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未知なるおじさんと乱世の予感

もう誰も私を止められない。

地方テレビ番組イブニングアルファの名物コーナー「街角!教えてイブニング」の現場リポーター 町場 千紗子はある広大な公園に訪れていた。そこは地元で"無駄に大きな公園"と呼ばれている場所だ。


カメラの前に立ち、中継開始の合図待つ中、誰に話しかけようかと当たりを見ながら思案していた。このコーナーは仕込み無しの完全にアドリブ対応で、時には千紗子が誰にも会話出来ずに終わることもある。しかし、そんなドタバタ感が視聴者には受けていた。


「中継入ります!5秒前…4…3………」


「こんばんは!街角!教えてイブニングの町場 千紗子でーす!今日は地元で知らない人はいないここ!"無駄に大きな公園"に来てまーす!!それでは早速……そこのおじさんに何をしてるか聞いてみましょう!!あのちょっといいですか??」

「はい?なんですか?」


公園をジョギングしていた男性が汗を拭いながら返す。


「いつもここでジョギングされているんですか?」

「はい、これでも元ジョギ二ストですからね。」

「ジョギ二スト?」

「おやジョギ二ストに興味がおありですか?では、教えてあげましょう!まずジョギングによっ――」

「うわー!!あっちに噴水がありますよ!あっごめんなさーい。お話ありがとうございましたー!」

「いえ、構いませんよ。」


千紗子の咄嗟の判断でジョギングおじさんを躱すと、噴水前で体操をしているおじさんに話しかけた。


「すみませーん、今何をなさってるんですか??」

「…心眼に辿り着かぬ弱卒には分かりはしまい、これは神聖なる心身の浄化の構えである。それは――」

「あっはーい、ありがとうございます!ではあちらの広場に行きましょう!!」


千紗子はこの時点で気がついた。この公園は既に魔界と化している事に。ここは現実逃避をしたおじさんの溜まり場。濁り濁った文字通り自然のサナトリウムであると。しかしその時、視聴率の不安で慌てていた千紗子に天使が舞い降りた。


「何してるんだ??」


突然後ろから可愛らしい幼女話しかけてきたのだ。このチャンスを逃してはいけない。カメラマンもそう思ったのだろう。息のあった動きで幼女をフォーカスする。


「いま、テレビの中継で公園にいる人に質問してるんだよ!」

「そうなのか!!これ写ってるのか?おーい!!」

「うふふ、そうだよ!」


可愛い幼女がカメラに向かって手を振る映像はこの日の瞬間最高視聴率を叩き出した。


「お名前、教えてくれる?」

「凛だぞ!!」

「凛ちゃんか!今日は遊びに来たの?」

「友達と一緒に来たぞ!おーいみんなー!!」


するとゾロゾロと周りのおじさん達が集まってくる。そこにはさっき千紗子が避けたおじさんもいた。迫り来るおじさんの圧倒的絶望感を抱かせる衝撃的なその光景にカメラマンは慌ててカメラを空に向け、音声だけがテレビに流れる。


「凛さん、ここでしたか。探しましたよ」

「……探したよ。」

「まったく凛氏には困ったものであります。」

「うぬには今暫くの心身の鍛錬が必要とみえる。」

「あはは、ごめんごめん!!じゃあお姉さんうち行くからばいばーい!!」

「えっなに??どういう事??あっ……すスタジオにお返ししまーす!!ではまた来週!!」


この日、イブニングアルファのワンコーナーの切り抜き動画がアップされるとネット上で大きな波紋を呼んだ。ネット上では誰かがこの公園を「天使と悪魔が住む魔界」そう呼称した。

よろしければブックマーク、評価よろしくお願いします!


明日から乱世が始まります!

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