第6-2話 初級術師、理性が持たないので新ビジネスを始める
「はうう……おはよぅ、グラス、ヴァンさん」
「おは~っす、にしし……いい眠りだった~」
30分後、ようやく超大量の朝ごはん……僕一人の時の20倍くらいあるかもしれない……が出来上がったタイミングで、ポゥとエルも起きだしてきた。
今日のメニューは、サーモンの塩焼きに白菜サラダ、ミソスープに白ご飯という、純東方スタイルのステキな朝食だ。
ふぅ、香ばしいサーモンの匂いがたまらない……この少し焦げた皮が美味しいんだよね。
「!! やったっ! ぱーふぇくとな朝ごはんコンビネーション! ポゥ、30杯はいけるよっ!」
「おお? 負けないよポゥ!」
「うふふ~、沢山あるから、どんどん食べてね~」
美味しそうな朝食を目の前にふたりのテンションもマックスだ。
僕たちはすっかり胃袋を掴まれてしまったようです。
騒がしくも楽しい朝食が始まった。
「もぐもぐ……そういえば、ヴァンさんもお店に出てもらうの?」
「そんなに大きくないお店だから、これ以上店員さんがいても手が余るよね~?」
ポゥが大量の白ご飯をサーモンの塩焼きで流し込みながら聞いてくる。
「うん、そのことなんだけど……確かに店員さんはポゥとエルで十分足りている……だから僕、考えてることがあって……」
「……考えてること?」
「ウチの隣……以前はおしゃれなカフェがあったんだけど、オーナーさんが地元で隠居するとかで、去年から空き家になってるんだよね」
「そこで、隣の家を買って……カフェレストランを始めようと思うんだ!」
「おおお~っ!!」
そう、以前から考えていた多角的なビジネス展開!
アイテム娘さんも増えてきたことだし、僕……チャレンジしてみます!
*** ***
「ということで、ヴァンさんには、新しく隣に開店する予定の、カフェレストランのマスターになってもらいたいんですが……大丈夫ですか?」
「あらあら~、うふふ、私お料理大好きですし……ぜひやらせてもらえるかな?」
「ほっ……ありがとうございます!」
僕の突然の申し出を、快く承諾してくれるヴァンさん。
よかった……これで日中、ヴァンさんを暇にさせずに済むぞ……。
それにしても……おっとりふわふわきれいなお姉さんが美味しい料理を出してくれるカフェとか……大人気間違いない気がします。
むしろ僕が行きたい……。
とりあえず、まずは正式に隣の空き家を買い取って……。
僕が開店までの段取りを思案していると……。
「グラスぅ! こっちのお店もあるけど、時間があればわたしも”カフェレストラン”手伝っていいよねっ!」
むぎゅっ!
いきなり、ポゥが食い気味に身体を乗り出して、僕の腕に抱きついてくる。
じゃらららっ……
興奮しているのか、彼女の周りに渦巻く回復エネルギーにより、ポーションが大量生成される。
「う、うん……大丈夫だけど、こちらの店の仕事もあるし……大変じゃない?」
「”のーぷろぶれむ”だよっ、グラス!」
「最近はヘタしたら午前中の早い時間に売り切れちゃうしっ、午後の空いた時間、何か仕事したいって思ってたんだよ!」
「それに……お花屋さんとかわいいカフェは、女の子のあこがれだよっ!」
「にしし……アタシもさんせー!」
どうやら、ポゥとエルもカフェレストランで働きたいようだ……うん、その気持ちを生かさないのはもったいない!
「じゃ、じゃあ、お願いできるかな? あ、でも無理しちゃダメだよ?」
「やった~! うん、気を付けるね、グラスだいすきっ!」
僕が許可を出すと、ぴょんぴょん飛び跳ねて喜ぶポゥ。
ふふ……ここまで嬉しそうにしてくれると、僕も気合を入れていい店にしようという気分になってくる。
「にしし……じゃあ、仕立て屋のエリーンさんのとこに行こうよ、ポゥ」
「カフェの制服、大事っしょ?」
「!! エル、それマジだいじっ!」
「ということでっ、最優先事項なのでちょっと行ってくるねっ!」
「あ……快復ストアの店番……」
僕が止める間もなく、ふたりは風のようにエリーンさんの仕立て屋めがけて店を飛び出してしまった。
「ふふっ……ふたりともカワイイなぁ~」
「今日は、私とグラス君ふたりで店番しようか」
なでなで……
呆然とする僕を、ヴァンさんが優しく包んでくれるのでした。
王都の道具屋クラスターで、「グラスの店に新たな美人店員さんが加入しただとっ!?」「くそっ! どこに求人を出せばあんなに可愛い子たちが来てくれるんだ!」とグラスに対する嫉妬の炎が燃え上がったのはまた別のお話です。
ヴァンさんのカフェレストランも開店です。
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