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第6章 7

7.


『長くなったけど質問には答えたよ。これでいいかな?恭香、遠夜』

恭香と遠夜は頷いた。


遠夜は隆一の言い方に引っかかる部分はあったが、恭香と悠美の前なので黙っていた。

後でまた聞いてみよう。


『さて、そろそろ地上都市 X(エックス)のある大陸に近づいて来た。

皆、昼食を摂って来い。

新たな搭乗員がたくさん乗り込んで来るんだろう。

組織作りからルール作りから、忙しいぞ』


「あ、そうか…組織、ルール…

げえーっ そういうのが嫌で逃げ出してきたのに!」

遠夜は頭をかきむしって嘆き、 皆はそんな遠夜を見て笑い出した。


啓司がコクピットに入ってくる。

「やっと終わった〜…疲れた」コクピットの椅子に座り込む。

「お疲れさん」皆は少し後ろめたい気持ちで労った。

ごめん、啓司一人働かせて…


「地上都市の方はどうだ?」遠夜が訊く。

「うん、ちゃんと集まったみたいだ。凄いよな、みんな。

せっかくだから、地上都市 X(エックス)にも映像配信して、テレ・ビジョン会議にした。

なんだか大盛況だったよ。皆、高揚してるんだな、無理もないけど。

これからこの宇宙船と地上都市で、搭乗する人と残る人をリストアップし直す」


凄いのは啓司だよ。

皆、心の中で思った。

遠夜とは違う意味で、リーダーの素質あるよ。


『これからこの宇宙船運営に関して、遠夜は啓司のやり方を見習った方がいいな。

啓司や皆に何でも相談しろ。俺も協力は惜しまない』

隆一が言い、遠夜は頷いた。


啓司は驚き、顔を赤くする。

「えっ…俺?いやでも、俺なんか皆みたいにものすごい能力無いし、βクラスだし」


「もうαだとかβとか関係ないよ。啓司の能力は皆認めてるし、尊敬してる 。自信を持って!」

貴彦が笑いながら言った。

そうそう、と皆も頷く。啓司は凄い。


恭香が船内アナウンスする。

『搭乗の皆さん、昼食の時間です。食堂に集まってください。

船長(キャプテン)からの挨拶もありますので、必ず来てくださいねっ』


「えっ何だよ、挨拶って…」遠夜がビックリして恭香を問い詰める。

「キャプテンじゃなくて主謀者って言ってもいいんだぞ。

皆、遠夜を信じてこの無謀な計画にのってくれた人たちだ。

この昼食後に船を降りて一生会わない人だってたくさんいるんだ。

一言挨拶くらいしろ」啓司がガミガミ言う。


遠夜は「…判ったよ」としぶしぶ承諾した。

「さて、俺たちも行くか。食堂ってどこ?」真人が立ち上がって伸びをしながら言った。

「中央の方だ。大広間の隣」と啓司が言って先導してコクピットを出る。

マメな奴…皆苦笑して後に続いた。


宇航の部屋に寄って起こし、食堂に行った。

続々と人が食堂に集まって来て、遠夜に握手を求める。

見知った顔が多い。そりゃそうか。

問題児遠夜はいろんな人に迷惑かけてるから、やたら顔が広い。

それでも俺を信じてついて来てくれたんだ。


大騒ぎの中、皆が着席して料理がロボットによって配られると、遠夜は立ち上がりマイクをonにして話し始めた。

『えー、っと。この船の船長(キャプテン)ってことになってる、遠夜です。

啓司には主謀者って言われたけど。

今朝は早くからご苦労様でした。

俺たちも何とか計画をすべて実行し、ここまで来ました。

みんな協力してくれてありがとう』


『地上都市で降りる人もいるし、また乗ってくる人もいてしばらくはゴタゴタすると思うけど、皆で力を合わせてやっていこう。

まだ、どこに行くかはっきりとは決めてないんだけど…皆が安らかに最期を迎えられるような星を見つけるから』


『地上都市 X(エックス)と言うのは仮の名称なんで、これから地上都市で暮らす人達で正式名称を決めてほしい。

とりあえずのリーダーには、真琴さんと地下大都市ブラジリアのアルトゥールさんに頼んである。

暫間的になるかそうでないかは判らないけど、仲良くやってってください。

周辺の地上都市とは平和条約を結ぶように手筈は整ってるから安心して』


『じゃあ、皆グラスを持って。

