敬語おじさんと自由研究
――それは先生がお昼会に来るようになって少し経った夏休み前の出来事。
「おっちゃん!自由研究手伝ってくれよ」
「凛ちゃんおじさんは仕事してるから無理だって!」
「大丈夫!おじさんは研究対象だから何もしなくていいぞ!」
「全然大丈夫じゃないよ!! 爆弾提出するのと同じだよそれ!!」
自由研究ですか、懐かしいですね。生き物の観察は定番ではありますが凛ちゃんの感性はずば抜けていますからね。是非協力しましょう。
――そして時は流れ夏休み明け、生徒の提出課題を整理していた花島は1人机で戦慄していた。
「おじさんの研究レポート 夏編」
常軌を逸したタイトルに別冊の図解まで付いている特大の爆弾が彼女の思考を完全にとめていた。
(凛ちゃん、何かおじさんとやっているとは思っていたけどあなたはいつも先生の想像超えてくるわ。いい意味でも悪い意味でも。そしてもう駄目!!見たくて堪らないわ!!なんて重厚なレポートと別冊図解!!そして夏編って続ける気なのこれ?? これはきっと小学生の自由研究の確認なんてと馬鹿にしていた私に対する無言のアンチテーゼなのね!! 拝見させてもらうわ!!)
おじさん研究レポート 夏編
まえがき
まず初めにこのレポート作成しようと思ったきっかけは「おじさんとは何だろう」という1つのぎ問でした。おじさんと聞くと私の周りの人はいやな顔をします。おじさんは誰か一人をあらわした言葉では無いのに皆が同じ反応をするのはとても不思ぎでした。
私は1人のおじさんと出会いました。友達の友達にしようと声をかけたその人は誰に対してもやさしく面白くてとてもいい人です。ですが誰もそれを知ろうとはしません。おじさんというだけで学校でも外でも悪く言われてしまいます。だからこのレポートはおじさんの良いところを皆に知って欲しくて書きました。
これを読めばきっとおじさんと聞いても受け入れてくれると思います。仲良くできると思います。
――そうだった。凛ちゃんこういう子だった。凛ちゃんはふざけてこの自由研究を書いていない。おじさんへの偏見を変えようと真っ直ぐな気持ちで研究に取り組んでいる。自分の心が如何に汚れているかを諭された様な気分だった。私はページを捲る。
8月某日 晴れ
おじさんに夏休みはありません。仕事をしていて昼ご飯を食べに公園にやってきました。お昼はおにぎり(あぶりサーモンマヨ)とお茶だけです。仕事がん張れというとうれしそうに笑っていました。
8月某日 晴れ
おじさんに夏休みはありません。仕事をしていて昼ご飯を食べに公園にやってきました。お昼はおにぎり(あぶりサーモンマヨ)とお茶とアイスでした。アイスは私と友達の分で受け取ると熱中しょうに気をつけるように言われました。
何故か食べた物の写真やレシートが付いていて、レポートというより家計簿みたいだったが、おじさんが毎日働きながら頑張っている様子がなんとなくわかった。レポートはその後もおじさんが遊んでくれたことや言った面白かった事など端的ではあるが読みやすく纏まっている。
8月某日 晴れ
おじさんに会いに行く途中でお母さんにおじさんと会うのはやめるように言われました。とても不安そうなので困りました。友達は親に言ってなかったみたいです。おじさんと会えばわかるといって母を連れて行きました。とても仲良くなって安心しました。
8月某日 晴れ
友達がカゼを引いてしまいました。おじさんとお見まいに行きました。前に友達のお母さんに怒られたので私がきらいだと思っていたけど、おじさんが怒ることは期待してるからと教えてくれました。皆おじさんを認めてくれて、友達も元気そうで安心しました。また頭をなでてもらいたいと思いました。
―――
あとがき
皆が言うようなおじさんも中にはいます。私もそれはわかります。だけど全員を同じに見るのは間違っていると思います。
花島先生はおじさんをいい人といいます。友達はいつも悪口を言ってますがお見まいに行った時うれしそうだった事を私は知っています。お母さんは最初は不安そうでしたけど、今ではおじさんにたまにお菓子を作って持たせてくれます。友達の家族もおじさんを最後は認めてくれました。
私は皆が大好きです。だから皆が仲良くなってくれたら嬉しいです。これを見て少しでもおじさんと友達になりたいと思ってくれたら書いてよかったです。 おわり
3年1組 芦屋 凛
優しくて暖かい凛ちゃんらしいとてもいい自由研究だった。結局最後までこの分厚い別冊図解は使わなかったけど、そんなことはどうでもいいくらい素晴らしかった。私は花丸評価をつけて清々しい気持ちで残りの自由研究を見ていった。
―――
「おじさん!見てくれ花丸だぞ!」
「おお、すごいですね。拝見してもよろしいですか?」
「いいぞ!!」
「…………。」
「あはは!!おっちゃん変な顔になってるぞ!!」
そんな凛ちゃんの笑い声が青く澄んだ秋空に溶けていく。
鈴木は空を見上げ1度大きく息を吸い込むといつもの優しい顔で凛ちゃんの頭を小さく撫でた。一言二言話すといつもの様にお昼を食べ始める。凛は少し離れて横に座り足をブラつかせていた。
そんな2人の影がベンチの背もたれに薄く写っている。その淡く膨らんだ影は少し離れて座っているはずの彼らをひっそりと寄り添う様に写し出していた。
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まあ色々言いましたが何より続きを見てくれれば嬉しいです!次回もお楽しみに!!




