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第六章 石に滲む血

審判が扇を下げた。


「鶴姫。ボラ」


鶴姫は脇差をしっかりと携え、壇上へ上がった。結い上げた赤髪。絹のように白い肌が、日差しの下で輝く。向かいにはすでにボラが立っていた。周囲の空気が、瞬時に変わった。単なる気温の低下ではない。冷気そのものが、生き物のように形を持ち始めていた。ボラが息を吐くたびに濃い蒸気が上がり、足元の石には白い血管のように霜が広がっていった。


ボラが両拳を地面に叩きつけた。氷が応えた。無秩序には伸びない。整然と、計算された形で。長く鋭い杭が地中から突き出し、正確な軌道で鶴姫の急所を狙う――首、脇、股、手首。同時に、背後にも分厚い氷の板がせり上がり、退路を断ちにかかった。冷気は濃密で、空気そのものが重く、遅く感じられるほどだった。


鶴姫は退かない。風が応えた。荒々しい突風ではなかった。細く、ほとんど見えない気流が足裏に生まれ、体をわずかに浮かせる。氷の上を、触れることなく滑っていく。まるで空気そのものに支えられているかのように。杭は一本残らず、衣の端をかすめて逸れていった。体を軸に回し、脇差が短い弧を描く。刃は空を切っただけではない。風そのものを圧縮し、刃と化し、ボラの氷壁を一刀で両断した。


破片が飛び散る。ボラは止まらない。再び両手を地に突き立て、氷はさらに激しく応じた。より太い杭の第二波が側面から迫り、同時に鋭利な結晶を孕んだ吹雪が彼女へと放たれる。空気が白一色に染まった。視界が消えた。冷気が衣を貫き、肺の奥まで探りに来る。


その白の中で、鶴姫は動いた。風が、もう一枚の皮膚のように彼女を包む。ボラ自身が生んだ気流を利用し、閉じた弧を描いて加速した。気づけば背後にいた。脇差は切らなかった。峰で、首の付け根を正確に打つ。音は乾いていた。ボラの拳を覆っていた氷が、彼の均衡と共に砕けた。


ボラは膝をついた。もう一枚、氷の板を立てようとした。だがその時にはもう、鶴姫の風が彼の上にあった。一撃の突風が、仰向けに彼を叩き伏せる。周囲の氷はすぐに溶け始めた――まるで、存在する意志そのものを失ったかのように。


審判が扇を上げた。


「勝者、鶴姫!」


「ブルーノ。タケシ」


ブルーノが壇に上がった。黒い道着はほとんど動かない。布の下で、筋肉の形だけが見える。その背後、白髪の老人が無言で見つめていた。


タケシが両拳を地に叩きつけた。大地が応えた。ただの揺れではない。壇に深い亀裂が走り、人の胴ほどの鋭い岩が地中から噴き出し、礫弾となって飛ぶ。その一つ一つが、肉と骨を裂けるだけの刃を回転させていた。


ブルーノは動かない。片手を上げる。岩が彼の意志に応える。重く密な壁が目の前に立ち上がり、あまりの硬さにタケシの岩は激突と同時に細かい粉と化した。表情一つ変えず、ブルーノは自らの壁を突き破って前へ出た。右の拳が暗い金属に覆われていく――ただの鉄ではない。極限まで圧縮された岩、鉱物そのものが武器と化したものだった。


タケシはなおも挑んだ。さらに分厚い第二の壁を立て、両脇から小さな礫を雨のように浴びせる。ブルーノは左腕に岩の盾を形成し、その雨を受け止めた。右腕一閃、タケシの壁を粉砕する。大きな石片が四方に飛んだ。


タケシは後ずさりながら、ブルーノの足元の地面ごと持ち上げようとした。壇にひびが走る。ブルーノはただ、体重をさらに沈めた。拳の金属が、さらに暗く輝く。大股で三歩、間合いを詰めた。


拳がタケシの胸の中心を打ち抜いた。音は、大地そのものが砕ける音だった。タケシは後方へ吹き飛び、壇の縁で跳ね、動かなくなった。


審判が扇を上げた。


「勝者、ブルーノ!」


「ケンジ。雷神」


上がる前に、大地がケンジを止めた。


「お前が何者か、それだけ示せ」


暗い金属の腕輪を差し出す。


「お前の爺さんのものだ。この大会に勝ったら、意味を教えてやる」


ケンジはそれを嵌め、壇に上がった。


雷神が待っていた。指先で火花が踊る。空気にはオゾンの匂いが漂う。その電気は、ただの攻撃手段ではなかった――離れていても腕の毛が逆立つような、一つの気配だった。


審判が扇を下げた。


先に動いたのはケンジだった。橙色の炎が前腕を包み、正確な火炎弾が放たれる。熱で空気が歪んだ。雷神は苛立つほど軽やかに動き、すべてをかわした。手の中の火花が膨らんでいく。


「それだけか?」


ケンジは距離を詰め、炎を纏った連撃を叩き込む。雷神は短い放電で応じた。炎と電気がぶつかるたびに、空気が蒸気と閃光で弾けた。壇の床には、黒い焦げ跡とガラス状に溶けた染みが広がっていく。


雷神が両の掌にエネルギーを溜めた。放たれた雷は、単なる閃光ではなかった。白く青い一本の線となって壇上を走り、ケンジに直撃した。体が強張る。膝から崩れた。電流が神経の一本一本を駆け巡り、筋肉を縛り、内側から焼いた。


雷神が近づいてくる。


「哀れだな」


ケンジは目を閉じた。胸の奥から熱を呼び起こし、塞がれた経絡へ無理やり押し通す。炎がより白く、より濃く、より澄んでいく。立ち上がった。


前へ跳ぶ。最後の瞬間、前腕が濃緑の光を帯びた。炎と技が融け合う。拳が雷神の胸に突き刺さった。衝撃は、熱と剛力の爆発だった。雷神は吹き飛び、壇の縁で動かなくなった。胸から薄く煙が上がっていた。


審判が扇を上げた。


「勝者、ケンジ!」


ケンジは脚を震わせながら降りた。大地の隣に座り込む。師が水を渡した。ケンジは黙って飲んだ。


大地がこちらを見た。


「最初の一勝だ。まだ先は長い。そのうち、あの娘――あるいはブルーノと当たるかもしれんな」


ケンジは頷いた。


「分かってる」


周囲では試合が続いていた。闘技場の砂は、すでに血と、溶けた氷と、砕けた岩と、黒い焦げ跡で汚れていた。観客席は絶えず轟いていた。


そしてあの石の篩のどこかで、八つの席が、まだ誰かを待っていた。


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