教会のお礼
「こちらをどうぞ」
昨日、そして今日の患者とのやりとりを聞いていたシスターが、昨日より少し早めに行列が片付いたところで、何かをユリアンネに差し出してくる。
「これは?」
見た感じでは書物のような大きさであり、その包みの布をめくると、出てきたのは魔導書であった。
「はい、この教会に伝わる回復魔法の教えです。もちろん、差し上げるのではなくご覧いただくだけになりますが……」
「え?それだけでもありがたいです。いま拝見しても?」
「もちろんです」
早速めくっていくと、日頃に目にしていた魔導書と違い、教会で伝わるものなので、神様がどうであったという物語で始まり、途中に魔術語と魔法陣が書かれているものであった。
イメージでは前世でいう聖書物語なのか。まともに読んだことはないが、神やそれにまつわる人などの物語という何となくの記憶がある。
興味深く、シスターに断ってしっかり読み込むと、書かれていた魔法は≪治癒≫≪回復≫≪軽病治療≫だけでなく、上級魔法とされる≪上回復≫≪病治癒≫もあった。
これらの発動イメージを物語と繋げさせている感じである。
思わず顔を上げたユリアンネに対して、シスターは頷く。
「はい、こちらを全て習得できたものはここにはおりません。ですが、ユリアンネさんならば上手く活用いただけるかと」
「よろしいのでしょうか?」
「はい、昨日今日のお礼というわけでもありませんが、少しでも怪我や病で苦しむ方が減るならば、と」
教会からの持ち出しはできないと言われたので、作業場所を借りて重要部分を写本させて貰うことになった。
「じゃあ、俺は子供たちの指導に切り替えようかな」
シミリートも引き続き教会についてくるようである。




