ドラゴン襲来(6)
赤いドラゴンの猛攻に竜族は散り散りになり、攻防の連携が取れていない。
僕は赤いドラゴンの前に走った。
赤いドラゴンは右腕を振り下ろす。地面が大きくへこむ威力だが、振りが大きく余裕を持ってかわせる。
僕は矢を放った。
狙いは目、ここなら普通の矢でもダメージがあるはずだ。
右目を潰されたドラゴンは、炎を吐いて攻撃してきた。
『痛みを感じないのか』
僕は風魔法で上昇気流を起こした。
火は本来、上へと燃え広がる物、上昇気流が風の壁となって、炎を押し上げる。しかし、熱線は届くので、燻されるような熱さが襲う。
『意外と熱くない、ルキアの魔法に感謝』
上昇気流を計算に入れ、左目を狙い矢を放つ。
赤いドラゴンは体をくねらせ矢をかわし、その勢いで尻尾を振り攻撃してきた。
僕はジャンプでかわす。
空中の僕にドラゴンの牙が襲い掛かる。
『しまった』
次の瞬間、黒い影が僕の前に・・・。僕は風圧で後ろに飛ばされた。
赤いドラゴンの首に黒いドラゴンが噛み付いている。
「少年!こっちだ」
「リゲルさん」
後でリゲルさんが呼んでいる、竜の姿だが声でわかる。
「リゲルさん、目です。目を潰せば」
「それでは駄目だ、魔力を感知できる。ドグスの牙も届いていない」
赤いドラゴンに噛み付いてたドグスさんが振り払われ、敵がこちらに向かってくる。
「少年、乗れ!」
「え?!」
「早くしろ」
リゲルさんは僕をつかみ背中へ投げ乗せた。
翼を羽ばたかせ空へ舞う、僕は慌てて首にしがみ付いた。
「少年よ見事な戦いだ、その力使わせてもらうぞ」
「それより、奴も飛んで来てますよ」
「好都合だ」
赤いドラゴンは僕達を追いかけて空を飛んでいる。しかし、リゲルさんのそれと比べてスピードが遅い。さらに旋回も大きくゆっくりしている。
「空中戦は小さい方が有利だ、そなたのエルフの宝刀で奴の急所を突いてくれ」
「やってみます。落ちたら拾って下さいね」
「無論だ」
右目を潰された怒りで、僕達だけを狙っている。他の竜族の攻撃も無視して、追いかけてくる。
「次の好機に正面から行くぞ、そなたは上、我は下、良いな」
「いつでも跳べます」
連携とはイメージの共有である。短い時間、少ない言葉でも、お互いのイメージが同じなら、狙いどころも同じになる。
竜族の急所は、今、僕がしがみ付いている場所、脊髄だ。
「行くぞ!」
「はい!」
正面からぶつかる勢いで突撃する。赤いドラゴンも向かってくる。
衝突する直前、僕は跳び、赤いドラゴンの背中へ、白夜に体重を乗せながら脊髄を狙い突き立てる。
ザクッ!と剣が突き刺さる感覚が手に伝わった瞬間、ドラゴンが消え僕は空中を落下していた。
「?!・・・幻獣?!」
突然の出来事に竜族は驚き、落下する僕にリゲルさんは気付いていない。
このままでは、まずは落下速度を落とす為、風魔法で上昇気流を起こす。強すぎず弱すぎずコントロールする感覚が上手くいかない。
やわらかい牧草が生える地面に強く叩きつけられた。
「すまぬ、大丈夫か」
「な、なんとか」
「回復魔法は上手くないが」
「助かります」
リゲルさんの回復魔法で立ち上がる。
周りを見ると、ほとんどの竜族が倒れている。
「奴は何者だ、突然現われ、突然消えた」
「あれは幻獣と言って、魔石から作られた幽鬼です。ほら、あの石です」
僕は落ちている魔石を拾った。
「5個か、普通は1個です。強力な幻獣を誰かが作った・・・誰かが」
「詳しく聞かせてもらうぞ、その前に仲間の治療だ」
「そうですね、聖術士を呼んできます」
走って来る仲間が見えた、ルキアが先頭を走っている。
変な走り方だが、すごく速い。
「ショウちゃん!大丈夫?」
「あぁ!ルキアのおかげだよ」
「竜ちゃん回復してくるね!」
「よろしく!」
ルキアが竜族の治療に向かう。
遅れて3人が到着する。
「どうなったの?赤いドラゴンは?」
「これ、魔石に変わった、幻獣だったんだよ」
「じゃあ、この近くにダンジョンがあるの?」
「それが、幻獣はダンジョンから出ないはずなんだ」
「じゃあ、どうして・・・」
「わからないよ、セシリアさんに聞いてみないと」
戦いが終わり、治療を受ける者、介抱する者、それぞれが行動をとっている。ルキアの回復魔法は竜族に好評のようで、忙しく走りまわっている。
死者はいない様子で、少し安心した・・・・・。
「ショウ君!どうしたの・・・ショ・・・」
気が付くとベッドの上にいた。
「ショウ君!よかった、急に倒れたから心配したのよ」
「あぁ、マナ、うーん、大丈夫、どこも痛くない」
体を動かし確認する。倦怠感はあるが、それはいつもの事だ。
「魔力を使い過ぎたのかな」
「そうだね、倒れた時、魔力が消えてたから」
他の仲間は酒場にいると聞き外に出ると、すっかり夜になっていた。
酒場に行くとリゲルさん達も一緒だった。大げさなジェスチャーと片言で話す様子が、なぜか微笑ましく思えた。
「お~い、ショウ!通訳してくれ」
既に出来上がってる。
リゲルさん達が席を立ち、こちらへやって来た。
「ショウ、今回は世話になった、感謝する」
「ど、どうも、怪我は大丈夫ですか」
「竜族はあの程度では死なんよ、君の方が心配だ」
「魔力の使い過ぎだと思います。体は何ともないです」
リゲルさんが魔石を取り出した、倒れた時に落としたのだろう。
「この石には魔族の匂いがする。あのドラゴンは魔族が作り出したと考えている」
「そうですか。僕の師匠に聞けば、なにか分るかもしれません」
「是非、お会いしたい。疲れている所で悪いが、準備してくれ」
「え?今からですか?」
「夜の方が目立たないだろ」
ドラゴンの背中に乗って、アルストリアへ向かう事になった。




