ドラゴン襲来(1)
春は花の季節 つぼみの季節
春は恋の季節 つぼみの少女は
花へと変わる
春の雨が、咲き始めの花々を濡らしている。
僕とリコちゃんは船着場で、結婚相手のもとへ嫁ぐナタリーの見送りをしている。
先日、成人式に招待された。式といっても特別な儀式はしない。
ドレスを着たナタリーをみんなでお祝いするホームパーティーだ。同年代の若者達と話しをしたら、かなり変な奴扱いをされた。
錬金術師見習いです。と言ったら、なぜか納得された。
「リコ、手紙書くね」
「私も、元気でね、ナタリー」
言葉少なく船に乗る少女は、花嫁になる為に遠くの町へ旅立っていく。
リコちゃんは船が見えなくなるまで、船着場に立っていた。
「ショウ、今日はありがとう」
「買い物に行こうか」
「雨だから、ショウの部屋に行って、いい?」
「いいよ」
この国では結婚相手を親が決める。
その為、女の子は好きな人との時間を大切にする。しかし、結婚までは貞操を守らなければならない。
と言っても、そこは人間、隙間を見つけて愛し合う。
新年祭の後からリコちゃんは、かなり積極的になった。最初は戸惑った僕だが、今は彼女といる時間が心の癒しになっている。
「ごめんね、私、ヘタなのかな」
「リコちゃんのせいじゃないよ」
「もう少し、がんばってみるね」
「無理しないで、少し横になろう」
「うん」
魔族との戦いに向けて、僕の修行は熾烈を極めている。
弓術、剣術、錬金術はもちろん、精神力を鍛える訓練もしている。特に魔術への耐性を高める訓練がつらい。
耐性とは、魔術の各属性に対する軽減力の事で、耐性が高いと受けるダメージが減る。
訓練方法は実際に魔術でダメージを受けて、その属性に対する軽減魔力を反射的に出せるようにする。つまり、炎で焼かれて火に強くなるのだ。
体に電気を流された時は死ぬかと思った。
こんな危険な力を動力源にしているショウの国がおかしい、と言われたが、そもそも電気は体に流す物ではない。
「よくわからないけど、お料理してると熱い物を持っても平気になる感じかな」
「うーん、大体あってるね」
「ケガしたら私が手当てしてあげるね」
「薬局だから回復薬あるよ」
「そうだね」
クスクスと笑いあう。
リコちゃんの、なんでもない日常の話しが、子守唄のように聞こえてくる。
「お昼過ぎてるね」
「ほんと?雨だからわかんないね」
「お腹が時間を知らせてるよ」
「そうだね、何食べたい?」
服を着て屋台へ出かける。
リコちゃんとは家族公認の仲なので、休日のデートも自由に行ける。しかし、道具屋の跡継ぎにならない僕は、いつか彼女と別れなくてはならない。
魔族との戦いが終わったら、僕は何をするのだろう。
「休んでも体力が回復してないって顔だな」
「疲れてないのに、体がダルイです」
「リコちゃんに体力を使いすぎてはだめよ」
「まったくだ」
「いや、それは」
レベル、体力、魔力、スキル、全てが上昇している。
なのに、この体のダルさはなんだろう。リコちゃんのせいじゃない、あの後の脱力感とは別のダルさだ。
「やっぱり、エミリに行ってもらいましょう」
「やだよ、あんな退屈な所」
「なにかあったんですか?」
「また王都から学術研究会の呼び出しだ」
「今回はエミリ宛なのよ」
セシリアさんは王国軍の不義理は気にしてないが、協力要請は断った。
これからは若い人達の時代だから私は参戦しないわ、と言っていた。
「どんな内容ですか?」
「エストーニャの北、パストーレにドラゴンが現われたのよ」
「ドラゴン!いるんだ」
「懐かしいわ、昔はよく乗せてもらったのよ」
「ママが行ってよ、知り合いに会えるかも」
「それは故郷での話し、こっちに来るはずがないわ」
ドラゴンが知り合い、普通の会話についていけない。
僕はまだまだ修行不足です。
「ドラゴンの研究なら、僕も行きたいです。仲間にも会いたいし」
「そうか、ショウ頼んだぞ」
「え?僕1人で行くんですか」
「気お付けてね、人や家畜が襲われたそうよ」
「・・・・・」
パストーレに現われたドラゴンは家畜を襲い、討伐に向かった冒険者を殺した。
王国軍は魔族の関与を疑い、ドラゴン対策のため学者に緊急招集をかけた。
討伐に向かった冒険者・・・まさか。
「竜族は個人主義者だから、魔族と組むはずがないのに、緊急招集なんて大袈裟すぎるわ」
「エミリさんはドラゴン、見た事ありますか」
「ないよ」
「だったら、一緒に」
「現地に着いた頃には、どこかに行ってるさ」
「食料だと思って家畜を食べたら、人間が襲ってきた。これがドラゴンの言い分よ、きっとね」
「1人が嫌なら、リコと行ってもいいんだぞ」
「いや、それは、ちょっと」
結局、僕1人で行く事になった。
セシリアさんの言う通りなら危険性はない、王都にいる仲間に伝えよう。
『でもな、瞬間移動魔法陣で討伐に行ってそう。無理しないでよ、特にヴァン』
装備を整え、王都へ。2度目の初めての1人旅が始まった。
ショウの装備
鉄の弓
木の矢(10本)
黒い矢(1本)
片手剣(白夜)
短剣(補助装備)
布の服(上下)
皮の上着
鉄の胸当
鉄のこて(弓術士用)
皮のブーツ
布のマント




