トシノハジメ(2)
王都シルティアへはミドラスト河を渡り、ミドラトリアから馬車で東へ移動する。
「なんで、真冬に学会をするんですか?」
「学者は大抵、副業をしている、冬は仕事が少ないから参加しやすい」
「セシリアさんも副業ですか」
「今は本業になってるよ」
王都へ続く道は石畳で整備されていて、馬車も快調に走っている。
馬車で2日の道のりと聞き、近いと思っていたが、馬車の速度を考えると距離は相当ありそうだ。
「すごい!でっかいなぁ」
「あまりキョロキョロするなよ、田舎者と思われるぞ」
城下町に入ると建物と人の数が、アルストリアとは比べ物にならない。
町の奥にひときわ大きく見える建物が王宮だ。僕がイメージしていた、とんがり屋根のお城ではなく、角ばった建物で砦のイメージが強い。
「魔王軍との戦で、シルノール平原が戦場になった、その時の名残で城は砦の様な作りなんだ」
「城壁が無いですけど」
「あるさ、王宮の周りを囲んでいる」
「じゃ、城下町は戦争の後に、作られたんですか」
「そうだ、300年も停戦中だからな」
平和な時代が続き、砦の周りに町が出来ている。
魔王を倒す勇者は必要ない。なぜ、魔王討伐を目的にしたのか、冒険者として戦わせたいなら、もっと上手な嘘をつくべきだ。
城壁の門兵に招待状を見せる。
城内は魔法使いのようなローブを来た、老人が大勢いた。エミリさんも紺色のローブを着ている。冒険者の僕は、場の雰囲気から浮いている。
しかし、同じく浮いている集団が、直ぐに見付かる。
「久しぶり!」
「ショウ!元気だったか」
「ショウちゃんも呼ばれたんだ」
約8ヶ月ぶりの再会だ。
ルキアは伸びた髪を後で束ねている。ヴァンは大きな斧を持っている。新しい装備に変わっているのかな。
「ショウ君、久しぶり」
「ショウ、後の可愛い子はどなただ」
マナも髪が伸びているが、ショートボブくらいの長さだ。テルは変わって無い。
「セシリアさん、アグレイさんの奥さんね、その娘さん」
「エミリだ、よろしく」
「よろしくお願いします」
「エミリさんは学会に出席するから、僕達とは別行動かな」
「学者さんですか」
「母の代理だ、私は学者になる気はない」
積もる話しもあるだろうと、エミリさんは学会の会場へ入って行った。
『くれぐれも話しすぎるな、彼らは知らない方がいい』
『わかってます』
今まであった事を話しあった。
手紙で連絡を取っていたが、細かい状況は知らなかった。
4人はミドラスト河の上流にある、オルアレンを中心に仕事をしている。
「死の山に近い町?」
「魔王の城はもっと上流だ」
「ショウちゃんの修行、楽すぎない」
「そうだよ!美少女と同居って」
「私達は美少女じゃないけど、ショウ君の魔力、星みたいにキラキラして綺麗だね」
「魔力が見えるの?」
「マナだけの能力だよ」
レベルは全員40以上で、今は上位の冒険者として依頼を受けている。なんだか以前より差がひらいた気がする。
僕は修行の成果として、自分で作った上級回復薬を渡した。
「スゲー!こんなの簡単にできるのか!」
「簡単じゃないよ、材料は複雑だし、配合の順番と温度管理が重要だよ」
「失敗しちゃったら、爆発するの?」
「そんなマッドなサイエンスじゃないよ」
「他の薬も作れるの?」
「まだ、見習いだから種類は少ないけど・・・」
修行の話しで盛り上がっていると、王国軍の兵士があらわれた。
「ダンジョンの調査に行く前に、総合能力値を測る。ついて来なさい」
兵士の案内で、建物の中へ入る。
「王宮の中に訓練場があるんですか?」
「ここは王宮ではない、兵隊の詰所だ、王宮は城壁を2つ越えた奥だ」
「3重の城壁ですか」
「かつて魔王軍の攻撃にも耐えた、鉄壁の城だ」
「油断してると、巨人に」
「ルキア!」
応接室に通された。
兵士はさらに奥の扉の前に立った。
「隊長!お連れしました」
「うむ、ご苦労」
奥の扉から老人と2人の男が出てきた。
3人とも外で見た学者と同じくローブを着ている。僕を作った人かな。
「私は王国軍魔導部隊、隊長のビクターだ、今日は学術研究会への出席もあるため、進行を早めたい協力をたのむ」
老人は魔法陣の中に1人づつ入って測定すると説明した。
ヴァンが最初に測定を受ける。老人が数値を読み上げ、他の2人が書き取りをする。
全員の測定が終わり証明書をもらった。みんな通信簿をもらった子供のように、総合能力値を見ている。
僕は2ヶ月前に測っているため、大きな変化はないと思っていた。
登録名 ショウ
年齢 15歳 男性
職業 弓術士
レベル 25
体力 84
魔力 89
武術スキル
弓術 68
魔弓 46
剣術 38
体術 38
魔術スキル
光魔法 65 波動 40 粒子 40
闇魔法 22 無 40
火魔法 31 熱 40
水魔法 28 木 40
風魔法 53 冷 40
土魔法 45 金 40
学術スキル
言語 78
数学 85 幾何学 66 力学 72
化学 89 薬学 36 医学 56
天文学 69
地質学 51
錬金術 54
総合能力値ランクC
複雑な測定結果が出ていた。
質問をしたかったが、老人は測定が終わると部屋を出て行ってしまった。
「調査に行くダンジョンがある、訓練場に案内します」
兵士の案内で部屋を出る。
移動しながら他の4人の能力値を見せてもらったが、僕のように複雑ではなかった。マナの『予知 40』が気になったけど、他に変わったスキルは書いてなかった。
「エルフの影響があった、とか?」
「じゃあ、マナは予知能力があるの?」
特殊な結果を話していると、開けた場所に出た。
号令に会わせて兵士たちが行進の練習をしている。訓練場と言うより運動場に見える。
運動場にある用具倉庫のような建物の前に来た。鉄の門が鎖で施錠されている。
「ここがダンジョンの入り口です」
ダンジョン攻略が始まった。