この宇宙船の出航と計画の成功、そして出逢いと別れに』

グラスを掲げる。

『かんぱい!』


「乾杯!」皆で唱和する。

遠夜がマイクをoffにしてふうーっと大きく息をつくと、恭香が「お疲れ様。カッコ良かった」と言ってグラスを合わせてきた。


「まだ、宇宙空間に無事に出られるか、ワープがうまくいくか解らないから成功とは言い切れないんだけど…」遠夜は苦笑いする。

まあいいじゃん、それはそれ。とりあえずここまでは来たんだからさ。真人が軽く言って乾杯してくる。


真人の明るさには本当に救われるな。

遠夜が感心してグラスを口に運んでいると、啓司が宇航に「そういえば、地下大都市コウシュウから参加の芽衣(ヤーイー)さんって、宇航の彼女だろ?」と訊いた。


えっ!

皆驚いて宇航を見つめる。彼女いたんだ…


宇航は照れたように頭をかいて言った。「そう。なぜ判った?」

「芽衣さんが自分でメールに書いてきた。

それはまあ良いんだけど、地上都市に残る方を希望してるんだ。

この船には乗らないって…良いのか?」


「えっそうなの?何でだよ」

遠夜が訊く。地上都市にまで来て…


宇航は困ったように俯く。

「…いや、私が悪いんだ。私は最初、この宇宙船には乗らないつもりだった。

芽衣と一緒に地上都市 X(エックス)で最期を迎えたいと思ってたんだ。

でも遠夜や皆を焚き付けてこんな計画を持ち上げてしまったのは私だ。

宇宙船は何としても成功させなきゃと思った」


そうだったんだ…皆は言葉を失くす。

あんなにこの宇宙船を必死に改造して動かせるようにしてくれてたから、てっきり宇宙に行きたいと思っているものとばかり考えていた。

遠夜の情熱に意気を感じてくれてここまでやってくれたのか…大した人だな。


「だけどやってるうちに、君達と離れ難くなった。

毎日本当に楽しかったんだ。この宇宙船にも愛着が湧いて来たし、隆一さんとももっと話したい。

だから、芽衣には、私はこの船に乗って宇宙で果てたいと言ったんだ。

私のワガママだから、芽衣は好きにして良いと」


「それで芽衣さんは地上都市に残ると…」啓司は苦く呟いた。

仕方ないのかな。宇航を無理に降ろすことも芽衣さんを無理に乗せることもできないし。


「それって、私と遠夜の時と一緒!」恭香は大きな声で言った。

皆が見つめる中、恭香は大きな瞳を見開いて宇航に言う。

「遠夜がサイボーグになるって言って、私が反対したけど頑として聴いてくれなくて。

私、あまりに辛くて、遠夜が宇宙船になるならこの船には乗らないって言ったの。

そしたら遠夜はそれも良いんじゃない、地上都市で暮らせばって。

自分のワガママにつき合うこと無いって」


「そんなこと言ったのか。酷いな」と貴彦が言う。

もうちょっと言い方があるだろう。


「でしょ?

私はまあ、本気じゃなかったって言ったら語弊があるけど、遠夜に引き止めて欲しかったのよ。

遠夜にとって、私が一番だって言って欲しかったの。

サイボーグになることを 翻意するかどうかは別にして、とにかく私と離れたくないって…言って欲しかった」


遠夜と宇航が何か言いかけるのを制して

「女の子ってそうなの!一生そう考えるものなの!

芽衣さんだって絶対そうよ!宇航に一緒に来いって言って欲しいのよ!一番大切だって。

男が言う、比較対象にならないとかいうのは、女の子にとってはへ理屈だからっ」

ドンとテーブルを叩いて言い張る。


「そうね。きっと芽衣さんは宇航がいくところならどこにでも一緒に行きたいと思ってると思うよ。

恭香の言う通り、女の子はみんなそうよ」悠美も微笑んで言いそえる。


女の子ってめんどくせぇ〜…

口には出さず、男どもは思った。


気を取り直して宇航は言った。

「判った。地上都市に着いたら、芽衣を説得してみる」


食事が終わると、地上都市で降りる人達は準備を始めた。

遠夜達がコクピットに行くと、地上都市 X(エックス)が遠くの方に見え始めていた。

いよいよ、着陸態勢に入る。







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