第5-3話 ふわふわアイテム娘さん登場
息をのむ僕の目の前には、七色に光る大きなオーブ。
これは、また……もしかして……。
僕は意を決して、それに唇を近づける……。
*** ***
今回の目的地に到着した勇者パーティとおまけの僕たちは、さっそく迷宮へ潜っていた。
アロイスさんの話では、最下層に僕たちに見せたいものがあるという事で、ここに来たらしい。
潜るのはSランク迷宮……僕たちも気を引き締めないと……探索開始前はそうやって緊張していたんだけど……。
「はっ!!」
ざんっ!
グオオオオンン!?
勇者アロイスの光輝く魔法剣の一撃が、ドラゴンAを真っ二つに切り裂く。
がきんっ!
ぶおんっ
ドラゴンBの渾身の突進を悠々と受け止めると、戦士フランツがドラゴンBの腕をつかみ、真上にぶん投げる。
「……シャロン!」
「はーい、任された!」
「”フレア・バースト”」
ゴオオオッ……!
魔法使いシャロンの極大爆炎魔法が、ドラゴンBを跡形もなく焼き尽くす。
「ふむ……今回も防御魔法感謝……」
「ふふ、どういたしまして」
回復術師ヒューバートの防御魔法は相変わらず鉄壁だ。
「はえ~」「ふわわ」「すげー」
その様子をひたすら見守る僕たち。
あ、相手はドラゴンだよね……スライムじゃないよね?
あまりに一方的な戦闘シーンに圧倒されてしまう。
「あっ……フランツさんがかすり傷をっ……Dヒール!」
ぱああっ……
しみついた習慣なのか、フランツさんがわずかに傷を負っているのを発見し、回復魔法を使う僕。
あっ、別に要らなかったかも……。
「……ありがとう」
律儀にお礼を言ってくれるフランツさん。
とてもいい人だ……。
「そういえば……先ほどからずっとDヒールを唱えてくれているけど、グラス君、MPの残りは大丈夫かい?」
僕を気遣ってくれるヒューバートさん……やっぱいい人だ。
「大丈夫です! 僕MPだけは多いんで!」
「ふふっ……そーいえばこないだ、Dヒール無限詠唱耐久レースに挑戦する! っていきなり言い出してたよね、グラス」
「にしし……アイテム精霊の近くにいるから、僕もレベルアップしたはずっ! って期待してたよな」
「言わないでよ、ポゥ、エル……結局いつも通り1025回目で声が枯れちゃったんだから……うう、変わってなかった」
「…………はい?」
「Dヒール1000回……だって?」
「うそでしょ? グラスくん……どんだけMPあるの?」
「それって私より全然多いんですけど……」
え? なんかアロイスさんたちが驚いてる……Cヒール以上の術は一切使えないから、僕のMPはDヒール専用の特殊MPなんだと思って、特に気にしたことが無かったんだけど……。
「いやはや……さすがオルブライトさんのご子息だ……規格外だな」
ヒューバートさんが驚き半分呆れ半分でかぶりを振っている。
「ふ~む、だからアイテム精霊ちゃん達とこんなにアイテム作れるんだ……じゅるり……めっちゃ研究したい」
あうっ……勇者様たちに褒められるのは恥ずかしい……そしてシャロンさんの僕を見る目がちょっと怖い。
その後も僕はDヒールを使いまくりながら、勇者様たちと一緒に迷宮の最奥を目指すのだった。
……勇者様の活躍で、わずか1時間ほどであっさりと最奥に到着しました。
*** ***
ということで僕の目の前には、七色に光る大きなオーブがある。
見た目はエルが封じられていたオーブに似ているけど……大きさが二回りくらい大きい。
「まさか……」「これって伝説の……」
ポゥとエルには心当たりがありそうだし……勇者様パーティから注がれる期待の視線四対が超プレッシャーだ……。
これは覚悟を決めるしかないのか……僕はゆっくりとオーブに唇を近づけると……
ちゅっ……
そっと口づけた。
「あらあら……うふふ、キスされちゃったわ~かわいい~」
ぱあああああああっ!
おっとりふわふわしたお姉さんの声が聞こえたと思ったとたん、緑色の光が辺りに輝いて……!
光の中から現れたのは……。
20歳くらいだろうか、すらりとした長身、ふわふわとした緩くウェーブが掛かった緑色の長髪。
ふんわり柔らかそうな身体をゆったりとした薄緑色のローブとロングスカートで包み、足元に茶色のブーツを履いた、きれいなお姉さんだった。
「ふふふ……私は”万能薬”の精霊よ……グラスくん、私を実体化してくれてありがとう~」
彼女は優しい声でそう言うと、にっこりと聖母のように微笑んだのだった。
「ほ、ほんとに出た……」
「すごいなグラス君……」
勇者パーティの皆さんも驚いてくれたようですが……お姉さんキャラが出てきて僕もびっくりです!




