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錬金術師見習いです。  作者: ダグラス
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トシノハジメ(4)

「歯食いしばって、息止めて」

「いくぞ!」

 ズボッ!

「イタッ!ぐぅー」

「ショウ君、回復薬」


 刺さった矢を抜いた。

 刺さった時よりも、抜く時の方が何倍も痛かった。

 大事を取って地上へ戻る。

 ハイドという男ともう1人の声、マナはどちらも人間とは違う、不気味な魔力を感じたと言っていた。




 地上に戻った。

 兵士に状況を話したが、責任者でないと分からないと言われ、学会の会場へ向かった。

 学会の会場はコンサートホールの様な作りで、壇上の学者の話しを大勢の人が聞いている。

 会場の前列に座っている、ビクターさんのもとに案内された。


「隊長、冒険者の方がダンジョンで、不審な人物に会ったそうです」

「ダンジョンは何年も封鎖している、人がいるはずがない」

「人間では、ないかもしれません」

「なんだと」


 ビクターさんに詳しく説明する。

 話しを聞き終わると、ビクターさんは壇上へあがった。


「講演の途中すまん、緊急事態だ。

 魔族の動きが活発になっている事は、先ほどの講演にもあった。新しい情報が入ったため報告する。現在まで魔族と・・・・・」


 現在まで魔族と300年間、停戦状態が続いている。原因は魔族側が権力争いをしていたため、戦にならなかった事が大きい。しかし、最近になって魔族が軍を組織し戦争の準備を整えていると情報が入って来た。

 300年前と違い、直接的に侵略をするのではなく、間者を送り王国軍の動きを探っている。また、いくつかの町で、魔族と思われる者達による犯罪が報告されている。

 先ほど王都シルティアの城内に、魔族が侵入したと報告があった、魔族の間者達は周到な準備をしている可能性が高い。

 学者の方々は、研究内容を安易に人に見せず、盗まれないよう十分な注意をすると共に、魔族を発見した場合は速やかに、軍やギルドに報告して欲しい。


「300年間も権力争って、すごくねー」

「それより魔王が復活したんじゃないのか?」

「ショウちゃん、エルフさんから何か聞いてる?」

「権力争いをしてて、魔族の王様が決まってないって聞いてたけど」

「学者の方も新しい情報みたいよ」


 ビクターさんの演説の後、学者の講演が再会された。

 学術研究会が終了したら、報酬や今後の事を話すと言われ、会場で待つ事になった。


「難しい話しは苦手だ、外で待つよ」

「私も、退屈だし、食堂あるかな」

「僕はエミリさんに報告してくるよ、マナも一緒に来て」

「ええ、そうね」

「じゃあ、後でな」


 会場は広くて人も多い、それでもエミリさんは直ぐに見付かった。


『枯れ木の森に一輪の花』

「ショウ君、何か言った?」

「いや、なんでもないよ」


 エミリさんにダンジョンで起こった事を報告した。


極夜(きょくや)を持っていただと!」

「エ、エミリさん、声」

「本当に極夜で間違いないのか」

「相手の男がそう言いました、黒い刀身で両刃の片手剣でした」

「どこを斬られた」

「右脇腹です。ほら、キズがまだ残ってます」

「うーん、ママに見せたら、うーん」

「あの、男の魔力は不気味な魔力でしたが、剣から出ていた魔力は黒く輝いて宝石みたいでした」

「魔力の色が見えるのか?」

「はい、エミリさんの魔力は緑と黄色をしています」


 エミリさんにマナの総合能力値を見せた。

 普通、魔力は空気のように透明で、強い魔力が揺らいで見える事はあるが、魔力を発動させた時以外は、色がついて見えたりしない。


「予知だと!」

「すごいんですか?」

「いや、わからない」

「へ?」

「ショウのも見せてくれ」


 エミリさんに僕の総合能力値を見せた。

 数値が40で統一されているスキルは、潜在的に持っているスキルで、使用条件を満たしていないか、自分の意思で発動できないスキルが測定されている。

 どちらもスキルリストで確認できない為、精密測定でのみ明らかになる。


「でもな、普通は数値が出ないはずなんだ」

「40って数字に意味があるのかな」

『僕達は特殊な人間だから』

「そうかもな」


 僕を襲った男は、魔族で間違いない。

 ポルトトの事件は学会でも報告があり、魔族の関与が疑われていた。


「ショウの力を試したと考えるのが普通だ」

「そうですね、殺す気なら」


 僕は脇腹のキズを触った。


「だが、腕試しはついで(・・・)だろう、本当の目的はダンジョンだ」

「そうか、こっちは終わった、って言ってました」

「今の段階では、わからない事が多い」

「魔導部隊の隊長さんに聞いてみます」

「上手く聞くんだぞ」

「はい」


 学会の会場から出る。

 魔導部隊、隊長のビクターさんは普通の老人に見える。しかし、隊長をする人だから、簡単に誘導尋問にかかるとは思えない。


『直球で聞いてみるか、でもな・・・』

「ショウ君?」

「ん?なんでもないよ、あいつ等どこ行ったんだろう」

「・・・・・」




 学会が終了して、僕達は隊長室に呼ばれた。

 ビクターさんと、もう1人、強面の男性が座っていた。


「こちらの方は王国軍総司令官ドレーゼン閣下だ」

「あ、はい、はじめまして」

「よろしくたのむ」

「総司令官って軍で1番、偉い人?」

「そうだ、各部隊を統制する司令部の長だ」

「失礼のないようにな」

「私が君達を異世界から召喚するよう指示を与えた、今後の計画を話そう」


 僕達を勇者に仕向けたのは、王国軍の総司令官だった。

 金髪オールバック鋭い目をした、いかにも軍人といった感じの人だ。

 上手く質問できるか、心配になってきた。

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