第15話 3ヶ月の成長
鬼舎に入ってから、三ヶ月が過ぎた。
あれから俺たちは多くのことを学び、魔物を倒し、レベルを上げ、互いとの仲も深めていった。
そして今も、無作為に割り振られたパーティーで魔物討伐を行っている。
「アンドレ!」
「了解。――セイッ!」
足元で爆発が弾ける。爆風を推進力に変えたアンドレが、一気に間合いを詰めた。
加速を乗せた大剣の一閃が、土塊でできたゴーレムの核を粉砕する。轟音と共に、巨体が崩れ落ちた。
アンドレは、“鬼火”――鬼灯家傘下の一族の末裔だ。
生まれつき爆発魔法を扱うことができ、爆風による加速で戦場を縦横無尽に駆け回る。そして、その勢いを乗せた大剣で強烈な一撃を叩き込む。
戦い方は豪快そのもの。本人の性格も大概で、本当にアホだ。だが、実力は本物だった。鬼舎にいる14人の同期の中でも、強さは五本の指に入ると思う。
それにさらさらの茶髪に整った塩顔。
見た目だけなら相当モテそうなのに、全部台無しにするくらいアホだった。
「そっち行ったぞ、ミユナ!」
「お任せ!」
体は鶏、尻尾は蛇の姿をした魔物、コカトリスが長い尾をうねらせ、ミユナへ襲いかかる。綺麗なブロンズの短髪を左右に揺らしながら、軽快なステップでそれを躱す。
だが、コカトリスの脅威は尾だけではない。巨体から繰り出される蹴りは鋭く、鉤爪をまともに受ければ致命傷になる。さらに厄介なのは、その毒だ。鉤爪から滲み出る神経毒は、傷口に触れただけで全身を痺れさせる。動きを止められれば、そのまま食い殺されて終わりだ。
そのため、コカトリスを倒すなら遠距離から魔法で仕留めるのが定石だ。だが、不幸なことに、無作為に組まれたこのパーティーに、あの巨体を焼き切れるほどの高火力魔法の使い手はいない。
尻尾は届かない。鉤爪も当たらない。
焦れたコカトリスが後退した瞬間、ミユナが首を狙って一気に踏み込んだ。
剣閃が走る――その直前。
コカトリスが口から紫色の毒霧を噴き出した。小柄なミユナの身体が、一瞬で毒煙に呑み込まれる。
ジュウゥ、と何かが焼けるような音が響き、白い蒸気が立ち上った。
だが、毒煙が晴れた先に立っていたのは――
青い炎を全身に纏ったミユナだった。轟々と燃え盛る蒼炎が毒を焼き払い、その小さな身体から凄まじい熱気が溢れ出している。
この3ヶ月ほとんど毎日相手にしたコカトリスに虚をつかれるはずがない。
『火魔法・イグナイトソード』
全身に纏っていた蒼炎が刀身に宿り、そのままコカトリスの首を刎ねた。
「ふぅ。余裕上々!」
気分上々である。ミユナは、ポンコツという言葉がよく似合う可愛らしい女の子である。ブロンドの綺麗な髪に華奢な体つき。鬼とは思えないほど知的な雰囲気を纏っているのだが、その実態はかなり残念だ。 言葉の使い方はちょくちょくおかしいし、突然意味不明なことを言い出す不思議ちゃん気質まで備えている。だが、その抜けた性格のおかげで場の空気は明るくなる。いじられ役兼ムードメーカーといったところだ。
ミユナもまた、七大部族――“鬼面”の勘解由家傘下の一人である。
そして、そんなミユナとアンドレは、鬼舎が誇る二大バカだった。
……いや、本当に大丈夫なのか七大部族。そう思ってしまうのも仕方ないと思う。
「アンドレ、ミユナ、コカトリスから素材を剥ぎ取れ。今日の夕飯にする。メイズイは俺と周囲の警戒だ。」
「シルバーよ、了解した」
「「ラジャー!!」」
今日のパーティーはアンドレ、ミユナ、メイズイの4人だった。
「こいつの鶏冠は立派だな。だが、俺の鶏冠の方が勇ましい。」
……アンドレ、お前は何を言っているんだ。お前に鶏冠なんて付いていないだろ。
「そうだよね。アンドレの鶏冠ってモワッてしててフワフワだよね。」
「そうだとも。わーはっはー。」
こいつらの会話は初めから訳がわからなかった。他のみんなも何を言っているのか理解できていないと思う。だが、当人同士ではしっかり会話が成立しているらしい。今だって、アンドレの鶏冠をミユナは見たことがあるらしいし。
こいつらは七大部族の繋がりで試験前から知り合いだったらしいが、互いに試験を受けていることは知らず、鬼舎で再会した時は二人して騒いでいた。
しかし、最近ミユナとトゥーラが仲良くしているところをよく見る。トゥーラは上手くやれているのか、変な影響を受けていないか、心配は募るばかりである。
俺は3ヶ月の間に大幅な成長を遂げた。だが、【アカウント共有】で【経験値取得率上昇】に設定していない。あれを常時有効にすると、明らかに成長速度がおかしくなるからだ。カデルやトゥーラ、ハーミットたちにも【経験値取得率上昇】はオフにさせている。
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ステータス
名前 :シルバー
種族 :中鬼・玄皁種
年齢 :0
レベル:32
HP :108/136
MP :24/129
筋力 :106
耐久 :86
俊敏 :137
魔力 :107
装備 :なし
ユニークスキル:ーーー
スキル:無属性魔法(S)
体術(S)
自動HP回復(B)
魔力操作(C)
感覚強化(B)
共有スキル:経験値取得率アップ(S)
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シルバーのステータスはこんな感じ。大幅な成長を遂げたのは俺の別のアカウントとラスだ。
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ステータス
