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TLS外伝 ~a crying soldier~  作者: 黒田純能介
13/50

夜も開けて


チュンチュン…。


外から雀の鳴く声が聞こえる。


「……ふが?」


ムクリと体を起こす。


「ふわ~~~~あ…」


須藤は大あくびをすると、目を擦りながらベッドを降りる。


シャッ。


カーテンを開ける。目が眩む光が差し込み、咄嗟に手をかざす。


「んわ…と」


光に目が慣れてくると、手を下ろした。


外は相変わらず銀世界を晒していた。それでも太陽は顔を覗かせ、白く染まる街並みを照らしていた。


「おぉ。絶好のスキー日和だなぁ」


取り留めのない事を考えていると、ドアがノックされた。


コンコンコン。


『起きろ~!ツンツ~ン!』


敷島の声が聞こえる。




―――ツンツン?…って俺の事か?




何気なく頭に手を当てる。


本日も怒髪天を突く。である。


須藤の場合は更にムースで固めているのだが。


『お~い』


「今行くぜ~」


大声で返事を返すと、洗面所へと向かう。身支度を済ませ、三階へ上がる。昨夜南条と呑んだのも三階のリビングだった。部屋の一部は敷島の部屋も兼ねている。


「ツンツンッ!遅いで!」


テーブルに食器を並べながら敷島が吠える。暖房が効いているせいか、Tシャツ一枚にホットパンツという薄着である。


「わりわり。つーかツンツンって何だよ?」


既に予想は付いていたが、話題を振ってみる。


「んなもん、決まってるやろ?そのアタマ」


ビシッ、と須藤の頭を指す。


「…やっぱり」


ニヤニヤしながら須藤がぼそりと言う。


「何ニヤニヤしとるんや?気持ち悪いなぁ」


「いやぁ、単純だなぁと思って」


「何やと!?」


うがぁぁ、と須藤に掴み掛かる。


ドダダダダ…ガシッ。


そんな敷島を鷲掴みにして突進をブロックする。


「うぎぃぃ…!」


ブンブンッ、と両手を振り回すが、頭を押さえられていて須藤には届かない。


「…お前達、何をじゃれている」


「ん」「あ」


二人が同時に振り返ると、キッチンから南条が顔を覗かせていた。


「侑子。遊んでないで手伝え」


「は、はーい」


エプロンを翻してキッチンに戻る南条と、その後を追う敷島。




―――これで軍隊だからなぁ…。




何だかいいな、と一人呟く。


…須藤はこの光景を護っていきたいと思ったのだった。



--------------------------------------------------------------------------------



「ごち!」


「ごちそうさまでしたぁ~」


「…お粗末様」


三者三様に食事終了を告げる。


「いやぁ、食った食った~」


ポンポン、と須藤が腹を叩く。


「やっぱり、ねぇちゃんの料理は最高やな!」


ズズズ…と食後のお茶を啜る。


「日々是精進だ。まだまだ。と言うより侑子。お前もいい加減一人で作れるようになりなさい」


「…う」


敷島が硬直する。


「ハッハッ。ユーコにはまだ無理じゃないか?」


「ムッ!…そーいうツンツンは出来んのかいな!」


「俺?モチロン。一人でのサバイバル生活長かったからなぁ~」


敷島がニタリと嗤う。


「どーせ、蛇の丸焼きとかそんなんしか出来ひんのやろ?」


「う…そ、そんなコトは無いぞ…」


図星図星~と敷島がはやし立てる。


「さ、さぁ~て。悪いから片付けでもしようかな~」


ガチャガチャ。


慌ただしく須藤が食器を重ね始める。


「別にやらんで良いぞ須藤。お前は客人なのだからな」


椅子を引き、南条が立ち上がる。


「いいっていいって。世話になりっぱなしだからさ…っとっと」


そう言いながら、山と積まれた食器に悪戦苦闘する。


「しようのないヤツだな」


ひょいっ。


南条が食器を半分取り上げる。


「おっと。悪い」


「では、折角だから運んで貰おう」


「おう。ユーコは茶でも飲んでな」


「ご苦労ご苦労」


ひらひらと手を振る。そのまま二人はキッチンへと消えていった。



カチャカチャ…。


二人が並んで洗い物をしながら、他愛の無い話をしている。


「…でさ、それを思いっきり放り投げてやったのさ」


「フ…そこでそうするとはな。なかなかやる」


終始和やかな空気を二人が醸し出していた。


「あ。そう言えば…」


「どうした?」


オホン、と須藤が一つ咳払いをする。


「…入隊の件、受けるぜ」


カチャ…。


南条の手が止まる。


「本当か。…別に、今日の事は負い目にしなくて良いんだぞ?侑子が世話になった礼もある」


切れ長の目が須藤を見据える。


「違うって。そうじゃないさ。ただ…」


「何だ?」


「レイや、ユーコ。二人を眺めてるのも悪くないかな、ってさ」


「………」


しばし南条は考えている素振りを見せたが、やがて口を開く。


「…そうか。分かった。後で書類を渡す。歓迎するぞ須藤」


「ああ。ヨロシクな」


須藤はニカッ、と笑うと洗い終わった食器を片付け始めたのだった。



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