トシノハジメ(5)
「まずは、君達の総合能力値を、もう一度、測らせてくれ」
前回と同じように測定した。
ドレーゼンさんは前回の測定値と新しい測定値を見比べている。
「やはり、君達はレベルの上昇率が高いようだ」
「異世界人だからですか?」
「その通りだ」
「地下にいた魔族は、強すぎてまったく太刀打ちできませんでした」
「奴らは魔族の中でも精鋭だ。おそらく王位継承を争っている者達だ」
「魔王のタマゴさん?」
「やさしく言えば、そうだな」
「どれだけレベル上げすれば、勝てんの?ですか」
「人間が単独で上位魔族に立ち向かうなど到底無理な事だ。しかし、協力して策にはめれば不可能な事ではない」
「相手は軍隊ですよ」
「そこは我々が担当する。君達にして欲しいのは、間者の討伐だ・・・」
魔族にも強い者と弱い者がいる、王国内に侵入してる間者は、尋常でない強さと報告されている。現在は各ギルドに精鋭を送り対応する為に、各地から優秀な冒険者を集めている段階だ。
君達も精鋭チームとして王都に残り、間者の討伐に協力して欲しい。
「王都から遠い地域は?俺達ここへ来るのに、5日ぐらいかかったですよ」
「君達を最初に呼んだのは、その説明が不要と思ったからだ」
「わっかた!魔法のホウキで空を飛ぶ!」
「ハッハッハ。面白い夢物語だ、君達は王都からアルスウエストに、どうやって行ったのかな」
「魔法陣」
「そう、あれは瞬間移動魔法陣といって、軍が緊急事態に使用する移動手段だ。残念ながら一方通行で、帰りはホウキでは無理だ、馬車を用意する」
「戦隊モノのヒーローみたいだな、ちょうど5人だし」
「そこなんだが、ショウ君、君は別行動だ」
「え、僕だけですか?」
「君はセシリア殿の所にいるね」
「はい、錬金術師見習いをしています」
セシリアさんは300年前の戦争で協力した、エルフ軍で学者をしていた。
主に回復薬の量産を担当していたらしい。
戦争の後、多くのエルフが不死の国へ帰える中、ミドルティア王国に残り王国軍で研究をしていた。
しかし、平和な時代が長く続き、軍事予算の削減もあって軍を離れた。
「追い出すような形になってしまい、すまないと思っている」
「そう、だったんですか」
「もっとも、その頃は生まれてなかったがね」
「ハハハ、確かに」
「しかし、不義理をしたのは我々だ、再び協力を要請する為、君に仲立ち人をお願いしたい」
4人への細かい説明が終わり、僕達は城下町にやって来た。
冬の日暮れは早く、夕焼けが町を染めている。
「まずは、メシだな」
「宿が先でしょう」
「僕は宿を決めてあるよ」
「まさか、美少女と同室」
「別々だよ」
先に宿に戻っていたエミリさんを誘い、6人でエミリさんおすすめの店で食事をする。ポルトトでやった、しあわせもの注文に4人は驚いていた。
「結局、4人は王国軍に雇われる形になったのか」
「給料とお手伝いさん付きの家が軍から支給されます」
「ショウだけが今までどおり、美少女と同居か」
「ヴァンちゃん、そろそろ殴っていい」
ルキアは力をためている。
「協力して策にはめて倒せと言われました。でも、相手は魔族だけど見た目は人と同じです。人を殺すなんて・・・」
マナの気持ちは痛いほど分かる。
僕はあの時を思い出して、何も言えなくなった。
「君が言っている事は正しい。だが、戦争とは殺し合いだ、種族を守るため何千年も前から戦ってきた。君達は知らないと思うが・・・」
この土地は元々魔族の土地だった。
そこを多くの戦いを繰り返し、人間の土地にした。300年前の戦争は魔族が自分達の土地を取り返すために、侵略してきた戦だった。千年以上前に決まった国境を守るため人間達は戦った。
我々エルフも侵略に対抗するため、人間と共に戦いに参加した。全ては自分達を守るため、いや、家族を守るため侵略に抵抗した。
「こっちに家族がいない、俺達は戦っちゃダメなの」
「解釈がずれてるな、この町にも多くの人間がいる、大人も子供も」
「この世界を守るために戦えと」
「そこまで大きな事は出来ないが、ショウが私を守って戦った時の様な事だ」
「ショウ君が」
「ショウ、何をしたんだ」
「それは・・・」
「話せ、それも乗り越えるために必要な事だ」
僕は、ポルトトで人さらいと戦った話しをした。
「それは正当防衛だ、気にするな」
「殺した事実は変わらないよ」
「ショウ君は目の前にいる人を守ったのね、私はその時とっさに動けるかな」
「マナも僕を助けてくれたろ」
「あの時は、ショウ君が殺されると思って」
「知らない人だったら、何もしなかったのか」
「そんな、そんなことは・・・」
エミリさんは話しをやめた。後は自分達で考えろと、言ってる気がした。
どんな理由があっても、戦争は悪だ。それでも戦う人達がいる、土地を守る事は家族を守る事、愛する人を守るための戦いだ。
そんな風に割り切って、人が殺せるかな、あの時は体が動いたけど。
「直接、戦ってないからなぁ」
「マナの魔法で平気だったとすれば、人並み外れた力を持っている」
「魔族だから人外だね」
2軒目の店で酒を飲みながら話す。
エミリさんは先に宿に戻ると言ったが、絶対そんなはずない。僕達に話し合いの場をくれた、事にしておこう。
「魔法が効かない訳じゃないっしょ」
「効かない魔族もいるかもな」
「反射されたら怖いね」
冒険者として実力を付けた彼等は、魔族との戦いに対して冷静に対応を協議している。
「策にはめろって、簡単じゃねーよ」
「常に1体に対して複数で戦えば、まぁサッカーのイメージかな」
「俺はバイタルエリアで1対1で守れる選手が日本代表には必要だと思う」
「ズレてきたよ、マナよろしく」
マナは黙っている。
エミリさんに言われた事を考えているのだろう。
朝、だるい体を無理やりベッドから起こす。
昨日は結局、作戦会議は途中で終わり、飲み会になった。
「おはようございます」
「あ、おはよう、直ぐに帰りの馬車を手配するぞ」
「え、もう帰るんですか」
「ああ、極夜の件をママに報告する」
しまった、忘れていた。
今日は仲間と遊ぶ約束をしてしまった。
『まだ、寝てるかな』
仲間が泊まっている宿の主人に伝言を頼み、エミリさんと合流する。
たった1日だけの再会だった。しかし、再び共に戦う日は近い。
魔族との戦いに、備える日々がやってきた。




