アルストリア(4)
「痛ってー、エミリさん大丈夫ですか?」
返事が無い。
暗闇の中、魔法で火をつける。
「エミリさん大丈夫ですか?」
倒れているエミリさんに近づく、気絶しているのか動かない。
光魔導具の明かりが消えていた、魔導具を調べ、持っていた魔石を入れると、明かりがついた。
「ふう、指が焦げるかと思った」
エミリさんの周りの石をどかし、怪我が無いか確認する。すり傷はあるが、出血はほとんど無い。
周囲を照らし、状況の確認をする。
「近くにはいないけど、動いてるな」
弓と矢を確認、近づいてきたら戦う作戦にする。エミリさんが気が付くまで。
矢を使い果たし、短剣で戦う。
「19匹、まだいる」
明かりが足りず、矢が回収できない。視界が悪い、足場も悪い、それ以上に敵が強い。
奥に行くと幻獣が強くなると聞いてたが、強いと言うより硬い。皮膚が硬いのか、蹴りを入れると、こっちがダメージを受ける。
「ショウ、ふせろ」
慌ててしゃがむと、矢が飛んでいき、幻獣が消えていく。
振り返ると、エミリさんが僕の弓を使ったいた。矢は無いはず、なぜ?
「ショウ、この剣を使え」
エミリさんがエルフの長剣を僕に投げた、剣を使い幻獣を斬る。
「すっごい、斬れる!」
「油断するな!あと5匹!」
剣の切れ味のおかげで、残りの幻獣も倒すことができた。
「エミリさん大丈夫ですか?」
「頭を打ったが、大丈夫だ」
魔導具をかかげ、周囲を照す。
「道は3つ、ショウ、どの道が良いと思う?」
「僕、そういう時の運、悪いんですよ」
「私もだ」
洞窟の中に笑い声が響く。
矢を拾う、2本折れていたが、命には代えられない。
「せーの、こっち!」
「じゃ、あっちだな」
お互い勘で行き先を指し、選ばなかった方の道を進む。
「さっき、矢が無いのに、矢がある?なんて言えば・・・」
「あれは魔力を物質化して、弓で飛ばしたんだ」
「物質化?矢を作ったんですか?」
「そうだ、錬金術の応用だ」
「それは、人間にも出来ますか」
「無理だろう、出来る頃には、老人になってる」
「そう、ですか・・・」
錬金術の応用、錬金術がどんな技か分らないが、帰ったら教えてもらおう。
まずは帰らないと、始まらない。
「しかし、なかなかの腕前だな」
「え?何がです?」
「さっき戦っていたのは、コボルト、強かっただろ」
「どうりで、硬くて短剣が効かなくて」
「助かったよ、ありがとう」
少し照れくさくて、黙って歩いた。
道を進むと、そこは行き止まりだった。
「ハズレ、ですね」
「いや、上を見ろ」
「登れそうですね」
「私たちは、落っこちたんだ、登りは当たりだ」
進みながら、出てきた幻獣を倒して行く。
途中、昼食を食べ出口を探す。
「こないだ来た時と、変わっているな」
「こないだ?何年前ですか」
「30年と少しかな」
エミリさんの記憶が、変わっている可能性が高い。
長い間、歩き回り、やっと記憶にある場所へ出た。
「ロック、何でしたっけ」
「ロックビートルだ、最悪の再開だな」
「走ってくぐります?」
「仕方ない、フードを被れ、岩を削る歯だぞ」
「了解です」
合図と共に走り抜ける、マントを脱いで虫を確認する。
残りの道は難しくない、久しぶりに太陽の光を浴びる、雨がやんでいた。
「頭、大丈夫ですか?」
「ああ、血は止まっているし、キズは回復薬で治るよ」
エミリさんは落ちた時、後頭部をぶつけ出血していた。金色の髪に赤黒い乾いた血の色が痛々しい。
アルストリアまでは、歩くとかなり時間が掛かった。家に着いた頃には、日が暮れていた。
「遅かったわね、心配したのよ」
「ごめんママ、怪我して、ショウに助けてもらったの」
「突然、足元が崩れて、でも、エミリさんがいなかったら、僕も危なかったです」
「そうだったの、ショウちゃんありがとう」
僕とエミリさんは、上級回復薬を飲んだ、キズが次第に治っていく、ぶつけて青アザになった場所も、元の肌に戻っていく。スゴイ。
夕食を食べ、エミリさんと2人でサウナに行った。
「痛くないですか?」
「キズは治っているから、遠慮は要らないよ」
「髪の毛が抜けそうで」
「ん、まぁ、そこは慎重に頼む」
乾いた血は洗い流すのが難しく、乱暴にすると綺麗な髪が抜けてしまう。
サウナの後、酒場でエールを飲んで帰宅、今日のお礼だろう。
「ショウちゃん、あなたの事を調べて、分った事があるの」
「何か変わった事があったんですか?」
「若返った秘密、体の秘密と言った方が良いかしら」
「秘密?」
実験室の中、セシリアさんが硬い表情をしている。
「ママ、結論を出すのは、まだ早いよ」
「昨日、あなたがこっそり調べた事で確信を得たのよ」
「・・・・・」
「ショウちゃん、ゆっくり説明するから、落ち着いて聞いてね」
そういって、セシリアさんは1冊の本を開いて見せた。
「?、読めない字ですけど?」
「エルフ文字よ、挿絵を見て」
挿絵は2つ、ビンに入った小人の絵と、2人の小人が電気コードの様な物でつながれている絵が描いてある。
「?、これって?」
「ビンに入った小人はホムンクルス、2人の小人はホムンクルスに記憶を移している実験の絵なの」
「ホムン?」
「ホムンクルス、錬金術師が作り出した人間、人造人間の事よ」
「人造人間」




