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【13】
――約30年前。
「ねぇ、エレナ。ちゃんと僕の話、聞いてる?」
そう言って、わたくしの横にやって来る幼馴染みのアルス。
「うん?…う~ん、聞いてるわよ~」
勿論、嘘。
聞いていない。わたくしは今、自室にて読書中。本を手に、目が追うのは活字の列。
この男女のやり取りを傍で見ていたのは、もう一人の幼馴染みのロイ。
呆れた様子で口を開く。
「エレナ。こういう時は“その話、お受けします”って言えよ」
「ん?…え~っと、その話って何の話?ロイ?」
やっと、ここで本から視線を外し、二人の男の顔を交互に見る。
二人同時に溜め息を付く。
先に行動したのはロイ。
アルスの肩をポンっと軽く叩き「あとは、任せた」と、部屋を出て行く。
わたくしは、ロイの背中を見送るだけで声は掛けなかった。
ドアが閉まると視線は横に居るアルスに向け“?”という表情を見せた。
「――エレナ、もう一度だけ言うよ。僕達は君に結婚を申し込みに来たんだ」




