【14】
アルスは王弟殿下。
彼のお母様とわたくしのお母様は姉妹だから、わたくし達は従兄妹同士。
琥珀色の髪に空色の瞳の青年。
ロイは薬師の息子。彼のお父様は王族専属の薬師という事もあって城内で生活している。
白金の髪に菫色の瞳の青年。
あの日、アルスが“結婚”という言葉を口にしてから、わたくしの知らない所で結婚話はどんどん進んでいく。
誰のせいかは分かっている。
わたくしのお母様と伯母様。彼女達が全てを仕切り、当事者であるわたくし達は蚊帳の外。
確かに、わたくし達だけじゃあ…っていうのも分かるけど…。
そんな、わたくし達の様子を見てロイは「ま、あの最強姉妹には誰も勝てないさ」と言って笑っている。
もう!他人事みたいに言わないでよ!!
「それより、ロイはいつ求婚してくれるの?」
いつもと変わらず、3人一緒に午後の昼下がりを過ごす。
陽気のいい日はテラスでお茶を頂く事にしている。
アルスは求婚してくれた時“僕達は”と言っていたし、それにこの国の女性は時には複数の夫を持つ事も許されている。
わたくしも、初めから結婚は3人でと思っていた。
「勿論、考えてるさ。でも、今回は王弟殿下とその従妹姫の結婚だから、国内外的にと言うか…」
「わたくしは、そんなの全然気にしてないわ」
と、アルスの空色の瞳を見て同意を求める。
「僕も同じだよ。でも、母上達が…」
な、何ていう事なの?!そこまでお母様と伯母様は口を出してきたの?
わたくしの深緋色の瞳に憤りの色が浮かんできたのが分かったのか、ロイは――。
「別に気にしてないけど。それに俺はおまえ達に子供が出来て、落ち着いてからでもって思ってる」
え?今何て言ったの?ロイ。子供って…、こ、子供~?
「まさか、子供が出来るまで10年も20年もかかったりしないだろ?」
と言って菫色の瞳は空色の瞳を持つ幼馴染みに視線を移す。
「善処するよ。と言うより、母上達の期待が大き過ぎて、そっちの方が大変だよ」
二人の男達は本当に幸せそうに笑い合ってる。
わたくし一人だけが、取り残されてしまっているような…。
「ま、おまえ達のような世間知らずのお坊ちゃんとお嬢ちゃんには俺みたいにしっかりしたのが付いていないとな」
どうせ、わたくしもアルスも世間知らずですよーっだ!
何を言っても、昔から口ではロイには勝てない。
だから、心の中で毎回対抗している。
「愛してる、エレナもアルスも。俺が二人を幸せにしてやるさ」
ロイはそう言って、今まで見た事もないほどの輝かんばかりの笑みを見せる。
一瞬、何を言われたのか、理解するのに少し時間が必要だった。
――呆然。そして、赤面!
わたくしもアルスも全く同じ反応をしている。
その様子を見てロイはしばらく笑いが止まらなくなってしまった。




