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第59話 休息、そして。

※書籍化決定しました! 皆さんの応援のお陰です、ありがとうございます!!


 マキナ達は無事に生還を果たした。

 鉱山の登山口が見えた時、リサーナが真っ先に駆け寄ってくれたのが印象に残った。

 結論から言うと、ロックトレントの脅威は完全に消滅した。

 何故分かったのかというと、楽園竜(アイランド・ドラゴン)が睡眠を始めたからだ。

 ロックトレントに蝕まれたままでは決して出来ない、事態の収束を証明するには充分だった。


 そんなマキナはというと。


「もういいだろ、大袈裟すぎる」


「良くない、絶対安静!」


 ベッドに寝かせられ、アリア、ステラ、ベローネに睨まれていた。

 ロックトレントの毒の威力は凄まじく、マキナの身体は思っていたよりも衰弱していた。 

 当のマキナは平気そうだが治癒師曰く、会話が出来てるのも奇跡らしい。


「毒だってもう無いんだ、動ける」


「治癒師の人が言ってたでしょ、アンタは1週間はちゃんと休まなきゃ駄目だって!」


「今の君の状態では許可する訳にはいかない、お願いだから鉱山に行くのは充分休んでからにしてくれ」


「分かった、大人しくしてるよ」


「そうそう大人しくしてなさい。今思うとここへ来てからアンタが1番頑張ってた気がするわ」


「ロックトレントにトドメを刺したのも、ミスリルだって手に入れたのもマー兄だしね!」


「だからこそ休んで欲しいんだ、分かってくれたようで嬉し……おいマキナ、どこに行く!?」


「今何か聞こえた、鉱山が俺を呼ぶ声だ!」


 マキナは外套を羽織ると同時に治療室を飛び出した。


「にゃーー!? マー兄が逃げたーー!!」


「絶対に捕まえるわよ!」


 鉱山からの幻聴が聞こえるほど、マキナの採掘欲は膨張していた。

 そんなこんなでマキナはきっちり1週間療養。

 身体はすっかり健康体になった。


 そして、1つのイベントが催される。

 場所はアスガルド家の屋敷の庭、マキナ達の生還とクエスト達成を祝うパーティーが行われていた。

 ここにいるのは皆、今回のロックトレント討伐に協力してくれた者達だ。

 騎士団員も普段の重苦しい鎧を外し、ローズ団と共に肩を組みながら笑い合う。


「これはすごいな」


 マキナはその賑わいを見て思わず呟く。

 楽園竜(アイランド・ドラゴン)に迫っていた危機が取り払われたんだ、この盛り上がりも頷ける。


「ほらほらマー兄も食べなよ、せっかくのパーティーなんだし!」


 アリアは自分の皿のベーコンをマキナにぐいぐい押し付ける。

 確かに皆無事でクエストを終われたんだ、ここは自分の労をねぎらう為にも楽しむとしよう。


「アタシ達っていわゆる、この楽園竜(アイランド・ドラゴン)を救った英雄ってことになるわね」


 ステラは誇らしげに言いながらジュースを口に運ぶ。


「英雄か、何か恥ずかしいな」


「私達はそれくらいの働きをしたんだ。マキナ、君はもう少しぐらい胸を張ってもいいと思うぞ」


「そうです、皆様はこの楽園竜(アイランド・ドラゴン)の英雄です!」


 ベローネは腕を組みながら頷くと、4人は声をかけられる。声の主はリサーナだった。


「『虹の蝶』の皆様、ロックトレントを討伐していただきありがとうございます。この場を借りてお礼を言わせて下さい」


 リサーナはお辞儀をする。


「皆さんには感謝しかありません……!」


「リサーナちゃんの力になれてよかったよ!」


「マキナさんが大変なことになったと聞いた時は、私、本当に……うう」


 リサーナは感極まり、目に涙を滲ませた。


「ああリサーナちゃん!」


「すみません……でも、私のせいで、ううう」


「ほらマー兄、慰めてあげて!」


「は、アリア、おい!?」


 アリアはマキナの背中を押し、リサーナの前に立たせる。


「理由はどうあれ、涙の原因は君にあるな」


「男は責任を取るべきよ」


「変な言い方やめてくれ、誤解が生じる」


 マキナはため息を吐くと、喉を整える。


「えーっとリサーナさん、いやリサーナ」


「ううう」


「俺たちは冒険者である以上、命をかけることは当たり前なんです。もし今回死んでいたとしても俺はリサーナじゃなく自分の未熟さを恨みます」


 マキナは続けて言った。


「だから気にしなくて大丈夫です。こうして話が出来てるんだから笑い合う方が俺は嬉しいです」


「マキナさん……ありがとうございます」


