6.勇者の痕跡 後半
僕はゼ―ネシアさんと勇者セルファシアの石碑を訪れていた。
ゼ―ネシアさんは目を閉じて何かを思い描いているように、じっとしている。
僕はそんな光景を見て邪魔するのは悪いと思ったので、話しかける時はタイミングを見計るという気を使った。
「勇者セルファシアとはどんな方だったんですか」
「師匠ですか、それは偉大な方でしたよ。少し変な部分はありましたが厳格で勇者として相応しい振る舞いをしていました」
「そうなんですね」
「ただちょっと他人に厳しいと言いますか、よく問題を起こすことがあったんですが、まあ私には基本的には優しかったですよ」
少し変な人物なのかとこの時思いつつも、師弟関係は良好そうなので、余計なことは僕が考える必要はないだろう。
しかし厳格か……魔王封印の際の時間停止のペナルティを弟子であるゼ―ネシアさんに課せているあたり、やはりかなり厳しい人物なのかもしれない。
「ちょっと、なんかすいませんね、こんな問い詰めみたいな質問ばかりで」
「いえいえ、構いませんよ」
まあもし生きていたら絶対に関わりたくない人物ではあるな……。
「ごめんなさいねこんなところにまで付いてきてもらって」
少しの沈黙と時間が経過するとゼ―ネシアさんがそう僕に話しかけてくる。
「いえいえ、自分としてもいい経験になっています」
勇者の石碑、そんなもの中々お目に掛かれるものではない。何か力が得られたり、なんて思ったり。
後は個人的に勇者セルファシアの魔力については研究的な意味で結構興味があることなのである。何か痕跡が有ったりなんて思っている。
という不純な動機は絶対に表には出してはならないな。
「ハイフレードの石碑を見てここに来たいと思ったんです。師匠にグラスさんを見せてあげたいななんて……まあ、ここに師匠がいるわけもないんですけどね」
「そんなことはありませんよ。きっと僕達の事を見てくれています」
「いい事言いますねグラスさん」
「いえいえ」
そんなことを話しながら僕たちは勇者セルファシアの石碑を後にするのだった。
「ぴかぴかぴか」
うん? 今一瞬だけ石碑が光出したような……。
「グラスさんどうしました?」
ゼーネシアさんは気づかなかったのか。じゃあ気のせいだな。
「いえ、何でもないです、ギルドに帰りましょうか」
「分かりました」
それから数日が経過、クエストからギルドに戻った僕は、やけにギルドが騒がしいことに気づいた。
「あばばばばば大変、調味料と食材が足りていないかも」
「おいおいどうするんだよ、あんまり時間がないぞ」
「誰か手が空いてる人はいないのか……あれグラス君?」
ちょうどいいタイミングに来てくれたと言った表情をセイラさんが僕に向けてきた。
「よかったグラス君、ちょっと買い出しに行ってくれない?」
「え? 僕がですか。今日は何かあるんですか」
「エイマの誕生日があるの」
「ええ本当ですか!?」
まさかのイベント到来に僕は驚きを感じたのであった。
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