断ち切るもの、繋げるもの
「あーあ、まぁことは丸く納まったのかなぁ」
「セリオス!?」
やぁ、とセリオスは軽く手を上げてそこにいた。
胡座をかき相変わらず宙に浮いている。
「…………へぇ、なんか面白いことになったね?」
ずずず、と宙を移動しセリオスは抱き合う伊澄たちの周りを飛ぶ。
まじまじと観察されている気分だ。少し不愉快になりながら、伊澄はセリオスに噛み付こうと体をよじる。
「あのねぇ、人のこと面白いって……!!」
「面白いよ。人が未練を断ち切って、また世界に戻っていくのを見るのは」
「は……?」
飄々として人をおちょくるのが好きそうなセリオスの表情は、いつもと違った。
どこか遠くを見つめるような、遠い昔を慈しむようなそんな目だ。
もう戻らない過去を見続けている、伊澄にはそんな気がした。
「僕はさ、この役目を負って色んな人を見送ってるんだよ。どの人も平等に、好きなんだよね」
だからさ、とセリオスは人懐っこそうな心底嬉しいと言った表情を浮かべた。
「君にも、未練を断ち切ってもらいたかったんだ。だけどねぇ……問題があるんだよね……」
うーん、とわざとらしく腕組をし首を傾げるセリオスはちらちらと伊澄とアルスを見る。
なにか言いたげなその様子に、伊澄は痺れを切らして目をつぶる。
「…………私たち、離れるつもりは無いよ」
今なら伊澄にも分かる。セリオスがアルスに元の世界へ戻れる、と言った意味が。
きっと、アルスはいつの間にか前の生から引きづっていた人間へのしがらみを捨てられていた。
だから、セリオスはアルスに新たな生を始めるか? と問いかけたのだ。彼は、どこへでも行けた。
でもそれをしなかった。
きっと、今の伊澄と同じ思いだったから。
伊澄も、両親への未練を断ち切った。
今は、アルスがいるから。
けれど、それはセリオスにとって不本意かもしれない。
セリオスはまっさらになった人たちを、また世界へ循環させる役目を持っているから。
それは神様の意志に背くということに他ならない。
どうするつもりだろう、と伊澄はセリオスの次の行動を待った。
「うーん、想定外だったんだよね。今の君たち、未練を断ち切ったのに、また未練になりそうなもの抱えてるからさぁ」
「ぁぁ……」
きっと、それはアルスと伊澄にとって鎖のような絆だろう。
切りたくない、やっと繋がったもの。
それを断ち切るなんて出来ない、とセリオスも分かっているに違いなかった。




