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廊下

友人の看護師が長く勤めていた病院を退職して、次の勤め先が決まるまで派遣をしていた時の話。


 実入りがいいので、夜勤専門の派遣をこなしていた時期があった。

 その病院に初めて出勤した時の事、


 夜勤の看護師が、

「昨日、急変して三人の方が死亡退院したから、今日の夜勤は落ち着いてると思うよ」

 と言う、昨日までは大変忙しかったそうだ。

 そのまま、申し送りも終わり、勤務が始まったばかりの時に院内が停電した。

 折からの雨で設備が漏電したらしい。


 自家発電になかなか切り替わらず、暗闇の中、何名かの入院患者さんが起きだして、運悪く高齢のご婦人が転倒してしまった。

 夜勤の医師を呼び、処置を行い、捻挫と診断された。

 落ち着いているはずの病棟は不測の事態でばたばたし、三時頃やっと落ち着いたのだそうだ。

 見回りの時間が三時だったので、彼女がライトを手に廊下を歩いていると、


 何かにつまずいて転んだ。


 先ほどのご婦人と同じ場所だった。

 静かな病棟に転倒した音が響いて、恥ずかしく、そそくさと見回りをすませ病棟に戻った。


 夜勤明けの申し送り後にしきりと足が痛むので、ストッキングを脱いで見てみると、指の形に見える痣があった。

「昨夜の転倒事故の原因はこいつか」と腹立たしく思い、

 廊下に塩をまいて帰ってきたそうだ。


 その後は何もなく派遣も終了し、痣もほどなく消えた。

「アジシオって効果あるかなぁ…」

 と豪胆な彼女を私は尊敬している。

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