第36話:その魔導兵器、私の『ボツ作』のパクリですよね? 〜魔力ゼロの少女、劣化版ランチャーを猫型ロボで完封する〜
「おいヨセフ、分かってるな。
『あの御方』が帰って来る前にケリをつけるぞ」
後ろにいた老人が大剣の男・ヨセフに声をかける。
老人の名は白夜という。
一見すれば枯れ木のような老人だが、
その手には禍々しい紫の炎を纏った日本刀が握られていた。
「白夜さん、このままではダメだ。
まずはこの幼女から二人で片付けよう。その後に……」
「だめだ、間に合わん。その隙にあの黒髪の娘が剣を振り下ろしてくる。
あの娘の剣は、ワシでも五分五分に持ち込むことで精一杯じゃ」
白夜はキキョウから目を離さず、刀を構えている。
「……妖刀か。東の島国の伝承にある、持ち主の寿命(若さ)を吸う呪物ね」
キキョウが冷たく言い放つ。
「知っているのか、いかにも妖刀じゃ」
実はこの白夜の正体は、まだ18歳の少年だ。
刀を振るうたびに、若さが妖刀に吸い取られ、今や老人の容姿になってしまった。
「ワシの命を削った剣、受けてみるがいい!」
白夜が渾身の魔力を込めて抜刀術を振るった。
<< シャキーーン! >>
キキョウの剣が、妖刀を受け流す。
しかし、突然、キキョウの剣が震えだした。
みるみるうちに、刀身がドクドクしい紫色に変わっていく。
彼の妖刀は、刀の主人だけでなく、
敵の刀と触れ合うごとにに相手の刀からも精気を奪うのである。
「……これは、ダメなようね。剣で遊ぶのは終わりよ」
キキョウが剣を鞘に納める。
勝利を確信した白夜が、勝ち誇ったように笑った。
「ははは。諦めたか! 終わりだな!」
「いいえ、これからよ。――並列起動。」
キキョウが懐から一本の杖を取り出した。
「なっ……バカな! 剣術と魔法の二刀流だと?」
この世界の剣術と魔法は、陰と陽、プラスとマイナスの相反する力を持つ。
戦いの中で同時に使用すると、術者の精神を崩壊し、悪ければ命を奪ってしまう。
だが、目の前の少女は平然と二刀流を使いこなしている。
「お、お前、本当に人間なのか?」
白夜が構える前に、キキョウの杖が一閃した。
瞬間、絶対零度の冷気が妖刀を包み込み、紫の炎ごと
白夜を氷像へと変えていく。
◇◆◇◆◇
幹部最強の白夜が完敗した。
その光景にヨセフがひるんだ瞬間、内海の向こうから
一隻の小舟が近づくのが見えた。
「お、親方が帰ってきた……!」
海賊たちが一斉にざわめき出す。動揺するヨセフ。
ミアは一瞬を見逃さず、ヨセフが展開した結界ごと殴り飛ばした。
他の海賊と同じように、ヨセフも中海に飛ばされたのだが、
殴り飛ばしたはずの巨体が、ミアの方へとはじき飛んできた。
まるで、ヨセフの巨体を使ったキャッチボールだ。
「お嬢ちゃん、面白いゲームをやってるね」
小舟から降り立ったのは、長いレイピアを持つ男。
「……凄まじい魔力。こいつ他の海賊とは、全然違う」
キキョウが瞬歩でミアの前に立ち、防御の構えをとった。
「キキョウさん、気を付んとあかんで。こいつ『竜族』や」
ミアも顔つきが変わり、魔力を拳に集める。
「へー、よく見ればお前、同族じゃん。
なんで人間なんかと一緒につるんでるの?」
男が嘲笑う。キキョウのことは既に眼中にないようだ。
「そっちこそ、竜族が海賊やってて恥ずかしくないんかい。
親が見たら泣くで!」
「面白いんだからいいじゃん。
人間に人間を襲わせて、無様な姿を見るのが最高の娯楽なんだ。
……な、こいつら間抜けでサイコーだろ?」
男の言葉には、種族としての矜持など微塵もなかった。
ただ、純粋な悪意と狂気だけが渦巻いている。
◇◆◇◆◇
「……狂人とは話す言葉を持っていない。さっさと始めましょう」
キキョウが踏み込み、ミアが横から蹴りを合わせる。
だが、男は余裕の笑みを浮かべてレイピアを空中に放り投げた。
<< ――ガシャンッ >>
空中でレイピアが形状を変えていく。
それは、かつてオトハが自衛のために作り上げた
「魔導ロケットランチャー」そのものだった。
「え……? それ、オトハの……!」
キキョウの呟きも虚しく、至近距離でランチャーが火を吹いた。
防御の暇もなく着弾の衝撃に吹き飛ばされる二人。
「ははは! この武器はいい、効率的に虫ケラを掃除できる!」
男が乗ってきた船の底から、さらに三門のランチャーがせり上がる。
逃げ場のない内海に、連続的な爆発が吹き荒れた。
ミアが直撃を受け、キキョウも膝をつく。
◇◆◇◆◇
「物理魔法の攻撃か……。アタシじゃ相性が悪いわね。
ミアならいい勝負でしょうけど、あの子に任せましょう。
ほら、オトハ!あとはアンタに任せるわよ」
「まってましたーーーー!
もう、呼ぶのが遅いですよ、キキョウさん!」
爆煙の中から、一人の少女がひょっこりと現れた。
オトハ・ブルーノ。
主人公のオトハが、これまでどこにいたのか?
実は…、彼女は島に着くなりマリーナ号に入り込み、
ポンプジェットをなで続けていた。
気が付くと、強大な爆発音がしたので、ワクワクして外に出てきたのだ。
「あれ?きみーー、いいですねぇ! その船の魔道具、最高ですよ!
ちょっと人を殺しすぎですけど、魔道具自体は悪くないです」
「……何だと?お前、魔力ゼロじゃないか?
最弱の人間が俺様の相手だと?何を寝ぼけたことを」
男が苛立ち、オトハに向けてランチャーを一斉射撃した。
……だが。
<< ――バシィィィィン!! >>
「にゃーにゃーにゃー」
オトハの前に十匹の「にゃーちゃん」が並び立ち、
音速で迫る弾丸を肉球(高周波パッド)で次々とはじき落としていく。
その光景は、あまりにもシュールで、圧倒的だった。
「……そのランチャー、私の初期プロトタイプの劣化コピーですね?
弾道の安定性が甘いし、トリガーのレスポンスが0.2秒遅いです。ニチャァ」
オトハが巨大なスパナを肩に担ぎ、満面の笑みで宣言する。
「もう終わりですか?
ちょっとだけ待ってあげるから、もっと攻めてきていいですよ」
最後まで読んでいただき、ありがとうございます。
本作も終盤に差し掛かろうとしています。
さぁ、ラストに向けてまだまだ、物語は盛り上がっていきます。
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