ショウの解説
エミリさんの薬局はまだ再開していない。
精神的な疲労は薬では回復しない。
時々、僕の家族と食事をしてリコのお腹のふくらみを気にかけてくれる。薬剤師がお隣さんなのは助かる、僕の記憶障害も少しは回復したが、覚え違いが怖い。
平穏な生活を送りながら、僕はやり残した事を思い出し王都へ向かった。王都で執政をしていたドレーゼンが王位に就くと聞いたからだ。
あの戦争で消えた王族達は戻らない。
彼が王になるのは国民も希望している。
『僕は死の淵をさまよいながら見ていた。地下室で逃げ仕度をする王族が闇に消えた事。研究施設に隠れる研究者が闇に消えた事。消えた人間の恐怖がマナに呪いとなって取り憑いた事。マナは仲間の為にドレーゼンの命令に従った事。
僕は以前から気付いていた。鍵がかかっていたダンジョンに魔族が先に入っていた事。誰かの手引きで魔族が王宮に侵入した事。アルストリア襲撃の情報がある男にだけ知らされていた事。生存した兵士の殆どがドレーゼン直属の部下だった事』
すべてを抱えてマナは旅立った。
だから、僕はマナが果たせなかった事を代わりに行う。
王位継承儀式を終えた新王は、城下町を鼓笛隊とパレードしている。
民衆は喜びの歓声をあげ、新王誕生を祝っている。
一陣の風と共に黒い矢がドレーゼンの喉笛を捉えた。
倒れる新王。
民衆の悲鳴が王都に響いた。
『これで終わりだ』
帰りの馬車に乗り、家路についた。
「お客さん、複雑な顔をしてますね」
馬車の運転手が話しかける。
「まあね、嬉しいような、悲しいような」
馬車の運転手が馬車を止めた。
「そうか、こっちは嬉しい報告だよ。ショウ」
僕は馬車から飛び降り身構える。しかし、武器らしい武器は持っていない。
「安心しろ、終わった戦争を根に持つほど、愚かじゃない」
「驚いたよ、ハイド。魔王になったと思ってた」
「なったさ。隻腕の王ベルセデム・ハイド・ゼバリスだ」
「それで、嬉しい報告って?」
「子供が出来たんだ。来年の秋に生まれる予定だ」
「それは、おめでとう。来年の秋なのか」
「人間と魔族は違うからな」
「それを伝えに、わざわざ」
「いや、それとだな。生まれた子供にショウって名付けて良いか?」
「構わないけど、ハイドが嫌じゃないのか」
「王になると色々あってな、戦争の英雄の名を付けろって執政官が・・・」
「英雄じゃないけど。それよりも、敵の英雄の名前を付けるの」
「魔族では普通の事だ。断っても変更は無いが、報告はすべきと思って」
「だったら、もう直ぐ生まれる僕の子供にハイドって名付けて良いかな?」
「ああ、構わないさ。お互いに大切な仲間を失った、戒めとして名付けよう」
「ああ、その通りだ。女の子だったら、ごめんね」
「その時は『メリッサ』と名付けてくれ、俺は『セシリア』と名付けるから」
「いや、『マナ』にして欲しい」
「『マナ』・・・古い魔族語で『未来』って意味だ」
「・・・よろしく、頼むよ」
「停戦協定では民間人の出入りを規制していない。また会おう、ショウ」
走り去る馬車に手を振って別れる。
「あ、置いてかれた。あいつ、根に持つタイプだな」
戦闘を書くのが苦手で、予定より短くなりました。途中、雑になった部分は加筆修正すると思います。最後まで読んで下さった方、ありがとうございました。




