第8話 進んだ先にあるものは…
――洞窟内を探索しながら進むこと数日。
あまり日付に対して正確とは言えないが1週間以上は経ってるだろうと推測する。
この数日の間にも魔物のラッシュがあったり新型の魔物が出てきてその姿に精神を削られながらも洞窟内を進んで行く祐太。
「…本当、かなり広いなこの洞窟」
魔物の干し肉を齧りながら分かれ道の先を脳内でマッピングしていき行き止まりや魔物がたむろってる場所などを避けながら慎重に進んでく。
新型の魔物が出てくる他に変化があったといえば前に拾った卵だ。その卵の周りには魔力で出来ているらしい水晶体が纏わっているがその水晶体が時折強く青白い光を発するようになっていた。
まるで成長しているかのように祐太から魔力を吸い光を放つ卵。何が生まれるのか内心でドキドキしながらもその様子を見ていた。
「お、なんか近づいてきてる。…この感じは大蛇かな?」
卵を眺めていると不意に気配を察知する。そして祐太の言葉通りに大蛇が現れた。
――因みに、なぜ前もって気配を察知し魔物を当てたのかと言うと、祐太は空気の層を動かし流すことでかなりの範囲ならそこに飛び込んできた敵の動きで相手を感知する事が出来るのだ!――
と、この数日でそれなりに熟練度をあげて魔法の行使が可能となっていた。
この感知技により道の先がどうなってるのかを調べ時に敵を察知し対処するなどの事が出来るのであった。
「っと、思いを巡らせてるとこじゃないな…そりゃ!」
シャァァァァア!!と裕太を威嚇しながら毒液を吐き出す大蛇の攻撃を風を起こし毒液を吹き飛ばしながら槍のように細く真っ直ぐな風槍を飛ばし大蛇の額の鱗を抉り体内の器官を射抜く。
ズドーンと身体を崩し倒れる大蛇を見て自身も強くなってるなと実感する。
大蛇と初めて相対した時鱗が硬すぎて風刃が通じなかった事を思い出し苦笑いをする。
「さて、魔石と素材を回収して次に行きますか」
ささっと大蛇を解体して魔石と素材を剥ぐ。この数日で慣れた行動は淀みなく終わる。軽く汚れを水で流しながら風を使い濡れた箇所を乾かす。
――因みに水はあの場所以外にも複数あり水の確保には困らなかった――
強力なはずのユニーク魔法を乾燥機代わりに使う祐太。しかし、便利なのだから仕方がないと1人でツッコミながら道を進む。
風探知を使いながら道をマッピングし進めるだろう道に進む。魔物を倒しながら進むこと数時間後――これ迄とは違う広い空間へと出た。
「こりゃまたかなり広いな…」
この場所は広さで言うと縦横に200m以上はあろうかという広場だった。祐太は風感知を部屋全体に拡がるように発動する。その奥には道があるみたいだ。
「…道はあるが、こんな所に来て何も無いはず無いんだよなぁ…」
周りを警戒しながら呟く。その言葉がトリガーとなったのか広場の中央に大きな魔法陣が現れた。
「ここに来てめっちゃファンタジーな展開きた!」
変にテンション上げながら成り行きを見守る。かなりの余裕を見せてるが出てきたものによりその余裕を落とし臨戦態勢をとる。
魔法陣が起動しそこから現れたのは二つの首を持つ翼竜だった。祐太はその魔物の存在感と力強さに軽く圧倒されるも油断なく双頭竜を見つめる。
「ファンタジー展開だが、これは勘弁…」
双頭竜は祐太を見るとこの空間を覆い尽くす程巨大な咆哮をあげた。
――ゴガアアアアアッ!!!!
あまりの衝撃に耳を塞ぐ。そして、悪寒が走る。祐太は本能のまま大きく飛び退き転がった。
祐太のいた場所には双頭竜がおりその二つの口から火炎を吐き出していた!
祐太は冷や汗をかきながらも圧縮した乱風玉を複数放つ。双頭竜はそれを受けるもダメージは通ってないようだった。
「くそ!これを食らっても何もなしかよ!…んじゃこれならっ!」
祐太は双頭竜から距離を取りながら風感知を最大限に利用しスキを探りながら風槍を放つ。風槍は双頭竜の表面の鱗にヒビを入れるに留まるだけだった。どんだけ硬いんだ!と祐太は悪態付きながら双頭竜の火炎攻撃を突風でいなす。
双頭竜はその場から飛び上がり高い天井を旋回する。そして、祐太に狙いを定めて息を吸いこみそして火炎を吐き出す。その火炎は先程より二回りもでかく着弾したら周囲も火炎にの波に飲まれるほどだった。
「くっ!」
祐太は1歩下がり自分の周囲に風を巻き起こす。それはまるでドーム状の竜巻のようだった。青白く輝く竜巻は祐太の魔力をつぎ込み強固になっていた。
そこに火炎が着弾し辺り一面を火の海へと変える。
双頭竜はそれを満足そうな表情で見ているが次の瞬間には驚愕したとでも言わんばかりの感じを醸し出していた。
――着弾した火炎を竜巻の壁でいなし熱を避けて逃がしていく。周りの火炎も熱も次第に吹き飛ばされていく。いや、吹き飛ばされたと思ったがその火炎は渦巻く風に吸い込まれていた。
「俺の中での最高防御だったのに中まで熱を届かせるとか、ヤバイだろ…」
祐太が行った防御は竜巻の回転によるあらゆる攻撃をいなす技だ。その防御に魔力を付与しより強固に破られにくいものとなっていた。
それを中にいる祐太にまで熱量を届かせるほどの火炎――そんなのを直でくらえば一瞬で炭化するだろう…と内心恐れる。
今までの敵よりかなり強大な力を持つのは間違いないようだ。しかし、双頭竜は自身の攻撃を防がれたからなのだろうか先程より更に鋭い殺気と力を放つ様になる。
「お返しにこれでも喰らえっ!」
祐太は双頭竜の吐き出した火炎を風で巻き上げ更に自身の魔力で圧縮し双頭竜に撃ち出した。
ゴォォォォォ!っと風を切りながら向かっていく。双頭竜はそれを脅威と見たのかバレルロールをし火炎風弾を躱す。しかし、避けたはずなのに火炎風弾はUターンし双頭竜の背中に当たる――そして着弾した火炎風弾は巨大な炎を巻き上げて双頭竜を焼く!
