第5-2話 初級術師は添えるだけ……勇者様パーティ登場
「おっ、来たねグラス君たち……」
「ふふ……今回は俺たちの依頼を受けてくれてありがとう」
「…………うむ」
「うををっ!? なにあの子たち、めっちゃ可愛くね?」
「……シャロン、自重しなさい」
ここは王都郊外の広場。
勇者様の依頼を受けることにした僕は、集合場所に指定されたこの広場にやってきたというわけだ。
「うわわわわ! 勇者様を待たせてるっ!?」
「どどど、どーしよっ!?」
先に勇者様のパーティが到着してると思わなかったので、慌てる僕。
「ダメだよグラス、しっかりしないと! いまや王都有数のアイテム屋さんでしょ!」
「ていっ」
ぺちっ
「こら! アタシらのリーダーなんだからしっかりしろ―!」
げしっ
ポゥのチョップとエルのキックが気合を入れてくれ、ぴんと背筋が伸びる僕……そうだ、せっかく勇者様から正式に誘ってもらったんだ、僕がしっかりしないと!
「はははっ、俺たちは装備を整える必要があったのと、街中で猫探しのクエストをこなしてたから、先に集まっていたんだよ」
「気にしないでいいよ!」
優しい表情になり、僕らが遅れたんじゃないよとフォローしてくれる勇者アロイスさん。
勇者として大成した今でも、街の人の困りごとは放っておけないナイスガイだ。
「今日は調査がメインだからね……グラス君たちは私の防御魔法でガードするから、安心してくれ」
相変わらずヒューバートさんはダンディだ。
ヒューバートさんの防御魔法……大魔王が出てきても安心だろう。
「…………(にこっ)」
厳つくて寡黙なのに、笑顔が素敵なフランツさんは世界最高の戦士。
「ふふふふっ……ぷにぷにすべすべ頂きっ!」
ひゅんっ……
だきっ!
「ふわわっ!?」
「ふへっ!?」
「いい加減にしろシャロン!」
ごん!
「ふぎゅっ」
超高難度魔法である”近距離転移”をポゥとエルに抱きつくためだけに使い、アロイスさんの鉄拳制裁を食らって、潰れたカエルのような声を出して地面に沈んだのは、世界最高峰の魔法使いであるパーティの紅一点のシャロンさんだ。
常識人が多い勇者パーティのギャグ時空……を一身に背負うツワモノらしい。
「あ、あははっ!」「えへへっ」「おもしれーな、お兄さんたち」
その親しみやすい様子に、僕たちは一気に打ち解けたのだった。
*** ***
「そろそろいいかな……グラス君、君に尋ねたいことがあるんだが……」
王都から十分離れ、周囲に人影が無くなったころ、真剣な表情になったヒューバートさんが僕に切り出してくる。
僕も、その質問は予想していたので、我ながら落ち着いていた。
「はい……初めて会った時にはウソをついてました。 ごめんなさい……」
「このふたり……ポゥとエルは、実はアイテムの精霊が実体化した姿なんです」
ヒューバートさんに聞かれる前に、僕は自分からふたりの正体を明かす。
「!! やはりそうか……この質問、予想していたのかい?」
「そうですね……今回、わざわざ公的な書状で招待してもらったのは、勇者パーティが正式に勧誘したという事実を他に見せることで、変な奴らが誘いにくくなるように配慮して頂いたのかなと」
「ふふ……さすがグラス君だ」
「今日の探索の場に君たちを連れて行きたいというのもあったが……悪意を持った連中が近づいてこないとも限らないからね」
やはりヒューバートさんたちはいい人だ……事前の心配が杞憂になってホッとする。
「ということは……このかわいい子たち、精霊さんなんだ……人間にしか見えないけど……うん、確かに強大な回復エネルギーを感じるね」
シャロンさんは最初びっくりしていたが、魔法的スキャンをしてふたりの力を見抜いたのだろう、しきりにうなずいている。
「ふお、このお姉さん……ポゥたちの力を一瞬で見抜いちゃったよ……さすが勇者パーティの魔法使いさんだね」
「へへっ……アタシたちは精霊だけど、実体化した今はほとんど人間と一緒だよ……にひひ、お姉さん……アタシのほっぺ、ムニムニするかい?」
「まじでっ!?」
さっそくエルがシャロンさんを手玉に取っている……恐ろしい子!
……むしろシャロンさんが子供っぽいのだろうか……?
「それにしても……アイテムの精霊の実体化ですか……記録では数百年ぶりですね」
「まったくだなアロイス」
「グラス君は彼女たちとよっぽど相性がいいらしい」
しきりに感心するアロイスさんとヒューバートさん。
なんか恥ずかしくてむずむずしてきた……。
「…………せっかくなので、ポーションとエーテルを作ることろを見せてもらえないだろうか?」
「えっ!?」
「ふえっ!?」
「おおっ!?」
そんな僕たちに斜め上から豪速球を投げてきたのは、寡黙な戦士のフランツさんだった。
「……? すまん、何か変な事を言ったか?」
「い、いえっ!」
どうする……いきなりキスしたり、足で踏まれるのは恥ずかしすぎる!
だが、他の3人からも注がれる期待の視線……あうっ……。
結局僕は、ポゥと抱き合い、エルには肩たたきをしてもらい、アイテム生産活動のデモを見てもらうのでした。
……ちゃんとアイテムが出てよかった……。
次話では新しいアイテム娘さんが登場します!
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