながら叫ぶ。
「『虹の蝶』なんざ腰抜けの集まりだ! 『鉄血の獅子』が最強のギルドってのを証明するんだ!」
「よっ船長!」
「海賊船が潰れてもポジティブな所、やっぱり最高です!」
「うるせぇ!」
ランザスは船員服の子分を殴り付ける。
吹っ飛ばされた子分は遠く離れた酒樽の山に突っ込み、気を失う。
「あの腕力、さすがランザスさんだぜ……!」
「俺たちとは違って、ギルドリーダーから密命を与えられる立場なだけはある!」
ランザスの胸の獅子の紋章がキラリと光る。
そう、ランザスの所属は『鉄血の獅子』、海賊はあくまで隠れ蓑。
彼は子分だけでなく『鉄血の獅子』の下部冒険者を束ねる立場にあり、そもそもの『鉄血の獅子』の横柄な態度は、彼の先導によるものが大きい。
「『虹の蝶』なんざ虫の集まりは目じゃねぇ、クフラル王国最強は『鉄血の獅子』だ! お前ら、獅子の立髪に誓え!」
ランザスはテーブルの上に立ち、高らかに宣言する。
「『鉄血の獅子』最強!」
「『鉄血の獅子』最強!」
ギルド中にコールが響き渡る。
そのとき、
ドカアアアアアアアアン!!!!
ギルドの入口から爆発音が響く。
「何だ!?」
「大砲……大砲を撃ち込まれたのか!?」
動揺する『鉄血の獅子』。
すると白煙の中から、凛とした赤い長髪の女剣士が姿を現す。
続けて、
炎剣を背負う白髪の少年。
双剣を装備したピンク髪の少女。
槍を装備した金髪の少女。
魔導銃を装備した黒髪の少女。
背後には様々な職の冒険者たち。
美女が率いるトレハンギルドの姿もある。
そして、いずれも胸には――。
「蝶の紋章、まさか!」
「『虹の蝶』だあああ!!」
「『虹の蝶』が『鉄血の獅子』に、殴り込みをかけてきやがったあああ!!」
状況を察した『鉄血の獅子』は各々が武器を持つ。
ギルド跡地を改装するだけあり『鉄血の獅子』も規模では決して負けていない。
『虹の蝶』と『鉄血の獅子』――現クフラル王国2大ギルドが睨み合う。
「おいおい躾がなっちゃいねぇなぁ、ノックのやり方くらいオレっちでも知ってるぜぇ!」
「ギルドリーダーを出せ」
ベローネはランザスを睨み付け、静かに言った。
「あーあ美人が台無しだぜ、まったく……お、やっぱお前もいるよなぁ、こっちこいよ」
ランザスは白髪の少年――マキナを呼び付ける。
「……」
マキナはランザスと向かい合わせになる。
楽園竜の騎士団長――砂塵のベルフェムトも大柄だったが、ランザスは更に大きい。
まるで大人と子供だ。
「お前とはヨロイ島での因縁があるな。オレっちの船が沈没させられた……辛いぜぇ、危うく漂流だ。だけど全部水に流してやろうと思ってんだ。何でだと思う?」
ランザスはマキナの頭に手を置く。
「この街に来てみたら『虹の蝶』が腰抜け連中ばかりだったからよ、そんな雑魚相手に構うのも時間の無駄だって分かったんだよ。でもまぁ、昨日森でチラチラ舞ってる蝶がうざったいから虫除けはしてやったけどw」
そのまま乱暴に頭を撫で回すランザス。
ギルド内は『鉄血の獅子』の嘲笑で包まれる。
「ギャハハハハハハ!」
「何もやりかえしてこねぇじゃんあの白髪!」
「家に勇気でも忘れまちたか〜?」
マキナは一言も発さず、目元は陰で暗く見えない。
「はぁ〜いざ面と向かったらこんなもんかよ、つまんねぇガキだな」
ランザスは膝で右手を拭い、差し出す。
「どうする? 仲直りがしたいってんなら握手をすることでその証明になるぜ……あれ、オレっちやっぱ優しい海賊じゃね?」
「……」
マキナは黙ったまま差し出された右腕を、
ゆっくりと握り、握手で応えた。
「……はは! こいつマジで握りやがった、やっぱり腰抜けの集まりだな『虹の蝶』は、これにて一件落着だな、ちゃんと扉直して帰れよ!!」
「マジで良いもん見たぜw」
「乗り込んでおいてだっせーなぁ!」
ギルド内に轟く『鉄血の獅子』の嘲笑。
だがマキナも、『虹の蝶』ですら何の反応も示さない。
異様な空気を察したランザスは握手を外そうとする、だが。
「ん?」
マキナの手が外れない。
気のせいかと思ったが、どれだけ力を込めても外れないのだ。
自分よりも強い握力で押さえつけられている。
「おい、外しやが――」
すると、ランザスの全身に影が覆う。
彼の目には、マキナが左腕で巨大な棍棒――破壊棍ダモクレスを振り上げる姿。
「え」
ゴシャ!
ランザスの巨躯を超えるダモクレスの一撃。
それは、彼を気絶させるのに充分すぎる威力を持っていた。
「……あぐぁッッ」
ズシン、と倒れるランザス、
余りの威力に、床に深いヒビが入る。
「へっ!?」
一瞬何が起きたのか分からない『鉄血の獅子』。
「悪い」
マキナは乱れた髪を直すと、ゴミを見るような目でランザスを見下ろす。
「寝てたわ」
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