表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
女神降臨Ⅱ  作者: 塔子
22/69

【22】

驚いているわたくしにその少女は「あ、…あの…大巫女様…?」と、遠慮がちに声を掛けてくる。



「あ、ごめんなさいね~。うふ、びっくりしちゃったわ。あまりにも綺麗な女の子なんだもん」

「い、いえ…そんな…」



顔を赤くして俯く。照れている姿も、なお可愛い。


わたくしは、書類に記してある“不明”という事について問う事にする。



「父の事は知らないのです。母が言うには、私が生まれてすぐに家を出て行ってしまったとか…」

「そうなの?何も聞かされてないの?」

「はい…、母は父については何も。私も何も聞かなかったので…」



しっかりした娘だと思う。


10歳?もうすぐ11歳になろうというのに。



「あの!お聞きしたい事がっ」



突然、必死な顔で尋ねてくる姿も可愛かったりするから不思議。



「大巫女様は、父を知っていますよね?父の名は――」



わたくしは、すっと手を上げて少女の言葉を遮った。



「ロイがここに来たのは10年も前の事。それから何があったかなんて、わたくしは知らないわ」



そう、大巫女なんて神殿から出る事を許されない、俗世を知らずに生きているだけの女。



「そうですか…」



落胆させてしまった。だから、思わず――。



「でも、貴女はお父様にそっくり。その白金色の髪も菫色の瞳も、綺麗な顔立ちも。ロイも貴女と同じでとても綺麗な人だったのよ」



わたくし自身、次から次へと言葉が出てくるのに驚愕しつつも、この少女の菫色の瞳がわたくしの話に反応して輝きを増し、顔は紅潮していくのが嬉しくて思い出の中の彼を語ってしまった。


間違えるはずなんて無い!


あの人の血が流れてる、この少女はあの人の子供!


わたくしが大巫女にならなければ、わたくしがこの少女をこの世に誕生させていたかもしれない。


この腕に抱き、白金の髪を撫で、慈しんだに違いない。



でも、そんな夢物語のような事。



馬鹿な事を考えていると、自分でも分かっている。



「ねぇ、グリンダリア。わたくしと仲良くしてくれると嬉しいんだけど」

「そ、そんな…。私の方こそ、これから宜しくお願いします」



親子には、なれなかったけど。


せめて、ひと時でも彼に似た少女と時間を共有したかった。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