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第110話:反乱の決意と、終わらない魔道具自慢

「ふふふ。キルアの奴め、

 小癪な真似をするからこうなるのだ」


 ここは、第48太陽系の指令本部。


 方面司令官シリアが、

1通の通達を眺めて嬉しそうに頷いていた。


『第89軍の担当替えおよび、第3太陽系への即時赴任』


 そこにはキルアの89軍の辞令が書かれてある。



 第3太陽系。


 それは、最も長い戦争が続いており、

敵は黒神の天敵である、戦闘神・狼神の世界。


 すべての民が天使級の強さを持ち、

すでに5つの方面軍が敗退、多大な犠牲を出している

超激戦区であった。 



「やはり持つべきものは、権力を持つ兄弟だな」


 シリアの家系は代々エリート貴族だ。


 長兄は総司令部の部長補佐を務めている。


 その兄が、シリアの話を聞き入れ、

総司令部へ働きかけ、第89軍を最前線へ送り込ませたのだ。



 だが――

総司令部には、キルアの士官学校時代の同期もいる。


 カリスマだったキルアの人気は士官学校卒業後も衰えず、

彼の元には同期たちから次々と極秘情報が届いていた。


 辞令の情報は、発表の3日前、キルアにもたらされた。



『キルア、やばいことになった。

 お前の軍が第3太陽系へ配置換えになる。

 決行は早めに行うことだ!

 同期生はみな、お前を支持している』


「……うむ。思ったよりも本国の動きが早いな」


 軍部への反乱……。


 しくじれば己の命を失う。


 だが、永遠に続く戦争を止めるには、

これしか方法がない。

 

 自分と共に、主人・黒神の意思に逆らう覚悟を決めた

同期たちを思うと、キルアは目頭を熱くした。



<コンコンッ!>



「キルア様! オトハ様がいらっしゃいました!」


「おぉ、待ちかねましたぞ!

 シバさんもご足労をおかけします」


「いえいえ、キルア様。

 それより司令部が何やら騒がしいようですが?」


「実は……

 我が軍が他の太陽系戦線へ移動となったのです」


「えぇ!? たいちょーさん、それじゃ……」


「大丈夫です、我々はここから動きません」


「そんなことをしたら怒られるんじゃないですか?」


「はい。しかし、兵士を無駄死にさせたくないのです。

 他世界には、罪のない子供たちもたくさんいます。

 とても、これ以上は侵略などできません」


「……反乱でっか?」


「そういうことです。

 すでに軍の3分の1は私の意見に賛同しています。

 無駄な侵略をやめるよう、黒神様に直訴する所存です」


「命を捨てるご覚悟なんですね」


「はい。ですが……最後に妹に会うことができたら、

 もう何も思い残すことがありません」


 キルアがふとデスクの絵画へ視線を落とした。



「あれーーー!?

 それ、キキョウちゃんやないでっか!」


「でしょーーー!

 シバさん、似てますよねーーー!」


「おぉ! やはりシバさんも妹をご存知で!?」


「なるほど、それで合点がいきましたわ。

 キキョウちゃんはとんでもない魔力を持っていて、

 とても人間とは思えまへんでしたからな」


「妹に……会うことはできますか!?」


「今は難しいですわ。

 そやけどウチが絶対に会わせてさしあげますさかい、

 軽率な行動だけはせんといてください」


「感謝します、シバさん……!

 そのためにもオトハさんの協力が必要なのです」


「オトハちゃん、ええな?

 武器やけど、人を救うための武器や」


「はい! こうなったら頑張ります!

 それに、アッポーウォッチの――」


「オトハちゃんっ!」


「あ、すみません……」


「何ですか、その『あっぽー』とは?」


「いえ! オトハちゃん、新しい魔道具が欲しいって

 ずっとおねだりしてるんですよー。困ったもんです」


「そういうことなら費用は私が出します!

 いつでも言ってください」


「じゃあ早速始めまひょ!

 オトハちゃん、まずはあれを出そうか」


「はい! 『ぴょんた軍曹』ですね!」



 オトハがリュックから取り出したのは、

1羽のウサギのぬいぐるみだった。


「軍曹、お久しぶりです!

 今日からまたよろしくお願いします!」


 『フン』と素っ気なく鼻を鳴らし、

ウサギは黙々とにんじんをかじり始めた。


「このウサギは……?」


「この方はぴょんた軍曹さんです!

 この長い耳で、1キロ先で針が落ちる音も聞き分けられるんですよー」


「ほう……!」


「あとは敵が隠密魔法を使っていても

 バッチリ聞こえちゃうんです!」


「ある意味、恐ろしい能力ですね……」


「あーとーはー! 『パッパカ君』!

 竹馬の形をしたパッパカ君は、

 飛ぶような速さで移動可能です! 」


「ゆっくり歩くタートルくんも好きですけどねー。

 空を行くならこの子猫ちゃんですねー!」


 次から次へとリュックから飛び出す魔道具たち。


 そして、1つ出てくるたびに――

オトハの熱い解説がたっぷり1時間続いた。



「あのーーー……オトハさん。

 そろそろ言いづらいのですが……夕方なので……」


「オトハちゃん、もうそろそろええやろ……」


「えーーーっ!? これからなのにーーーっ!」


「続きはまた明日で! な!」


「あ、明日も続くんですか……!?」



 ――この後、丸一週間。


 キルアはオトハに捕まり続け、

永遠と魔道具たちの親バカトークを聞かされ続けるのであった。

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