異次元の格差婚(おまけ)
ここはトーマスの家、ショウとリコのパレードを見送った後、親戚の男性達は裏庭で酒を飲みながら談笑していた。
「やれやれ、無事に終わったな」
「兵隊が来たときは驚いたけどな」
「トーマスはどこ行った?」
「総司令官殿をお見送りに行ったよ」
「パレードの最中なのに」
「戦う方の兵隊と別の馬車で視察に行くらしい」
「アルスウエストか、婿さんの親戚もアルスウエストだったな」
「だから、どうした?」
「いや、軍の司令官が、わざわざ来られるなんて・・・」
「アルスウエストだ、通り道じゃないか」
「偶然、鼓笛隊を連れてか」
「そりゃ、両親も軍族って言ってたろ」
「そうだけど、普通そこまでするか」
「おまえら、あの馬車の紋章、見なかったのか、あれは王家の紋章だぞ」
「ほら、王家の関係者かも」
「婿さんが・・・まさか」
「近衛部隊だったよな・・・」
「戴冠式の警護って言ってたな・・・」
「両親の事は聞くなって・・・」
親戚の男性達がショウの噂話しをしていた。同じ頃、女性達は台所で食器のかたづけをしながら談笑していた。
「リコちゃん綺麗だったわね」
「そうね、結婚式も楽しみだわ」
「結婚式も相手の親戚が少ないと、こっちに負担が増えるわ」
「婿養子でも、人は集めてもらわないとね」
「リースさん、婿さんの親戚の方は?」
「事故の報告とかで、軍隊の方と家族で行かれました」
「なんで、あの人達が、ま、いなくても関係ないけど」
「ねえ、軍隊の司令官て、何する仕事かしら」
「それは、司令だから命令するのよ、突撃!とか」
「そうよね、だったら婿さんも突撃って、命令されたら突撃するのかしら」
「あなた達、何言ってるの。近衛部隊は突撃しないわよ」
「じゃ、何するの?」
「王族に仕えるのよ、内容は、知らないけど」
「リースさん、何か聞いてないの」
「それがね、リコは玉座の間でプロポーズされたって言うのよ」
「玉座!?王宮でしょ、入れるものですか」
「そうだけど『剣を構えて、一族の誇りにかけて』とか、カッコ良かったって」
「貴族みたいな言い方ね」
「そうだ、お隣のエミリさんも貴族がどうとか言ってたわ」
「婿さんが・・・まさか」
「戴冠式の警護って言ってたわ・・・」
「その時に紹介したって・・・」
親戚の女性達がショウの噂話しをしていた。同じ頃、大通りでは近くに住む住人が大勢、集まっていた。
「鼓笛隊が来てるって、どこに?」
「今、アルストリアをまわってる」
「だから、どこを」
「知らないよ、ここで待機してたんだ」
「落ち着けよ、ここから始まったんだ、戻って来るよ」
「でも、なんで王国軍の鼓笛隊がアルストリアに」
「なんでも、トーマスの娘の婚約パーティーらしい」
「トーマスさんが呼んだのか?」
「いやー、見栄っ張りのトーマスでも、そんな金は使えないだろ」
「金で呼べる組織じゃないだろ」
「王都でも滅多に見られない鼓笛隊だ、俺、走って探して来るよ」
「おーい、巡回ルートは鼓笛隊に渡して、親戚連中も分らないって」
「トーマスはどこ行った?」
「それが、総司令官殿をお見送りに行ってるらしい」
「総司令官?軍のトップだぞ、なんでトーマスと」
「招待客の話じゃ、婿さんが呼んだらしい」
「婿さんて、何者だよ」
「ハハハハ、そんな事・・・、貴族も・・・、館から出て・・・」
「婿さんが・・・まさか」
「貴族が婿養子なんて・・・」
大勢の住人が大通りに集まっていた。同じ頃、ショウの招待客は薬局の2階から大通りを見ていた。
「どんどん、人が増えてるよ」
「まるで祭りだな」
「収穫祭でも、こんなに集まらないわ、ショウちゃん凄いわね」
「ここなら人を気にせず、帰って来たショウに手が振れるさ、ハハハハ」
「エミリちゃん、やめて、まだ腹筋が・・・」
「ハハハハ、こんなに笑ったのは、初めてかもな」
「もう、そんなに笑っちゃ失礼よ」
「俺が結婚しても同じ事するのかな」
「婚約パーティーと結婚式の後はパレードをするわ」
「それだけでも十分、恥ずかしいな」
「戴冠式の日に女王がパレードしてた馬車と同じ馬車だよな」
「そうそう、あれで目が覚めちゃった」
「本来は王族専用だ、まあ、最近は寛容になってるけど」
「王都をパレードする時は、魔法で演出してあげるね、キラキラって」
「ハハハハ、そんな事したら、貴族も驚いて、館から出て来るぞ」
「まったく、エミリ、まだ時間があるから、ハーブティーを入れて来なさい」
「はーい」
「あ、私、手伝います」
パレードが終わり、馬車から降りたショウとリコを住人達は拍手喝采で迎えた。
この日からショウを見る住民の目が変わった。
町を歩くと知らない人に挨拶され、買い物をするとおまけが付く、商工ギルドの役員に推薦されたが年齢を理由に保留になり、息子の事で気まずかったフローラと自然な会話をするようになり、ご近所の付き合いにも参加するようになった。
『いい婿さんを迎えられましたね』
この言葉にトーマス夫婦も機嫌良く、婿養子と生活している。
最後にリコだが、当日はノリノリで手を振っていたが、恥ずかしさから数日間、家に引きこもった。




