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第6-1話 初級術師、万能薬さん改めヴァンさんとアイテムを作る

 

「……ん……」



 深い眠りから覚醒する。

 なにか……懐かしい夢を……暖かな夢を見ていたような。


「……どう……」


「……へへ……おっけー」


 まどろみの中、うっすらと目を開けると……部屋に薄く差し込む朝日の中、朱色の髪と青色の髪の女の子が……僕を……。


 ……って、動けない!? 僕……縛られてるっ!?

 一気に目が覚めた僕は、現在自分が置かれた状況を知覚して、愕然とする。


 僕の腕はロープで後ろ手に縛られており、足枷もされている。

 口には猿ぐつわまで噛まされており、むーむーとうめきながら、芋虫のように動く事しか出来ない。


 何より、僕の上にはふたりの女の子……ポゥとエルがまたがって乗っており、まったく身動きが取れない。


「あ、起きちゃった! グラスぅ、おはよう♪」


「にひ、もう少しでイカセられたのに……かわいいんだから♪」


 ふたりはとてもかわいい笑顔で微笑んでくれるのだが、表情と行動が一致していないんですケド……。


「グラスがいけないんだよ……万能薬さん……ヴァンさんとばっかり”生産”して……こっちもちゃんと見てよぅ」


「にひひ……ヴァンの包容力で真人間に戻ろうなんて……このエルちゃんが許すわけないじゃん?」

「アタシの足技で、じっくりねっとりとドMちゃんに戻してあげるからね~」


 や、やばい! 僕が昨日ヴァンさんにデレデレしてたことを、怒っていらっしゃる!


「……んあっ……」


「……んふっ……」


 唾液でほかのに湿った柔らかそうなポゥの唇と、エルのしっとりとした足裏が、僕に迫り……。



「…………はっ!!」


 ちゅんちゅん


 自分でも思うあんまりな夢から、僕は一気に目覚めるのでした。


「……んっ……グラスぅ……もう食べられないよぉ」


「……グラスめ……アタシの足はクサくないぞぉ……むにゃ」


 ……えっと、僕の両側に感じるこのぬくもりは、夢じゃない。


 昨日夜、万能薬の精霊ことヴァンさんと試した生産活動、それに対抗心を燃やしたふたりが、「(わたし)(アタシ)の包容力を見せてあげる!」と僕の部屋に突撃してきた結果、このように速攻爆睡したというわけである。


 くくっ……僕の部屋のおふとんは王国最高寝具メーカー、デンビュール製の逸品……大食いねむねむ小娘どもに抵抗できるわけはないのだ……。


 ふたりの部屋にも明日プレゼントとして届くので、せいぜい快適な惰眠をむさぼるがいい!


 ……さて、朝ごはんの準備するか。


 完全に目が覚めた僕は、ふたりを起こさないようにそっとベッドを抜け出すと、大量の朝ごはんを準備すべく、1階に降りたのだった。



 ***  ***


「うふふ~グラスくんおはよう~、早いのね」

「まってね~もうすぐ朝ごはん出来るから~」


 キッチンに降りた僕が見たのは、ふわふわの緑髪をアップにまとめ、黄色いエプロンに三角巾と完璧お料理スタイルに身を包んだ、聖母のようなヴァンさんの姿だった。


 ああ……いい!


 両親を早くに亡くした僕には、懐かしさを感じる夢のような光景である……うう、思わず涙が……。


 ……ヴァンさんは、お母さんというにはお若いですけどね。


 漂いまくる癒しオーラと、ふわふわの包容力がそう思わせるに違いない……。

 やっぱりいいなぁ……僕は昨日のことを思い出していた。



 ***  ***


「ヴァンさん、ここが僕たちのお店兼住居です。 ゆっくり寛いでくださいね」


「お部屋は……2階の一番奥を使ってください」


「最低限の家具しか置いてないので、追加で必要なものはお金を渡しますんで、できればそこの”わくわく商店街”で買ってあげてくださいね」



「うふふ~、ありがとうグラスくん!」



 僕たちは王都に到着すると、勇者アロイスさんより報酬と、”名誉勇者パーティ構成員”の文字と勇者パーティ全員のサインが入った公式の盾をもらった。


 王国御用達に、(名誉)勇者パーティメンバー在籍……僕のお店、どんどんトンでもない状態になってませんか?


 ヒューバートさんの説明では、厄介な輩を近づけないためにも、権威づけが重要とのことだったが、あまりにすごい権威が重なると委縮してしまう小心者な僕なのです。


 ともかく、僕たち4人はデリバリーしたごちそうでヴァンさんの加入をお祝いすると、順番にお風呂に入り……のんびりとリビングで寛ぐはずだったのだが。



「ごくり……」


「にしし……」


 ポゥとエルから、やけに緊張感が漂ってくる。


 そう!

 万能薬の精霊たる、ヴァンさんと、万能薬の生成活動が出来るかどうか、試してみないといけないのである!


 できれば、明日にしよう! と提案したかったのだが、ポゥとエルの様子をみると、逃がしてはもらえなさそうだ。


 僕は意を決して、ヴァンさんに向き直る。


「ん~? 万能薬の生成、やってみる~? それじゃ、こっちにおいで……」


 ヴァンさんは相変わらず、癒されるおっとりふわふわ声だ。

 ソファーに座り、僕を手招きする。


「うふふ~、は~い、ねんね……ねんね」


 すっ……ぽふっ


「おおおおっ!?」


「なんですとっ!?」


「ひゅうっ! やるじゃん」


 三者三葉の驚きの声が上がる。


 ヴァンさんは、優しく僕に触れると、自然に僕の頭を膝の上にいざなう。


 こ、これは……すべての男の子のあこがれ!! 美人なお姉さんの……()()()!!


 よ、よいぞっ! 後頭部に感じる、すべてを包んでくれるような柔らかなふともも……ほのかに漂うラベンダーのような香り……。


 ああ、これは眠くなる……ぐぅ……。



 かきんっ……



 僕があまりの気持ち良さに寝入ってしまった瞬間、クリスタルの瓶に緑の薬液が封じられた回復アイテム……万能薬が生成された。


「み、見てよエル……気持ちよさそうなグラスの顔……あの包容力は小娘のわたしたちじゃ出せないよぉ……きょ、強敵ですっ」


「う、うわわ……やるね~ヴァン……これはエルちゃんの調教とは別路線の攻撃……敵わないかも」


 ヴァンさんの強烈な癒し攻撃に、ズガーンとショックを受けているポゥとエル。



「ふふっ……ポゥちゃんも、エルちゃんもどう~?」


「いらっしゃい~!」


「はうっ!? な、なにこの逆らえない引力はっ!」


「はにゃ!? こ、このアタシが引き寄せられるなんてっ」


 ヴァンさんの癒し攻撃には勝てず、僕たち3人はあっさりと彼女の軍門に下るのでした。



 ***  ***


「とりあえずっ! ヴァンさんの膝枕の前に、ポゥとエルとで生産活動がんばっておかないと、3人とも朝まで寝ちゃうな!」


 僕は朝ごはん作りを手伝いながら、今日以降の生産計画を立てるのだった。


ふわふわお姉さんは好きですか?


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