 リサーナは泣き止み、笑顔を向けた。


楽園竜(アイランド・ドラゴン)の消耗した体力を回復させるべく、数年はこの地に止まろうと思います」


「ってことは、アタシ達がギルドに戻った後も遊びに来れるんだ」


「ええ、皆様なら大歓迎です!」


「やったー、またリサーナちゃんに会える!」


 アリアはぴょんぴょん飛び跳ねると、リサーナに抱き着いた。


 そんな中、1人の少年がマキナ達に近付く。


「君は、確かニコルだったよな?」


「はいッス、マキナさんが元気になってよかったッス」


 中性的な顔立ちに獣耳が乗った姿、少女に見えなくもない。


「改めてありがとう、君は命の恩人だよ」


「オイラには勿体無い言葉ッス……!」


「そんな事はない、君がいなかったら間違いなく死んでたからな」


「オイラ、直前までマキナさんの炎剣を奪おうとしたんス。お礼を言われるような奴じゃないんス!」


「でも、奪わなかっただろ」


「へ?」


「今回の事も、どうせジュダルが変なことを君に吹き込んだからだろ」


 マキナはジュダルと決して短い関係では無い。

 何となく想像は付いていた。


「でも、オイラ……」


 それとは別にニコルには気掛かりな事があった。


「そうだ、私は君と話をしなければならなかった」


「ひい!?」


 ニコルの後ろにベローネが立つ。

 余りの迫力にニコルの腰が砕ける。


「そうッスよね、いくらなんでも闇ギルドの事実は消えないッスよね、冷たい牢獄で悔い改めるッス!」


 ニコルは観念し、両腕を差し出す。


「……何の腕だ、これは?」


 ベローネはキョトンとしながらニコルを見る。


「へ、だってオイラを捕まえるんスよね?」


「違う、私は依頼されたんだ。息子を捜索してほしいと君のご両親にな」


「え!?」


 ニコルはベローネから実際の依頼書を受け取る。


「この字の丸み、確かにお母ちゃんの字……!」


「その時は闇ギルド『魔狂の牙』の壊滅も同時に受けていてな、君が在籍していると知った時は驚いた」


 ベローネはニコルの目線になって話す。


「リーダーの氷炎のバトラーという男は几帳面な男のようで、団員の活動を何時何分まで身の毛がよだつくらい細かく記録していた。君が悪事に加担する前に私が壊滅させたことも、その記録で証明された」


「え、じゃあ……!」


「君が心配することは何もない、ということだ」


「ううう、良かったッスーー!!!」


 ニコルは蹲りながら泣き出した。


「何でも冒険者になりたくて村を飛び出したらしいじゃないか」


「え、そうなのかニコル?」


「はいッス、冒険者になればこの盗賊スキルを活かせると思ったんス」


「俺の毒を抜いてくれたスキルだな」


 スキルを持つマキナにとって、それを活かして暮らしたいと思うニコルの気持ちは分からなくもない。


「だったら『虹の蝶』にこないか?」


「え」


「俺も入ったのは最近だけど、皆いい奴ばっかりだ。いいよなベローネ?」


「ああ、ご両親もちゃんとしたギルドなら入ってもいいと仰っていた」


「――話は聞いたよ、それならアタイが面倒見ようじゃないか!」


 声の方向にはローズがいた。


「ニコルって言うんだってね、アタイ達『ローズ団』も『虹の蝶』に入るつもりなのさ。そのスキル、ウチの下で役立ててみないかい?」


「え、オイラを、必要としてくれるんスか……?」


「トレハンギルドに持ってこいのスキルさ、アタイは大歓迎だよ」


 思わぬ提案にニコルはマキナに目を向けると、マキナは笑みで返した。


「よろしくお願いしますッス!」


「その腕前、期待させてもらうよ」


 ローズに差し出された右手を、ニコルは両手で握手をした。

 新たな仲間が増え、『虹の蝶』の更なる盛り上がりを予感させた。


 その時、


「――離しやがれぇぇぇぇ!!!!」


 遠くから微かに叫び声が聞こえた。

 聞き覚えのある男の声、気付いたのはマキナだけだった。

 どうやら屋敷の庭の外からだ。


「む、どうしたマキナ?」


「ちょっと散歩してくる」


 マキナは1人、賑わうパーティー会場を後にした。


【※読者の皆様へ】


「面白い!」

「続きが気になる!」

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★★★★★


よろしくお願いします!

※楽園竜編、後2話で終了です。


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