名前 :ーーー
種族 :メタルゴーレム
年齢 :0
レベル:24
HP :122/122
MP :78/78
筋力 :98
耐久 :107
俊敏 :47
魔力 :50
装備 :なし
ユニークスキル:ーーー
種族スキル:修復
スキル:鉄魔法(F)
硬化(S)
斬撃耐性(D)
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珍しい種族のようだ。共有スキルで【硬化】をよく使いそうだったので、集中的にあげていたら進化先に"メタルゴーレム"が追加されたようだ。
"ストーンゴーレム"とか"サンドゴーレム"とか色々あったけど、硬そうな"メタルゴーレム"にした。
魔猿 獣人族になる
キャタピラー キャタピラーはレベルの上がりが早い
いずれ滅びる、甲人族の文化を一目見ておこうと。
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ステータス
名前 :ーーー
種族 :魔猿
年齢 :0
レベル:25
HP :103/103
MP :88/88
筋力 :75
耐久 :68
俊敏 :82
魔力 :75
装備 :なし
ユニークスキル:闘気
種族スキル:猿山の大将
スキル:跳躍(D)
投擲(S)
軽業(B)
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魔猿はユニークスキルを持っていた。これはサンプルの対象がユニークスキルを持ったためではない。たまたまでもない。
八神圭の魂がその魔物のステータスを持ったとき、だと思う。ステータスによって世界に認知されていると思っていたが、違う。というかそれだと成り立たない。試しに別アカウントとして魔猿を作成したとき、
ゲームで例えるなら、俺がこの世界に来た時を、カセットを選択した時とする。カセットに番号があるように、俺自身にも番号があるのだ。そして、その番号と魔物、種族が組み合わさると発生する番号が決まっているのだ。だから、同じ種族のアカウントを作ってもステータスやユニークスキルは固定になる。
だからと言って、アカウントを2個作ることが無駄というわけではない。スキルも変えられるし、進化先を変えることによって別の種族になれるし、別のステータスになる。
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ステータス
名前 :ーーー
種族 :毒蜘蛛
年齢 :0
レベル:27
HP :103/103
MP :88/88
筋力 :75
耐久 :68
俊敏 :82
魔力 :75
装備 :なし
ユニークスキル:ーーー
種族スキル:毒針
スキル:糸(S)
刺突(B)
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ほら、手から糸ピューとかやりたいじゃない。そのために、蜘蛛のアカウント作っちゃいました。特に、触れるポイントはありません。
シルバー以外のアカウントはスキルポイントをためている。普段使わないので、あまりビルドを決めていない。だが"メタルゴーレム"のようにスキルによって進化先も変わる。全てのアカウントで一度進化しているのだが、その時はスキルポイントを割り振った。今は貯めている時期だ。
今のところアカウントは、全部で5つだ。だが、まだ魔物の因子しか摂取できていない。四大列強や他の亜人なども摂取したいのだが、如何せん接触する機会がない。
そして、ラスはもう少しで40の大台に乗りそうだ。つい先日、進化して大鴉になったばかりなのだが、好きにレベル上げさせているのでもうすぐだ。
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ステータス
名前 :ラス
種族 :大鴉
年齢 :3
レベル:37
HP :172/180
MP :78/122
筋力 :113
耐久 :92
俊敏 :118
魔力 :102
装備 :なし
ユニークスキル:闇の翼
スキル:経験知取得率アップ(S)
影魔法(A)
遠視(B)
隠密(C)
千里眼(E)
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ラスのことは伏せている。ひとりで狩りをした方が効率がいいし、ラスだけでも強くしておけば、安心できるからだ。それに俺がもし鬼人の里を離れることになった時、連れて行きたい。ラスの正体がバレていると、俺の正体もバレる可能性があるし、ラスは俺みたいに正体を変えられない。
【闇の翼】は絶対切断の翼である。その翼に触れた部分は無に帰す。この世界初のカラス型の魔物という条件を達成したため、大鴉に進化したとき獲得したユニークスキルである。それに、【影魔法】という非常に稀有な魔法を覚えた。【隠密】で近づき、【闇の翼】で一撃で仕留める。それがラスの必勝法だ。
正直、戦力として考えておらず、索敵要因としてしか考えていなかったので、棚から牡丹餅の気分である。
ハーミットの【契約】によって、本来魔物として存在していなかったカラス型の魔物がラスである。これからも空前絶後の進化を遂げてくれそうで、期待に胸が膨らむ。
コカトリスを解体していたその時ーー緊急を知らせる赤い閃光弾が上がった。
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