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第15話:聖女か悪魔かゾンビか。〜法王様、敵軍の襲来に「神の救い」を見る〜

【 1. 聖都のアイドル、あるいは修理の怪物 】


「オトハさま!」

「オトハちゃん、この魔道具も見てくれる?」


 大聖堂の時計塔は、いつの間にかパロマ市民の巡礼地と化していた。

当の本人は、アイドル扱いされている自覚など微塵もない。


「はいはい、次は炊飯器……じゃなくて、聖なる自動パン焼き機ですね! お安い御用です!」


 溢れんばかりのジャンク品に囲まれ、彼女はいつもの通り、

恍惚とした表情で魔道具をバラし続けていた。



【 2. 奇跡の鐘の種明かし 】


 一方、法王の私室には、聖魔法医師長が血相を変えて飛び込んできた。


「法王閣下! この三日間、都中の病院で奇跡が相次いでおります!」


 寝たきりの老人が突然走り出し、魔力欠乏症で立てなかった子供が立ち上がったという。


「何が起きているのだ……」


「おそらく、きっかけはあの鐘です。オトハ殿が調整して以来、

鐘の音色に含まれる魔力波形が『強制的な魔力循環』を促しているのです」


「また、あの娘か……」


 法王はこめかみを押さえた。

預言書にある『世をかき回す悪魔の使い魔』。


 確かに世の中はかき回されているが、やっていることは『法典の聖女』そのものなのだ。


「閣下、このまま彼女を監禁し続ければ、我々こそが『聖女を虐げる異端者』

として民衆に吊るし上げられかねませんぞ」


「わ、わかった……。彼女を貴賓室へ移せ。丁重にな!」



【 3. 聖女ゾンビ、オルガンを欲す 】


 貴賓室へ移されたオトハが次に目を付けたのは、大聖堂の心臓部、

巨大なパイプオルガンだった。


 教団の威信をかけた聖なる楽器。

これを壊されるわけにはいかない法王は必死に拒絶するが、迎えた日曜日。


 ミサの最中に事件は起きた。

その日、パロマ市民が集う大聖堂の片隅で、オトハもミサに参加していた。

 

 最初オトハは、おとなしく法王の言葉を聞いていたが、

オルガン演奏が始まると突然立ち上がる。


「オルガンちゃん、もっと上手に歌えるのに、かわいそう……!」


 技術的不備を見過ごせないオトハの「欲望」が限界突破したのだ。

彼女はミサの列を飛び出し、法王の法衣に縋り付いた。


「おねがいします……! 直させて……一箇所だけでいいから、分解させてぇぇ……!」


 欲望が高まりすぎて、顔はゾンビのように青白く、目は血走っている。


「おぉ、聖女様が何かの儀式をされているぞ!」


「新しい形の礼拝だわ!」


 歓喜する信徒たちをよそに、法王は目の前の「魔道具ゾンビ」に恐怖した。


「ひ、ひぃ! わかった、許す! 好きにするがよい!」



【 4. 救世主は戦車に乗って 】


 数日後。法王はやつれ果てていた。


「誰か……誰かあの娘を連れ去ってくれ……。ワシの精神が持たん……」


 民衆の支持がある以上、自分からは追い出せない。

かといって、このままでは大聖堂が全て「オトハ仕様」に改造されてしまう。


 そこへ、近衛騎士が血相を変えて飛び込んできた。


「一大事です、法王閣下! シルバーランド軍、

およびロンドラ連合王国の連合艦隊が国境を突破!

『我が国の至宝、オトハを返せ!』と、戦車を先頭にこちらへ向かっております!」


 本来なら国家存亡の危機。

だが、法王の顔には、この三日間で初めての、太陽のような満面の笑みが戻った。


「おお……神よ! 助かった。ついに、ついに救いをお送りくださったか!!」


 法王は両手を天に掲げた。


「全軍に通達! 抵抗は一切禁ずる!

丁重に、速やかに、あの娘を彼らに引き渡すのだ!!」

ご一読ありがとうございます。


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