祐太はそれを油断なく見つめ自身に降ってくる火炎を風でいなしていた。
火炎が収まり辺りが見えるようになる…そこには多少傷を負ってるものの未だ強大な力を発揮する双頭竜がいた。やはり、火炎を使うだけあってかなりの耐久があるようだ。
――フッ…ゴガアアアアアッアアアアッ!!!!!
先程より更に巨大な咆哮が響き渡る。
「…っ、そんなに効いてないか!」
双頭竜は全身から炎を噴き出し纏う。そして翼を広げ上空から獲物を狙う鷹のように祐太に向けて突進してきた。祐太は身体強化を使い風でいなしながら紙一重で避けるも双頭竜が纏う炎によりダメージを受ける。
顔を顰めながら距離を取ろうとする前に双頭竜の内一つの頭が噛みつきをもう一つは火炎のブレスを吐き出した。
祐太は噛み付いてくる方に風槍をブレスには風玉を放つ。距離のせいか何のか直撃を免れるも火炎の熱量に致命傷とはいかないが少なくない傷を負う。
「…ぐぅ、っ」
息つく暇もなく双頭竜は翼を翻し祐太に向けて無数の火炎弾とも言えるブレスを放つ。
祐太は咄嗟に大きな風玉を発動し爆ぜさせる。大きな風玉の乱風により無数の火炎弾は全て逸らされた。乱風の衝撃を利用して距離をとる祐太、しかしそこに炎を纏った翼が迫っていた。
避けることも出来ず祐太は翼に穿たれる。
「ぐぁぁぁっ!」
祐太は吹き飛ばされ洞窟の壁に激突する。
相手を穿った双頭竜は飛んでいった祐太をじっと睨み止めだ!とでも言わんばかりの火炎を収束させたブレスを放った。
祐太に向かい放たれた収束火炎ブレス。ぶつかるか!という所で――膨大な嵐とも呼べる風が吹き荒れた。
祐太は何とか生きていた。集中強化により身体を強固にそして風でいなしつつ急所に当たらないように逸らし更に自ら後ろに飛び衝撃をやわらげる事で深い傷を負ってるものの致命傷は何とか避けた。
しかし、身体を焼かれ皮膚のあっちこっちが爛れている。穿たれた箇所は切り傷のように裂かれていてドクドクと血を流していた。
「…く、そっ…」
途切れそうな意識の中自分に向かってくる収束ブレスを大きな風玉と竜巻防御により大きく逸らす。
――ゴガアアアアアアアアアッ!!
双頭竜は咆哮をあげ更に膨大な熱を纏い突進する。
祐太はふらつきながらも圧縮した風玉をいつくも放つ。ダメージは受けないでも軌道をそらされふらつかされる。風玉で牽制しつつ祐太は奥の手を発動するためロングソードを取り出した。
――因みに対魔物戦でロングソードを使わなかったのは扱えなかったからだ。ロングソードだけで戦うとなると逆に振り回されるので奥の手を使う時にだけ利用する事にしていた。――
祐太はロングソードに魔力を巡らせ強化する。そして突進してきた双頭竜の懐にカウンターで飛び込み縦に一閃させた。
――ズルッドチャ。
双頭竜は縦にぱっくりと斬られ生々しい音たて血飛沫を撒き散らしながら崩れ落ちた。
「…ぐっ、」
残心を解く前に祐太もダメージにより膝をつく。
手に持つロングソードは熱により溶けて剣とは呼べぬものとなっていた。
「…何とか奥の手が通じたが、これが効かなかったら死んでたな…」
久しぶりに強敵を倒し身体に力が巡るのを感じる。祐太は内心でもっと手数を増やさないとな、と一人考えながらその場で大の字になり寝転ぶ。
因みに先程の攻撃は祐太の奥の手とも呼べる必殺技だった。
その技とはロングソードに魔力を巡らせ空気を超微細に揺らすことにより大気振動ともいえる超震動を起こしていた。
超震動とロングソードを振るう際の空気抵抗をも利用しソニックブームを起こし敵を斬り裂くという二重の攻撃により双頭竜の強固とも言える鱗を穿ち身体を斬ったのだ――。
祐太は暫く休憩し身体が動くのを確認する。深い傷も今は血が止まり少しずつ回復しているようだった。
この身体になってから身体能力の他にも自己治癒力も大幅に上がっているようで魔力を集中させると回復も速めるという事も出来た。
傷も問題ないところまで回復する。祐太は立ち上がり双頭竜の魔石を回収しようと動いたところで皮袋にしまってた卵が突然今までとは違う強い光を放った。
――眩い光の中祐太は魂に何かが入ってくる感覚を覚える。しかし、これは嫌な感じのものではなくまるで包まれているかのような温かいものだった。そして光は収束する――
不思議な事を感じたのもつかの間卵がいきよいよく割れ始めた!祐太はそれを目を離すかとでも言う様に見つめていた
割れた卵から出てきたのは―――
一体の青白いスライムだった。
遂に相棒となるスライムさんが登場
誤字脱字などございましたら教えて頂けたら幸いです。
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